2024.03.04

<ありがとう 和歌山静子さん②>子どもにほんとうに伝えたいこと――絵本

前回、童心社での和歌山静子さんの紙芝居のお仕事をご紹介しました。
今回は、絵本についてご紹介します。


 色のふしぎ、楽しい! 『くろねこさん しろねこさん



くろねこさん しろねこさん』(得田之久・ぶん 和歌山静子・え)

和歌山静子さんといえば、というくらいたくさん描かれてきたモチーフが、ねこです。
和歌山さんご自身が大好きだったねこの魅力がたくさん味わえる絵本『くろねこさん しろねこさん』をご紹介します。

くろねこさん、どこ?

あそびに出かけたくろねこさんとしろねこさん。

家の影にかくれてしまったくろねこさん、どこ?
せんたくものの白いシーツの前にいるしろねこさん、どこ?

くろねこさんしろねこさんとあそびながら、色の不思議を楽しむ認識絵本。
元気よくあそぶ2ひきのねこの動き、愛らしさが魅力です。


 絵本で伝える性のこと『ぼくのはなし



『ぼくのはなし』(和歌山静子・さく)

和歌山静子さんがはじめて文章と絵を手がけた絵本は、「おかあさんとみる性の本」シリーズの『ぼくのはなし』でした。

このシリーズは、小さな子どもといっしょに読める性の絵本として、その先進的な内容とともに、刊行当初から大きな話題となりました。

ぼくのはなし』をつくるきっかけとなったのは、和歌山さんご自身の子育ての経験です。
当時は中高生向けの性教育の本しかなかった中で、絵本ならもっと小さいうちから親子で大切なことを話しあえるのではないかと考えました。



「ぼく」が今の自分からさかのぼり、みんなに愛され育てられたこと、祝福されうまれてきたこと、愛しあって命がうまれたこと――とたどっていきます。
幼い子の「ぼくはどうやってうまれたの?」という問いにこたえる1冊になりました。

性交についても真正面から説明する本作の内容は、とても覚悟がいることだった、という和歌山さん。ですが、「ぼくがぼくとしてうまれたことがよかった」といえる絵本を描きたかったのだとのちに話しています。




刊行30周年を記念した2022年のインタビューはこちらから全文をお読みいただけます。
https://www.doshinsha.co.jp/news/detail.php?id=2842


ぼくのはなし』から約30年後、和歌山さんは産婦人科医の遠見才希子さんとともにふたたび性をテーマにした絵本『おとなになるっていうこと』をつくりあげました。

おとなになるっていうこと』(遠見才希子・作 和歌山静子・絵)


この作品では、和歌山さんご自身がずっと描きたかったという月経のこと、また性自認のありかたについてもとりあげられました。


 日・中・韓 平和絵本『くつがいく



くつがいく』(和歌山静子・作)

日・中・韓 平和絵本」とは、日本、中国、韓国の絵本作家が手をつなぎ、平和のための絵本をたがいの国で刊行しあうプロジェクトです。
和歌山静子さんは、田島征三さん、田畑精一さん、浜田桂子さんら日本の絵本作家のメンバーのひとりとして、このプロジェクトに参加しました。

国を超え、絵本作家同士がたがいの作品について議論をかわし、それぞれの絵本を作り上げていくという、異例の取り組みでした。

和歌山さんの作品は、『くつがいく』。

「ざっ ざっ ざっ  ぼくたち くつは どこへいく」

和歌山さんは、兵士たちの「軍靴」を戦争の象徴として描きました。


軍靴は、となりの国の、ちかくの国の、みなみの国のひとびとのくらしや命をふみにじりました。そして、軍靴そのものも、軍靴をはいていた兵士たちもボロボロになっていきました。

絵本の最後、ひとりの少女が力強く決意を語ります。


「わたしは わたしの みらいを いきていく
 わたしの みらいに せんそうは いらない」

幼いころに戦争を体験した、和歌山静子さん。
ほんとうの戦争の姿を描くことで、平和を守ることの大切さを伝えたい、和歌山さんの強い思いが伝わる1冊です。
くろねこさん しろねこさん

単行本絵本

くろねこさん しろねこさん

得田之久 ぶん/和歌山静子

「くろねこさん しろねこさん あそびに でかけた。」「あれ! くろねこさん どこいった?」「おや! しろねこさん どこいった?」しろとくろ、対極にあるふたつの色をしたねこが、おさんぽに出た先のさまざまな場所によって見えたりみえなかったりすることで、色の見え方の不思議を楽しむ認識絵本です。
和歌山静子さんの描く、しろとくろのシンプルな絵が、子どもたちにわかりやすく内容を伝えます。親子で一緒に「しろねこさんはどこ?」「くろねこさんは、みつけられる?」など、コミュニケーションを取りながら楽しめる絵本です。

  • 2歳~
  • 2014年7月25日初版
  • 定価1,210円 (本体1,100円+税10%)
  • 立ち読み
ぼくのはなし

おかあさんとみる性の本

ぼくのはなし

和歌山静子 さく

「ぼくはどこから生まれたの?」という子どもたちの問いにわかりやすくこたえた、幼児むけの性教育の絵本。
短い文章とシンプルな絵で、3歳頃から親子で読める、性教育のロングセラー絵本です。お子様の性別を問わずご利用いただける内容です。

おじいちゃんやおばあちゃんにかわいがられて育ったこと、おかあさんのお腹の中からうまれてきたこと、おとうさん、おかあさんが愛し合ってうまれてきたなど、出産・性交や、受精卵など、科学的な知識だけでなく、祖父母や両親からかけがえのない命を受け継いだ、たったひとりだけの大切な存在であることを伝えます。

プライベートゾーンや自分の体と心を守ることの大切さを描いた姉妹本『わたしのはなし』とともに、ぜひあわせてお読み下さい。

  • 3歳~
  • 1992年10月20日初版
  • 定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
  • 立ち読み
おかあさんとみる性の本

おかあさんとみる性の本

山本直英 監修/山本直英和歌山静子 さく

私たちはどこから、どのようにして生まれてきたの? なぜ世の中には男性と女性がいるの? 科学的な知識とともに、子どもたちに、プライベートゾーンや自分の体と心を守ること、生まれてきた喜びをわかりやすく伝えます。幼児期から正しい性の知識を、という要望にこたえた画期的なシリーズ。
『ぼくのはなし』
『わたしのはなし』『ふたりのはなし』の全3巻を収録。

<関連情報>シリーズ30周年記念インタビュー
「おかあさんとみる性の本」和歌山静子さん

  • 3歳~
  • 1992年10月20日初版
  • 揃定価4,620円 (本体4,200円+税10%)
おとなになるっていうこと

性とからだの絵本

おとなになるっていうこと

遠見才希子 作/和歌山静子

「せいりようひん」ってなんだろう?
ぼくはおとこらしくないとだめ?
ぼくの疑問、おねえちゃんの悩み、おかあさんの幼なじみの話などを通して、第二次性徴やからだの違い、さまざまな性のあり方まで、性をめぐるさまざまな問題を考えます。

  • 小学1・2年~
  • 2022年3月30日初版
  • 定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
  • 立ち読み
くつがいく

日・中・韓平和絵本

くつがいく

和歌山静子

70年前、日本の兵隊たちはアジアの国ぐにで何をしたのか。幼いころ、何もわからず戦争を体験した作家が、あらためて戦争とは何かを問いただす。兵隊たちに履かれて海をわたり、戦場に行った靴たち。その運命をとおして、ほんとうの戦争のすがたを描き、平和を守ることの大切さをうったえる。そして、少女はいま、はっきりと自分の意志を伝える。「わたしはわたしの未来を生きていく。わたしの未来に戦争はいらない」と。

  • 小学1・2年~
  • 2013年3月20日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み
日・中・韓平和絵本

日・中・韓平和絵本

日本・中国・韓国の絵本作家が手をつなぎ、子どもたちにおくる平和絵本シリーズ。

平和を願う3か国の絵本作家が国を超えて交流を重ね、平和と戦争について、命について、様々な視点から描いた絵本。歴史と向き合い、考え、人と手をとりあって未来を切り開いていく力を育みます。

  • 小学1・2年~
  • 2018年3月23日初版
  • 揃定価21,505円 (本体19,550円+税10%)