インタビュー
インタビュー「わらべうたでひろがるあかちゃん絵本」こがようこさん、降矢ななさん
新しい絵本シリーズ、「わらべうたでひろがるあかちゃん絵本」(全3巻)。
著者のこがようこさん、降矢ななさんに、絵本ができるまでのお話や、作品にこめた思いをうかがいました。
――語り手として、また作家として、子どもにお話を届ける活動に長く携わってこられたこがようこさん。わらべうたによるあかちゃん絵本という今回のシリーズは、どのように生まれたのでしょうか。
こがさん:わらべうたは、ずっと古くから伝わってきたもので、あかちゃんにとっても、お母さんにとっても心地いいものだと思っています。あかちゃんをトントンとあやすときのゆったりとしたリズムは、わらべうたのリズムそのものです。日本人だからこそ伝わりやすいとも思うのですが、今では「少し難しい」「よく知らない」といった声も聞かれます。絵本の形にすることで、わらべうたが広がっていくといいな、そうしてまた後の世代に伝承されていくといいな、そんな思いから今回の作品は生まれました。
私は子どものころにわらべうたで遊んだ経験ももちろんあるのですが、大人になってから、多くのわらべうたに出会いました。今回はその中から、短い言葉でありながら物語性を感じるもの、歌が複雑でないものを3つ選び、絵本にしました。
――降矢さんはわらべうたのあかちゃん絵本の絵、ということでどんな思いで取り組まれましたか?
降矢さん:今回のテキストを読んでも、とてもシンプルでリズミカルで、やはり選ばれた言葉が残ってきたのだなと感じます。娘を育てている中でスロヴァキアのあそびうたに出会うこともありました。日本でいう「かごめ かごめ」のような水車小屋の粉引きの車がモチーフになった歌もあって、国が変わっても子どもたちが親しむ素朴な歌が伝わっているのは同じだと感じました。今まであかちゃん絵本の絵を描いたことはありますし、子育ての中であかちゃん絵本を読んではいたのですが、あかちゃんがどこに反応するかわからない、という難しさがありますね。あかちゃんに向けて描くときは、些末なものは削ぎ落としてシンプルに、ということを大切にしています。紙芝居の絵を描いたときも感じましたが(『やさしいまものバッパー』童心社)、シンプルに、というのはなかなか大変です。
――『ねーずみ ねーずみ どーこ いきゃ?』はねずみやうさぎなどの動物たちが「わがすへ」とお家へ帰っていくお話です。
こがさん:いろんな動物が出てきて、最後に「はなちゃん」という女の子も登場します。「わがすへ」というのは家であり、お父さんお母さんのふところ、とも言えると思います。あかちゃんにも大好きなところへとびこむ喜びが伝わり、ほっとできるのではないでしょうか。
降矢さん:はじめから絵本としての構成がしっかりしたお話だと感じていました。動物たちはぬいぐるみのようでもデザイン的でもなく、でも親しみがもてるように、と思い描きました。はなちゃんの場面にはねこも出てきます。きっとあかちゃんは「このねこちゃんはひとりなの?」と言うだろうと思い、裏表紙でお母さんのもとへ帰るところを描きました。
――『へっこ ぷっと たれた』は、おならがモチーフのかわいいお話です。もとは「おいっちにのだるまさん へっこぷっとたれた」という短いわらべうたなのですね。
こがさん:これはとってもかわいくて私が大好きなわらべうたです。「おいっちに」という言葉は文字で見ても誰もがイメージできますし、絵本にぴったりだと思いました。おばけも登場しますが、怖い、という経験も子どもにとってとても大切なんですよね。あくまで安心できる人と一緒に怖がるということですが。そういう意味で、降矢さんの描いてくださったおばけはかわいすぎずイメージにぴったりでした。
降矢さん:「おいっちに」という言葉がとてもリズミカルだったので、きのこやあひるたちの傾きや揺れ、「ぷっ」の瞬間の動きが伝わるように描きました。だるまさんはかわいくはせず、あかちゃんが「ちょっと怖いな」と感じるくらいにして…。でもその分「ぷっ」のときにユーモアたっぷりに表情や動きを大きく描きました。
――『おせんべ やけたかな?』は子どものころに遊んだ経験のある方も多いかもしれませんね。どのようにあかちゃんも楽しめる絵本に作っていったのでしょうか。
こがさん:これは降矢さんと一緒に作り上げていった感じです。おせんべがひっくり返ったり、焼けたおせんべを指差したりするのがあかちゃんにとっておもしろいだろうな、とは思っていたのですが…。ひっくり返ると顔になる、というのは降矢さんのアイディアです。とても斬新ですよね。
降矢さん:そうでしたっけ(笑)? おせんべそれぞれの表情を少し変えたり、「やけた!」のとき、少し焦げ目を付けたりしています。あかちゃんがどんなふうに見てくれるのか楽しみです。
――それぞれのわらべうたの世界を絵本の形で楽しめるように、おふたりで作り上げていらしたのですね。それでは最後に、このシリーズを届けたい読者の皆様へメッセージをお願いいたします。
こがさん:編集者の方が保育園や子育て支援センターなどに出かけて、お母さんとあかちゃんたちに試作段階の絵本を読んでもらった様子をビデオで見たのですが、お母さんたちは最初からとても上手に、自然に楽しんでくれていました。おせんべが焼けたら手を返したり、「ぷっ」とおならがでるところではあかちゃんのおしりにふれたり。わらべうただからといって敷居が高いと思わずに、あかちゃんと心と体をふれあわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。
――ありがとうございました。
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おせんべ やけたかな
「お・せ・ん・べ・や・け・た・か・な」でページをめくると、「やけた!」。
いちまいずつ、おせんべが焼けていきます。どのおせんべが焼けたかな?
こんがり焼けたおせんべはうれしそうに笑い、「おせんべやけたかな」と、いっしょに唱えてくれます。
わらべうたのリズムに合わせて、あかちゃんといっしょに指さししながら読んでも楽しい1冊。
巻末には絵本を読み終わったあと、あかちゃんとできるわらべうたのあそびも紹介。- 0・1歳~
- 2018年9月5日初版
- 定価1,045円 (本体950円+税10%)
- 立ち読み
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へっこ ぷっと たれた
おいっちに、おいっちに……と、きのこが歩いています。
ページをめくると、ぷっ! だれかがへっこ(おなら)をたれました。
あひるやだるまも歩いてきて、だれかが、ぷっ!
リズミカルなくりかえしの言葉と、ユーモラスでいきいきとした表情の絵に、心もはずみます。
あかちゃんはまだ言葉で話さなくても、絵本を読んでくれる人の鼓動を感じながら、体全体で何かを語りかけてくれます。そんな心と体のふれあいの時間をつくる絵本。- 0・1歳~
- 2018年9月5日初版
- 定価1,045円 (本体950円+税10%)
- 立ち読み
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ねーずみ ねーずみ どーこ いきゃ?
ねーずみ、ねーずみ、どーこ、いきゃ? わがす(我が巣)へ、ちゅっちゅくちゅ……。
うさぎやこぐま、はなちゃんは……。ページをめくるたび、大好きな人にとびこむ喜びが広がります。
わらべうたにこめられた想いや、そこに感じる物語性を大切にした新シリーズの1冊。
あかちゃんは絵を見ながら、おかあさんやおとうさんの声を聞き、想像を広げます。
心地よいリズムで、ふれあいの時間をつくるファーストブックにぴったり。- 0・1歳~
- 2018年9月5日初版
- 定価1,045円 (本体950円+税10%)
- 立ち読み
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わらべうたでひろがるあかちゃん絵本
あかちゃんと、いっしょによんで、いっしょにあそぼう!
※『ねーずみ ねーずみ どーこ いきゃ?』『へっこ ぷっと たれた』『おせんべ やけたかな』を収録した、3冊セットです。出産のお祝いやプレゼントにぴったりの美麗ケース付き。- 0・1歳~
- 2018年9月5日初版
- 揃定価3,135円 (本体2,850円+税10%)
- 立ち読み