単行本図書

雨ふる本屋と雨もりの森

雨ふる本屋と雨もりの森

立ち読み

日向 理恵子 作/吉田 尚令

黒い服の男の人を追って、図書館からすきまの世界に転がりこんだルウ子とサラ。そこはいつもの〈雨ふる本屋〉ではなく、舞々子さんの妹・照々美さんの庭でした。一方、〈雨ふる本屋〉の製本室でも異変が起きて……。

  • 定価1,512円 (本体1,400円+税)
  • 初版:2018年6月13日
  • 判型:四六判/サイズ:19.4×13.4cm
  • 頁数:358頁
  • 小学3・4年~
  • ISBN:978-4-494-02054-6
  • NDC:913

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書評

命をかけた冒険へ 山本悦子 母のひろば649号 2018年7月15日
 書きかけのまま忘れられた物語、夢が種となり、雨のしずくで育ち本となる。そんな「雨ふる本屋」シリーズの第4弾。 ルウ子とサラは、1人の男が、図書館の本棚の前でカタツムリに呪文を唱え、消えるのを目撃します。そう、いつもルウ子たちが「雨ふる本屋」に行くときのように。あとを追った2人ですが、途中で見失ってしまいます。でも、どうやらその男は、今、すきまの世界を騒がせている「影の男」のようなのです。「雨ふる本屋」でも「すきまの世界」でも、異変が起きていました。新しく誕生した「王国」が、すきまの世界を飲み込もうとしているらしいのです。それは、「影の男」の仕業ではないか。ルウ子、ブンリルー、ホシ丸は、「影の男」を追います。「影の男」は何者なのか。夢見たのは誰なのか。「王国」の氾濫を止めることはできるのか。 物語の終盤、すべての真実に気づいたルウ子は、自身を顧みず危険に飛び込んでいきます。ルウ子は、こんなにも優しく勇敢な子だったんだと胸が熱くなりました。ホシ丸はいいます。「本を読むのも書くのも命がけの冒険なんだね」その言葉通り、この物語には作者の命がけの覚悟が感じられました。美しく繊細な表現で彩られた物語なのに、力強くキリリとしています。「雨ふる本屋」史上、最も強く、最も切ない物語です。
(やまもと えつこ/児童文学作家)
命をかけた冒険へ 山本悦子 母のひろば649号 2018年7月15日
 書きかけのまま忘れられた物語、夢が種となり、雨のしずくで育ち本となる。そんな「雨ふる本屋」シリーズの第4弾。 ルウ子とサラは、1人の男が、図書館の本棚の前でカタツムリに呪文を唱え、消えるのを目撃します。そう、いつもルウ子たちが「雨ふる本屋」に行くときのように。あとを追った2人ですが、途中で見失ってしまいます。でも、どうやらその男は、今、すきまの世界を騒がせている「影の男」のようなのです。「雨ふる本屋」でも「すきまの世界」でも、異変が起きていました。新しく誕生した「王国」が、すきまの世界を飲み込もうとしているらしいのです。それは、「影の男」の仕業ではないか。ルウ子、ブンリルー、ホシ丸は、「影の男」を追います。「影の男」は何者なのか。夢見たのは誰なのか。「王国」の氾濫を止めることはできるのか。 物語の終盤、すべての真実に気づいたルウ子は、自身を顧みず危険に飛び込んでいきます。ルウ子は、こんなにも優しく勇敢な子だったんだと胸が熱くなりました。ホシ丸はいいます。「本を読むのも書くのも命がけの冒険なんだね」その言葉通り、この物語には作者の命がけの覚悟が感じられました。美しく繊細な表現で彩られた物語なのに、力強くキリリとしています。「雨ふる本屋」史上、最も強く、最も切ない物語です。
(やまもと えつこ/児童文学作家)

2018/6/18

『雨ふる本屋と雨もりの森』著者・日向理恵子さん インタビュー

(2018.4.25)


6月15日に、「雨ふる本屋」シリーズ第4作となる、『雨ふる本屋と雨もりの森』が刊行されます。2008年に第1巻が刊行され、幅広い世代から支持されるロングセラーとなっている、『雨ふる本屋』
この本で作家活動をスタートされた、著者の日向理恵子さんに、このシリーズや、新刊『雨ふる本屋と雨もりの森』についてうかがいました。


 前作第3作の『雨ふる本屋とうずまき天気』は5年ぶりでしたが、新作『雨ふる本屋と雨もりの森』は前作から1年ぶりとうれしい驚きでした。
この作品は、どんな風に執筆がはじまったのでしょうか? 




3作目の『雨ふる本屋とうずまき天気』は、当時生まれた子どもがまだ赤ちゃんだったこともあり、子どもが寝ているときや機嫌のいいすきに、手帳サイズのノートに、すこしずつすこしずつ書いてゆきました。子どもが起きているあいだはパソコンも大きなノートも使えないので、本当にとぎれとぎれに書きつなぎました。

今回の『雨ふる本屋と雨もりの森』は、2人いる子ども達がどちらも入園することができ、「子ども達が新しい環境でがんばっているのだから、わたしも精一杯書こう!」という思いで書きはじめ、勢いづいて一生懸命に書きあげました。
パソコンに長くふれずにいたので、キーボードのあつかいに手間どって困りましたが、物語がはじまると、ルウ子たちが先へ、先へと引っぱっていってくれました。

お子さん達にもらったエネルギーで、新刊の執筆も早まったのですね。私たち読者にとってはうれしい限りです。作家としての執筆と、家庭での育児と、作品さながらに、異なる世界を行き来して製作されているんですね。

新刊『雨ふる本屋と雨もりの森』では、舞々子さんの妹である照々美さん、ウキシマ氏など、新しい登場人物が現れ、彼らが中心となって物語が展開します。新しい登場人物たちはどんな風に生まれてきたのでしょう?


舞々子さんの妹で、庭師の照々美さん。肩にのせているのは、リスザルのマゼラン。


「照々美さん」という名前は、ずっと昔から創作ノートのメモにあったのです。いつか、なにかのお話に登場するのではないかと思っていたのですが、4巻のモチーフを植物にしようと思ったとき、その名前の人物が現われました。


図書館でルウ子とサラがみかけた、黒い上着の謎の男として登場するウキシマ氏。その正体は……?


ウキシマ氏は、ファンタジーがごったがえす世界を、1人ぽつんと歩いている。そんな異質な存在に、きっと主人公のルウ子が強く興味をいだくだろうというイメージから生まれてきました。また、ルウ子とは年齢も性別もちがいます。「作家になりたい」というルウ子に、自分とはちがう立場の人物への想像力を使ってもらおう、それがルウ子の冒険になる、と思いました。

お客が必要になるものを見抜き、売ってくれるふしぎな道具屋のカエル、七宝屋。
今作『雨ふる本屋と雨もりの森』でも再び入れ子細工の店が登場します。


新刊ではまた、おなじみのメンバーも多く登場し、雨ふる本屋でのお茶会や、七宝屋のお店など、なじみのある楽しい場面も盛り込まれていて、楽しく読ませていただきました。シリーズを通して大切にされていることなど、ございますでしょうか?



〈雨ふる本屋〉やすきまの世界が、読んでくださる方の〈ごっこ遊び〉の場になるようにと、1作目を書いたときから、一貫して願っています。たとえば1作目『雨ふる本屋』なら、2つの部屋があれば、〈雨ふる本屋〉とほっぽり森を行き来する遊びができます。
自由に想像力を解放できる場所、そういう場所での遊びこそが心を耕すと信じていて、わたし自身、そういった本に育てられてきました。このシリーズもそんな物語群に近づくことができれば……という気持ちです。

ほっぽり森で暮らす、元自在師のブンリルー。過去の自分の行いへの葛藤を抱えている。


前作「うずまき天気」で中心となったブンリルーも行動を共にするなど、前作の続編としても描かれていますね。前作に関連する部分で、何かございましたら教えてください。



前作では、ルウ子がヘビに飲まれました。今回もいろいろと冒険をしていますが、いちど世界をばらばらにして組み立てなおすという体験を、物語を通して描こうとこころみています。「この世界は不思議なところだ」ということに、何度でも驚くことができるという体験を、ファンタジーとして描きたいと考えています。
ブンリルーは、今回はどんどん進んでゆくルウ子の錨や灯台のような役回りなのかもしれません。

「いちど世界をばらばらにして組み立てなおす」怒濤の体験を、いち早く読者として体験させて頂きました。
まぶたのない巨人や子どもだった頃のウキシマ氏、ルウ子たちが、時間、また自分と他人という境を超え、それぞれの思いが重なり共鳴しあって、文章からあふれ出てきます。物語から現れてくる見たことのない世界に圧倒されました。





さいごに、読者にむけて、メッセージをおねがいします。



『雨ふる本屋』の物語は、読者のみなさまに育てていただいたシリーズだと思っています。いつも、本当にありがとうございます。鉛筆書きのお手紙、ご感想のお便り、大切に拝読しています。
〈雨ふる本屋〉、すきまの世界は、まだふくらみそうな予感がしています。
本から顔をあげたとき、現実の日々が前より豊かに感じられる……そんなファンタジーの役割を、このシリーズがはたすことができれば、このうえない幸せです。

ルウ子たちのこれからの物語を楽しみにしています。本日はありがとうございました。



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