絵本・こどものひろば

丘のうえの いっぽんの木に

今森光彦 さく

丘の上に、いっぽんのエノキの木が立っていました。春、落ち葉の下で目を覚ましたオオムラサキの幼虫は、エノキの幹をのぼりはじめました。葉っぱを食べて大きくなって、やがてオオムラサキの成虫になるのです。
エノキには、ほかにもフクロウやタマムシ、カエルや小鳥など、四季を通して様々な生き物が集まってきます。
1本の木を舞台に、人と共に生きる豊かな自然環境「里山」で育まれる生き物たちの姿を“切り紙”で描きます。

  • 定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
  • 初版:2019年7月20日
  • 判型:B5判/サイズ:26.6×19.1cm
  • 頁数:36頁
  • 4・5歳~
  • ISBN:978-4-494-01567-2
  • NDC:480

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内容説明

丘の上に、いっぽんのエノキの木が立っていました。春、落ち葉の下で目を覚ましたオオムラサキの幼虫は、エノキの幹をのぼりはじめました。葉っぱを食べて大きくなって、やがてオオムラサキの成虫になるのです。
エノキには、ほかにもフクロウやタマムシ、カエルや小鳥など、四季を通して様々な生き物が集まってきます。
1本の木を舞台に、人と共に生きる豊かな自然環境「里山」で育まれる生き物たちの姿を“切り紙”で描きます。

読者の声

読者さま

素晴らしい絵本に出合えて嬉しくなりました(35歳)

葉っぱ一枚一枚の葉脈まで丁寧に表現されている植物や、昆虫へのまなざしが優しく、美しいです。素晴らしい絵本に出合えて嬉しくなりました。
読者さま

想像をかき立てられる絵本

白黒でカラーなしなのに、想像をかき立てられる絵本だと思います。

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書評

母のひろば663号 (2019年8 月15日発行)
里山の生きものを育むエノキ

 里山で一番好きな木はなんですかとたずねられたら、私はまよわずにエノキです、と答えるでしょう。私は写真家や切り絵作家の仕事と並行して、里山環境の復元をテーマに活動をつづけてきました。どこに何の木を植えるかなど、その環境づくりの計画を立てるとき、もっとも重要な樹木は、もちろんエノキです。
 小学生のころ、自宅から学校へ通う道にエノキやヤナギの並木があって、そこがチョウの楽園でした。ヤナギの葉を食べるコムラサキや、エノキの葉を食べるゴマダラチョウ、ヒオドシチョウ、テングチョウ。里山の代表ともいえるチョウたちが、毎年姿を見せてくれました。この絵本に登場するオオムラサキは、幼虫がエノキの葉を食べるチョウの中では最大級。あざやかな青むらさき色の翅はねと大人のてのひらほどもある大きさに魅せられます。
 しかし高度経済成長の波にのまれ、10年もしないうちに平野の農地にエノキはなくなり里山の代表的なチョウたちも姿をけしてしまいました。 エノキは、平安時代から一里塚のシンボルとして植えられてきた木で、御神木になっていることもあります。里山の生きものは、こうした人々のくらしの中にある伝統や文化によりそって生きてきたのです。
 この絵本のアイデアになったエノキは、今私が復元・整備している荒れはてた竹林の中からあらわれました。樹齢150年くらいと思われる大木が、見はらしのいい丘の上に顔を出したときには、おどろきました。奇跡的に生きのびたエノキは、これからどんな物語にいざなってくれるでしょう。そんな期待に胸を膨らませながら、絵本の展開を作っていきました。
 黒紙のみを使っての絵本は、今回がはじめてです。
 物語の核になるエノキは、花こそ地味ですが、新緑が美しく、秋には輝くばかりに黄葉します。また、主人公とも言えるオオムラサキのオスは、金属的な青紫色の翅をもっています。どちらも、色彩においてとても個性的な命なので、当然のことながらたくさんの色紙を切って張り合わせて作るべきだと考えていました。
 じつを言うと、色紙を使っていろいろと習作を作りかけてもいたのですが、待てよ、今回の物語は、黒紙一色で表現したほうが、繊細な生きものたちの関わりがより伝わるかも知れない。このひらめきで180度方向転換。黒紙は、想像力が膨らみ、ときには色彩にまさる効果が出る場合があるのです。すべて作り終えて、やっぱり黒紙でよかったと思っています。
 読者のみなさんには、ページをめくるごとに、丘にそよぐ風を感じてほしいと願っています。
 多様な生きものの命をはぐくむエノキの魅力が、少しでも多くの人に伝えられたらうれしいです。
今森光彦(いまもり みつひこ/写真家・切り絵作家)

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