童心社の絵本

クジラがしんだら

いのちのおわりからはじまる、ふしぎないのちのつながり

江口絵理 文/かわさきしゅんいち 絵/藤原義弘 監修

いのちのおわりからはじまる、ふしぎないのちのつながり

深海はえさが少なく、生きものが少ない場所です。ところが、ごくまれに巨大な食べ物のかたまりが降ってくる。それが命を終えたクジラです。クジラの体は、長ければ100年にもわたってさまざまな生物の命を支え続けます。
はじめはサメ、コンゴウアナゴなどが肉を食べ、タカアシガニやグソクムシなど小さな生物が続きます。骨だけになると、こんどはホネクイハナムシという骨を食べる生物があらわれ、その後も長期間にわたりクジラは分解されていきます。
このクジラの死骸を中心に形成される特殊な生態系は「鯨骨生物群集」と呼ばれ、近年の研究でその実態が明らかになってきました。

50~100年というのは、とほうもなく長い時間ですが、必ずどこかで終わりは来ます。
鯨骨に生きる生き物たちは、やがて別のすみかと食べ物を探さなくてはいけない。こんなに広い海で、そうつごうよく、沈んだ大きなクジラに出会えるものでしょうか?
しかし、まっくらな宇宙にも星があるように、深い海の底からあてどない旅に出かける生物たちにも、どこかに必ず明かりがあるのです。でなかったら、クジラに集う生きものたちがずっと子孫を残し、命をつなぎ続けることはできなかったはずです。

これは深海という厳しい世界に生きる生物たちの、いっときの大宴会を描いた物語絵本です。
監修は国立研究開発法人海洋研究開発機構の藤原義弘氏。

  • 定価1,980円 (本体1,800円+税10%)
  • 初版:2024年9月1日
  • 判型:B5変型ワイド判/サイズ:25.1×25.6cm
  • 頁数:40頁
  • 4・5歳~
  • ISBN:978-4-494-01599-3
  • NDC:480

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内容説明

深海はえさが少なく、生きものが少ない場所です。ところが、ごくまれに巨大な食べ物のかたまりが降ってくる。それが命を終えたクジラです。クジラの体は、長ければ100年にもわたってさまざまな生物の命を支え続けます。
はじめはサメ、コンゴウアナゴなどが肉を食べ、タカアシガニやグソクムシなど小さな生物が続きます。骨だけになると、こんどはホネクイハナムシという骨を食べる生物があらわれ、その後も長期間にわたりクジラは分解されていきます。
このクジラの死骸を中心に形成される特殊な生態系は「鯨骨生物群集」と呼ばれ、近年の研究でその実態が明らかになってきました。

50~100年というのは、とほうもなく長い時間ですが、必ずどこかで終わりは来ます。
鯨骨に生きる生き物たちは、やがて別のすみかと食べ物を探さなくてはいけない。こんなに広い海で、そうつごうよく、沈んだ大きなクジラに出会えるものでしょうか?
しかし、まっくらな宇宙にも星があるように、深い海の底からあてどない旅に出かける生物たちにも、どこかに必ず明かりがあるのです。でなかったら、クジラに集う生きものたちがずっと子孫を残し、命をつなぎ続けることはできなかったはずです。

これは深海という厳しい世界に生きる生物たちの、いっときの大宴会を描いた物語絵本です。
監修は国立研究開発法人海洋研究開発機構の藤原義弘氏。

読者の声

読者さま

絵本ですが、大人が読んでも興味深く面白いです。(43歳・女性)

小4女児と2歳女児に読み聞かせしました。小4女児は深海生物の生態に興味を示し、鯨が分解されていく過程を知り驚き面白かったそうです。2歳児にはお話の理解は難しいと思うのですが、何度も読み聞かせをせがまれ気に入った様子です。2歳児は絵が気に入った様子です。描かれている深海生物を指差し「これは?(何て名前の生物?)」とよくきいてきます。 絵本ですが、大人が読んでも興味深く面白いです。
読者さま

素敵な絵本に出会えてよかったです(23歳・女性)

たまたま絵本コーナーを歩いていたとき、絵とタイトルに惹かれて購入しました 今まで海の生き物に興味はあったけれど目が怖くて、図鑑を読むことができませんでしたが、かわさきしゅんいちさんの絵はリアルなのに、キャラクターらしくとても可愛いと感じるました また、絵本は子ども向けというイメージがありましたが、ボリュームのある内容で勉強になりました 素敵な絵本に出会えてよかったです

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書評

科学絵本と物語絵本のあわいに 母のひろば724号 2024年9月15日発行
 深い海の底でクジラの骨に集う生きものたちの話を初めて聞いたとき、わたしが感じたのは、命綱をつけずにまっくらな宇宙に放り出されたような、こころもとない気持ちでした。
 深海は、日の光が差さず、生きものが少なく、だから食べものが少ないところです。ところが、ごくたまに、突然、上から巨大な食べもののかたまりが降ってくる。それが、命を終えたクジラです。長ければ一〇〇年にもわたって、クジラの体はさまざまな生きものの命を支え続けるといいます。
 とほうもなく長い時間だけれど、必ずどこかで終わりはきます。終わりぎわに生まれた子は、どうしても別のすみかと食べものを探さなくてはいけない。こんなに広い海で、そうつごうよく、沈んだクジラに出会えるものでしょうか?
 この絵本で私は、クジラの命の終わりから始まる深海の生きものたちの大宴会と、宴の終わりに外の世界へと旅立った小さな命のゆくすえを描きました。
 まっくらな宇宙にも星があるように、見渡すかぎりの乾いた砂漠にとつぜん緑あふれるオアシスが現れるように、人里から遠く離れた森の奥で、明かりがともる小さな家にふいに出くわすように、深い海の底にも必ずどこかに明かりがある。クジラの骨に集う生きものたちは、それを教えてくれます。
 深海の生きものたちが抱える不安や喜びを、読み手が体で感じてもらえる本にしたい。そんなわたしの思いを現実化してくれたのが、生物画家かわさきしゅんいちさんの絵でした。緻密に描写できる知識と技術をお持ちでありながら、秀でたバランス感覚で生きものたちの仕草や表情をときにコミカルに、ときにはドラマチックに描き、客観的な科学絵本とはひとあじ異なる、オリジナルなスタイルの絵本として命を吹き込んでくれました。
 監修は鯨骨生物群集研究の第一人者である藤原義弘さん。客観と主観の間で試行錯誤するわたしたちを温かく見守り、主観的な表現に振れ過ぎたときには引き戻してくれました。稀有な組み合わせで実現した本書が、子どもはもちろん、深海好きの大人にも届いてくれたらと期待しています。
江口絵理/児童書作家

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