書評

名シリーズ絵本登場　母のひろば701号（2022年10月15日発行）

　文句なしにおもしろい。そしてあったかい。
　こまつと、はたの、コンビの成功といっていいだろう。作品は絵本テキスト大賞受賞作『まいごのモリーとわにのかばん』に続く､シリーズ第2作である。断言してもいいが、第3作、4作と、長く続いていくにちがいない。それほど、物語が、主人公が、脇役がしっかりしている。そして､はたが描く登場者たちも、くすくす笑わせてくれる。それは贅沢すぎるほど、あちこちに散りばめられている。子どもたちは､絵本をめくるごとに幸せにしてもらえるだろう。
　こまつの発想はやわらかい。前作ではわに革のかばんではなく、わにがかばんで名脇役だったが、今回は蝙蝠傘ではなく､こうもりの傘が名脇役だ。いや、わにのかばんは「そうは、いかんぜ」と、指定席を譲らず笑わせてくれる。いうまでもなく名脇役のいない映画はつまらない。わにのかばんは『モリー』にはもう欠かせない名脇役である。そうでなければファンが許さないだろう。作者冥利に尽きるというものだ。
　お話？　雨が降ってきたので、モリーがバス停までこうもりの傘をもち、お父さんを迎えに行きます。つまんないでしょ。絵本だもの。絵本、見てね。

内田麟太郎／絵詞作家