2021.05.18

<インタビュー> 「むしのたまごシリーズ」 作者・たけがみたえさん

(2021年3月8日 童心社にて)

子どもたちに人気のむしを主人公にした、新しいシリーズがスタートしました!
その名も「むしのたまごシリーズ」。
むしのあかちゃんが大きくなって、卵をうむまでを描きます。

シリーズ第1弾となる『かたつむりの でんでんちゃん うまれたよ!』『かぶとむしの ぶんぶんちゃん うまれたよ!』の刊行を記念して、作者のたけがみたえさんにお話をうかがいました。



(『かぶとむしの ぶんぶんちゃん うまれたよ』作者・ねもとまゆみさんのインタビューはこちら)
(「むしのたまごシリーズ」監修者・須田研司さんのインタビューはこちら)






身近でふしぎな生き物 カタツムリ


――『かたつむりの でんでんちゃん うまれたよ!』は、たけがみさんの「作・絵」ですが、お話はどのようにうまれたのでしょうか。


今回、「卵からうまれたむしのあかちゃんが大きくなって、卵をうむまでを描くシリーズをつくりたい」と編集者さんから聞いて、すぐに思いうかんだのがカタツムリでした。
私が通っていた小学校には、ゼラニウムの花壇がありました。そこで毎年、たくさんのカタツムリのあかちゃんがうまれているのを見ていたんです。
自分が暮らす環境の中で、大人の姿もあかちゃんの姿も見られる生き物ってそう多くないと思うんですが、私にとって大人のカタツムリも、あかちゃんカタツムリも、とっても身近だったんです。



――身近なだけでなく、きっとカタツムリの魅力も感じていたんですね。


そうですね。ふしぎな生き物だなあと思って。
絵本の巻末の解説にもあるんですが、カタツムリは、実は巻き貝の仲間なんですね。だから、海にいる巻き貝に似た姿をしていて、でも陸にすんでいる。
「冬眠」だけでなく、暑いときにはぬめぬめした体がひからびないように「夏眠」(かみん)するというのもおもしろいと思いました。「夏眠」という言葉は知らなかったんですが、夏にカラスウリの葉っぱにからだをかくしたカタツムリの殻がくっついているのを見たことがあって、ああ、そういうことだったんだなって。そのとき見た光景を絵にしました。
カタツムリにはオスもメスもないというのも、たまごをうむまでを描くシリーズだからこそ、描けたかなと思います。




愛らしく、表情豊かなむしたち


――『かぶとむしの ぶんぶんちゃん うまれたよ!』は、ねもとまゆみさんが物語を書いていますが、でんでんちゃんと同じように、ぶんぶんちゃんにも個性を感じました。


カブトムシは成虫になるまで土の中にいるので、幼虫を実際に見ることはなかなかできません。それで、監修の須田さんにいろいろ教えていただきました。
例えば、「クワガタの幼虫とカブトムシの幼虫は一見似ているけれど、お尻のほうまでむっちりしているとカブトムシの幼虫らしいよ」とか。
そういうことを教えていただきながら、ぶんぶんちゃんに向き合って絵を描いていると、「あ、ぶんぶんちゃん、かわいいな」って思う瞬間があるんです。林でカブトムシを見つけたときに感じる生きた虫の表情をどう表現するかも、いろいろ試行錯誤しました。



――たけがみさんは木版画の作品が多いですが、今回はどのように絵を描かれたのでしょうか。


はじめに黄色や青の色鉛筆でむしの下地を描いて、その上にアクリル絵の具やクレヨンで色を重ねています。輪郭線はGペンで描いています。いろいろ試してみて、この描き方になりました。カタツムリは透明感を出すために、インクを変えているところもあります。
そうして色を重ねるのは、版画と通じるところもあります。下の色と上に重ねた色がちょっとずれたりして、それは失敗ではなくて、ねらってやっているんです。
カブトムシのほうは夏の夜の空気で画面全体を包み込みたくて、青いインクを版画のローラーでぬった場面もあります。

――最後に読者のみなさんへ、一言お願いします。


この絵本の主人公たちは、みなさんの身近にいます。絵本の中だけでなく、散歩しているときなど、いろいろな生き物の気配を感じてみてください。目を合わせてみるだけでも、おもしろい発見がきっとありますよ。

――ありがとうございました。






プロフィール
たけがみたえ(竹上妙)
東京都生まれ。和光大学表現学部芸術学科卒業。長野で牛にかこまれたときの衝撃から、生き物と目が合った瞬間「見たら見られた」をテーマに木版画を制作し、個展やグループ展で発表してきた。絵本に『マンポウひまな日I (絵本館)『きょうは泣き虫』(好学社)『うみのあじ』(あかね書房)「みたらみられた」(アリス館)などがある。


たけがみたえさんからのメッセージ動画です。


たけがみたえさんのメッセージイラストのライブペインティング動画です。
かたつむりの でんでんちゃん うまれたよ!

むしのたまごシリーズ

かたつむりの でんでんちゃん うまれたよ!

たけがみたえ 作・絵/須田研司 監修

でんでんちゃんはうまれたばかりでも、自分で食べ物を探します。暖かいうちにたくさん食べて、冬になると殻にとじこもって冬眠します。
そして3年たった春、体が大きくなって、殻のうずまきの数も増えました!
 しとしと雨が好きなでんでんちゃんはやわらかい体でどんな道も進みます。なめくじと似ているけれど、どこが違うかな?

 オスもメスもないカタツムリがどう卵をつくるかなど、楽しいお話の中で生態を知ることもできます。

  • 4・5歳~
  • 2021年5月10日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み
むしのたまごシリーズ

むしのたまごシリーズ

ねもとまゆみ 作/たけがみたえ 絵/たけがみたえ 作・絵/須田研司 監修

この絵本シリーズは、むしの一生を温かみのあるストーリーと迫力あふれる絵で描いています。「むしってこんなふうにくらしているんだ!」「むしってこんなことができるの?」絵本をみると、きっといろいろなおどろきや発見があると思います。主人公のむしたちがどんな生き物なのか、そのむしが生きていくためにはどんな自然が必要なのかを知り、興味や関心を持ってもらえたらうれしいです。
監修者・須田研司

巻末には、解説と、むしの卵、あかちゃん、成虫それぞれのほんとうの大きさの絵を掲載しています。

  • 3歳~
  • 2021年5月10日初版
かぶとむしの ぶんぶんちゃん うまれたよ!

むしのたまごシリーズ

かぶとむしの ぶんぶんちゃん うまれたよ!

ねもとまゆみ 作/たけがみたえ 絵/須田研司 監修

暑い夏でもすずしい土の中で、ぶんぶんちゃんはうまれました。いっぱい食べて大きくなって、脱皮して、さなぎになる前に体をくねらせて自分のへやをつくって……
土の中でぶんぶんちゃんの姿が変わっていきます。ようやく成虫になり土の外に出たぶんぶんちゃんは、飛ぶのがちょっと苦手で、木のしるが大好き!
 やがてオスのつのつのとなかよくなったぶんぶんちゃんは、どんな卵をうむのかな? 

生態をふまえた、楽しいお話絵本。

  • 4・5歳~
  • 2021年5月10日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み