2023.01.31

<連載①>ものがたりのはじまり『14ひきのひっこし』

まもなく40周年をむかえる、「14ひきのシリーズ」
これまでに12作が刊行されていますが、ことしは連載企画として毎月1冊ずつご紹介していきます。

今回は、1983年に『14ひきのあさごはん』と同時刊行された、『14ひきのひっこし』です。

14ひきというと、木の中のおうちを思い浮かべる方も多いと思います。
『14ひきのひっこし』では、木をさがし、自分たちの手でおうちをつくるところ、つまり14ひきの物語のはじまりが描かれています。

14ひきの絵本をつくろうと決意したとき、作者のいわむらかずおさん自身も、東京から栃木県の益子へ「ひっこし」をしました。
それは、自然の中に身を置き、14ひきと同じ視点で絵本をつくるためでした。


本作では、いわむらさん自身が体験したひっこしへの思いがさまざまなところで表現されています。

設計図を書き、職人さんへの依頼も自分でおこなったといういわむらさん。
図面を手に子どもたちにあれこれ指示を出している14ひきのおとうさんの姿に、当時の自分を重ねます。

14ひきは川から水をひき、橋をかけます。
くらしのために必要なものは何なのか、それはどうしたら手に入れられるのか。
いわむらさん自身が、自らの手でくらしをつくっていったことが、おはなしの中で描かれています。


そして14ひきにかかせないのが、食卓の場面。
いわむらさんは、この場面を「14ひきの絵本をつくる上で、まず描きたかった」そうです。
結局『14ひきのひっこし』だけでは満足せず、どの作品にも、食卓をかこむシーン、家族で何かを食べるシーンを描きました。

いわむらさんは言います。
「食べることは、命のいとなみでいちばん大切なこと」

食事のあたたかさや、14ひきの楽しい会話がきこえてきそうな、ほっとする場面です。

こうしてすてきなおうちをつくった14ひき。
次はどんなおはなしでしょうか。
どうぞお楽しみに。


(いわむらかずお・さく)
14ひきのひっこし

14ひきのシリーズはじめての「14ひきのシリーズ」(全2巻)

14ひきのひっこし

いわむらかずお さく

森の奥めざして、さあしゅっぱつ。川をわたり、不安な一夜をすごして、やっとみつけた、すてきな根っこ。みんなで力をあわせて家をつくり、橋も、水道もできた。たべものもたくさんあつめて、さむい冬がきてもだいじょうぶ。みんな、ほんとうにごくろうさま。

人気ロングセラー絵本「14ひきのシリーズ」の第1作。ねずみの家族があたらしいすみかを求めて森へひっこし、木の根元に家づくりをするこの作品から、シリーズの物語がはじまります。

お父さんが図面を書いて、子どもたちも手伝って、居心地のいい家をみんなで一緒につくります。
大人の部屋は1階、子どもたちの部屋は2階と3階。竹を切って床を作ったら、みんなのベッドを並べよう。

豊かな自然の中でくらす、お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん、そしてきょうだい10ぴき。1ぴき1ぴきの個性が丁寧に描きこまれていて、何度見ても発見があります。

  • 3歳~
  • 1983年7月10日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み