インタビュー
<インタビュー>「むしのたまごシリーズ」 監修者・須田研司さん
むしの一生を温かみのあるストーリーと迫力あふれる絵で描く「むしのたまごシリーズ」。
その第一弾、『かたつむりの でんでんちゃん うまれたよ!』と『かぶとむしの ぶんぶんちゃん うまれたよ!』が、2冊同時刊行となりました。
その監修者である須田研司さんにお話をうかがいました。
(「むしのたまごシリーズ」作者・たけがみたえさんのインタビューはこちら)
(「むしのたまごシリーズ」作者・ねもとまゆみさんのインタビューはこちら)
いのちのエネルギー、いのちのつながり
――子どもたちに昆虫や生き物のおもしろさを伝える活動を続けてこられ、本の監修のお仕事も多い須田さんですが、「むしのたまごシリーズ」の魅力は、どんなところでしょうか。
やっぱり、たけがみさんの絵がすばらしいと思います。絵本ですから、それは本当に大きな魅力です。
絵本の場合、むしを思いきってキャラクター化して、それがユニークでおもしろいこともあります。でも、むしの一生を描く今回のシリーズは、それでは説得力がうまれません。
フィールドでむしと向き合っていると、生きているものの力強いエネルギーを感じるんですね。たけがみさんの絵からも、その力強さを感じます。ちゃんと表情もあるけれど、生き物と離れすぎていない。
カブトムシのあかちゃんがうまれる場面では、うまれた幼虫のまだたよりない、かよわい感じと、生まれ出たいのちの力強さと、両方を感じてすごいなあと、思いました。
――幼児向けの物語絵本で、交尾や産卵まで描いている絵本はあまり多くないと思うのですが……。
そうですね。むしの観察をしていると、交尾をしている姿を見かけることもありますが、子どもたちはどうやっていのちがうまれてくるのか、小さな頃から興味をもっています。むしがうまれてから卵をうむまでを短いページ数で描くのはとても難しかったと思うのですが、ページをめくるたびに、たけがみさんのダイナミックな絵の変化があり、いのちのドラマを感じられる展開になっていると思います。
むしの一生はとても短く、その一生は自分の子孫をのこすためにあります。そのいのちのつながりを感じられると、実際にむしと出会ったときの気持ちや向き合い方が変わってくるのではないでしょうか。お子さんたちからすると、カブトムシなどはオスが注目されることが多いですが、ともに生きるメスのことも知ってほしいです。
身近なむしの、おどろきのくらしを見てみよう!
――お話ができたとき、ラフスケッチができたときなど、制作の段階ごとに作者のねもとさん、たけがみさんとお会いして打ち合わせされたとうかがっています。
はい。たけがみさんの絵の魅力をいちばん大切にしながらも、いっしょにいろいろ確認しました。例えば、『かたつむりの でんでんちゃん うまれたよ!』の絵の中にチョウが出てきますが(どこに出てくるか、ぜひ探してみてください)、チョウの羽は、オスとメス、羽の表と裏でも模様が違います。そういうことや、出てくる植物はなにがいいかなども、相談しました。
身近にある植生を考えるだけではなく、絵本なので絵にするとどうかなども考えなくてはいけないのが、難しいんなあと思いました。
――確かに、絵本に出てくる生き物や植物は、身近に見られるものばかりですね。
ミミズ、カエル、ダンゴムシ、クヌギ、タンポポ、シロツメクサ……散歩をしていたら、どこかで出会えるものばかりです。
むしが同じ地球に、自分の身近に生きていることを感じてもらえたらいいなあと思います。
子どもたちと出かけると、子どもたちそれぞれにむしや植物を見る視点があるんですね。
「このむしのここが好き」とか、「大きいものにひかれる」とか。
絵本を読んでいるときも、自然の中で遊んでいるときにも、そういう発見をしてもらえたらうれしいです。
いきなり外でむしに会うと、ちょっとびっくりしてしまうという方も、絵本でむしに出会い、感情移入してみると、見え方が変わってくるかもしれません。
―最後に、絵本を読んでくれる子どもたちや、大人のみなさんにも、一言お願いします。
絵本の主人公のむしたちの物語を見ると、そのむしがどんな生き物なのか、生きていくためにはどんな自然が必要なのかもわかります。ふしぎなこと、おどろくこともたくさんあります。この絵本をきっかけに、同じ地球にくらすなかまとして、むしや自然に興味や関心をもってくれたらうれしいです。
――ありがとうございました。
プロフィール
須田研司(すだけんじ)
むさしの自然史研究会代表。多摩六都科学館や武蔵野自然クラブで、子どもたちに昆虫や生き物のおもしろさを伝える活動を続けている。監修書に「みいつけた!がっこうのまわリのいきもの」シリーズ(全8 巻・学研プラス)『世界の美しい虫』(パイインターナショナル)『じゅえき太郎のゆるふわ毘虫大百科(実業之日本社)などがある。
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かたつむりの でんでんちゃん うまれたよ!
でんでんちゃんはうまれたばかりでも、自分で食べ物を探します。暖かいうちにたくさん食べて、冬になると殻にとじこもって冬眠します。
そして3年たった春、体が大きくなって、殻のうずまきの数も増えました!
しとしと雨が好きなでんでんちゃんはやわらかい体でどんな道も進みます。なめくじと似ているけれど、どこが違うかな?
オスもメスもないカタツムリがどう卵をつくるかなど、楽しいお話の中で生態を知ることもできます。- 4・5歳~
- 2021年5月10日初版
- 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
- 立ち読み
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むしのたまごシリーズ
ねもとまゆみ 作/たけがみたえ 絵/たけがみたえ 作・絵/須田研司 監修
この絵本シリーズは、むしの一生を温かみのあるストーリーと迫力あふれる絵で描いています。「むしってこんなふうにくらしているんだ!」「むしってこんなことができるの?」絵本をみると、きっといろいろなおどろきや発見があると思います。主人公のむしたちがどんな生き物なのか、そのむしが生きていくためにはどんな自然が必要なのかを知り、興味や関心を持ってもらえたらうれしいです。
監修者・須田研司
巻末には、解説と、むしの卵、あかちゃん、成虫それぞれのほんとうの大きさの絵を掲載しています。- 3歳~
- 2021年5月10日初版
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かぶとむしの ぶんぶんちゃん うまれたよ!
暑い夏でもすずしい土の中で、ぶんぶんちゃんはうまれました。いっぱい食べて大きくなって、脱皮して、さなぎになる前に体をくねらせて自分のへやをつくって……
土の中でぶんぶんちゃんの姿が変わっていきます。ようやく成虫になり土の外に出たぶんぶんちゃんは、飛ぶのがちょっと苦手で、木のしるが大好き!
やがてオスのつのつのとなかよくなったぶんぶんちゃんは、どんな卵をうむのかな?
生態をふまえた、楽しいお話絵本。- 4・5歳~
- 2021年5月10日初版
- 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
- 立ち読み