絵本・ちいさななかまたち

ばあばは、だいじょうぶ

ばあばは、だいじょうぶ

立ち読み

カートにいれる

楠 章子 作/いしい つとむ

大好きな、やさしいばあばが、この頃変わってしまった。何度も同じ質問をしてきたり、とくいだった編み物ができなくなったり。ばあばは「わすれてしまう病気」なんだ。そして冬の寒い日、ばあばがいなくなってしまい…。

老い、認知症、介護といった、とても難しい、しかし誰もが避けては通れない問題を子どもの視点から描き出しています。記憶を少しずつ失っていっても、それでも変わることのない人間性、家族の繋がりを描き出す感動作です。

  • 定価1,404円 (本体1,300円+税)
  • 初版:2016年12月20日
  • 判型:B5変形判/サイズ:20.7×22.2cm
  • 頁数:37頁
  • ISBN:978-4-494-00597-0
  • NDC:913

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書評

新婦人しんぶん 2017年3月23日
広瀬恒子さんが選ぶ子どもの本 ねえ、いっしょに
朝日新聞 2017年2月3日 生活面
「認知症 子どもの視点で」
噓のない絵本『ばあばは、だいじょうぶ』(母のひろば632号)  2017年1月30日
 つばさは、ばあばが大好き。
 学校から帰ったら、楽しかった事も、悲しかった事も、困った事も、何でも、ばあばに聞いてもらいます。
 なぜって、ばあばは、いつでも、「だいじょうぶだよ」って、つばさの頭をなでてくれるから。
 つばさは、ばあばが大好き!
 でも、そのばあばが、わすれる病気になって……。
 いつしか、つばさは、ばあばのそばに近づかなくなります。
 ここで思うのは、物語には、噓(フィクションとも言う)があってもいいということです。そこに真実が秘められてさえいればいいのです。
 絵本や童話、小説も、そういうものだと思います。
 ことに、老いや死、さらに老いによる認知症などの病を、真実のまま書いて絵本にしても、書く人も読む人もただ辛いだけ。だから、最も噓を書いてはいけない人生の重い体験の物語ほど、素敵な噓をつかなくてはならない場合もあるのです。
 けれど、この物語には、目につくような噓を感じません。なのに、心に沁みる素敵な絵本になっています。画家のいしいつとむさんの心温まる画風のせいもあるでしょうけれど、なにより、作者自身が老親の介護を長期間体験し、子として家族として嘆きつつ、胸を痛めつつ、それでも最後には老親を愛おしむしかなかった深い思いが地盤になっているからこそ、この噓のない、温かな世界を構築できたのだと思います。
 この物語に登場する家族は、みな、いい人ばかりです。その中で、私は、おとなりの怒りん坊のおじさんがお気に入りでした。
 怒りん坊は人間の一面に過ぎないとわかっていても、人というものは、そういう目立つ一面だけで、他人を判断してしまいがちです。
 けれど、この物語は、そのような人の一面だけでなく、深く重層的で、時には意外に見える人の心のありようを見事に描いてくれるのです。
 そういう意味で、この絵本は、人生の悲しみの深みや、些細な事に翻弄される感情を描きつつも、それでも消えない「人の存在の愛おしさ」そのものを感じさせる物語になっているのかもしれません。
 理屈ではなく、説明ではなく、大きな噓をつくこともなく、心に沁みる物語を書くのは、とても難しいけれど、書く前に、深く感じることがあってこそ生まれる物語があります。それこそが、子どもの心にも大人の心にも沁みるこの絵本、『ばあばは、だいじょうぶ』なのです。
越水利江子/作家