2024.02.16

<ありがとう 和歌山静子さん>子どもたちの心に届けたい――紙芝居

和歌山静子さん (2022年インタビューにて)

先日、私たちのもとに和歌山静子さんがご逝去されたという悲しいニュースが届きました。
83年の生涯の中で、多くの絵本、紙芝居を手がけられました。
心よりご冥福をお祈りいたします。




小学校の入学式でもらった12色のクレヨンから、私の絵を描く人生は始まりました。来年80歳になりますが、まさか絵を描くことがここまで続くなんて、夢にも思っていませんでした。


「母のひろば」(2019年10月童心社発行)より


25作の書籍と、50作の紙芝居。
童心社から出版された和歌山さんの作品から、今回は紙芝居についてご紹介します。

和歌山さんは、紙芝居の制作についてこう書いています。




私は紙芝居の仕事が大変好きです。
私が好きという理由は、他の仕事とくらべた場合のことで、ひとことでいえば、語り手をとおしてなまに子どもたちにふれる絵をかけるからだと思います。本当にその紙芝居がおもしろければ大きな声で声援をおくったり、拍手をしてくれます。そんなふうに私の仕事が、複数の子どもたちに、同時に接するというところに、なんともいえない不安のようなものが常にありますが、その反面張り合いも感じます。


「母のひろば」(1975年1月童心社発行)より 一部抜粋



数ある紙芝居作品の中で、とっておきの1作として和歌山さんがあげたのは『こねこのしろちゃん』でした。

『こねこのしろちゃん』(脚本・堀尾青史 絵・和歌山静子)

おかあさんやほかのきょうだいたちはまっくろなのに、しろちゃんだけはまっしろ。
自分もまっくろになりたいとがんばるしろちゃんの前にあらわれたのは、まっしろでとてもりっぱなお父さん!




この作品だけは、すらすらとかけたという思い出しか残っていないのです。ああしよう、こうしようと工夫することも、絵で勝負しようと意気込むこともなかったように思います。苦労した記憶がないのです。
ただ猫が好きだという思いそのままに、しろねこちゃんを描くだけでした。
そうした素直さが、見る人の心に、すーっと入っていってくれたのではないか、そう思っています。


「母のひろば」(2019年10月童心社発行)より



こねこのしろちゃん』を観ると、自分が自分であることが誇らしく、うれしい気持ちになります。
1983年の刊行以来、今もなお愛されつづけています。

和歌山静子さんは、高橋五山賞を受賞した『みみをすませて』(2013年)や、『ころん こっつんこ』(2018年)をはじめ、民話紙芝居からあかちゃん紙芝居まで、じつに幅広い作品を生み出しました。

『みみをすませて』(脚本/絵・和歌山静子)

『ころん こっつんこ』(脚本・こがようこ 絵・和歌山静子)

また、紙芝居の創作だけにはとどまらず、海外、特に中国へ紙芝居を広める活動にも精力的に取り組みました。

みずから足を運んで演じたり、紙芝居についての講座を開催したり……。
中国の子どもたちも、日本の子どもたちと同じように紙芝居を心から楽しんでいることを実感し、文化交流が進むことを願っていました。

そんな和歌山静子さんが最後に描いた作品もまた、紙芝居でした。
こがようこさんが脚本を手がけた『おばけの ぷーちゃん』です。



ぷーちゃんが海の中でいろいろなおともだちに出会うすがたが、なんとも愛らしく描かれています。

和歌山静子さんの力強くあたたかなスミ色の線で描かれる、紙芝居の絵。
これからも子どもたちに愛されつづけることでしょう。
こねこのしろちゃん

おはなしがいっぱい

こねこのしろちゃん

堀尾青史 脚本/和歌山静子

おかあさんも、きょうだいたちもみんな毛の色がまっ黒なのに、ひとりだけまっ白なしろちゃん。自分だけ色がちがってよその子みたい。みんなみたいに黒くなりたいしろちゃんは、池のどろんこで泥だらけになりますが、お母さんにみつかって、洗ってもらい、やさしく抱かれてぐっすりお昼寝です。でも、やっぱり黒くなりたいしろちゃんは、ペンキやさんの黒いペンキをみつけて、近づいていきますが……。

しろちゃんの行動に、観客もハラハラドキドキ。最後には立派な白猫のおとうさんに出会って、自分がなぜ白いのかわかったしろちゃん。自分が自分であることが誇らしく、うれしいしろちゃんの気持ちが、紙芝居をみる子ども達にも伝わってきます。人気のロングセラー紙芝居。

  • 2歳~
  • 1983年4月1日初版
  • 定価2,090円 (本体1,900円+税10%)
  • 立ち読み
みみをすませて

和歌山静子シリーズ2013年度定期刊行紙しばい 年少向け おひさまこんにちは

みみをすませて

和歌山静子 脚本・絵

朝一番に聞こえてくる「コケコッコー」や「チュンチュンチュン」は誰かな? ニワトリやスズメのほかにもたくさん聞こえる。セミの声、雨の音にもいろいろあるね。耳をすませて、いろいろな声や音を聞いてみよう。

  • 2歳~
  • 2013年8月1日初版
  • 定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
  • 立ち読み
ころん こっつんこ

2018年度定期刊行紙しばい 年少向け おひさまこんにちは0・1・2歳からのかみしばい わらべうたで あそぼ!

ころん こっつんこ

こがようこ 脚本/和歌山静子

たまごさんやだるまさんが、歌いながら、おきたりころんだり。あ、だるまさんが、さかだちして、ころん! たまごさんとおきあがりこぼしちゃんにこっつんこ! 画面のぬきさしで、おきたりころんだりして見えます。

  • 2歳~
  • 2018年5月1日初版
  • 定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
  • 立ち読み
おばけの ぷーちゃん

2023年度定期刊行紙しばい 年少向け おひさまこんにちは

おばけの ぷーちゃん

こがようこ 脚本/和歌山静子

ぷーちゃんが、海のなかにいくと……あれ? 赤いにょろにょろ。
ぷーちゃんのうしろにだれかいるよ。「でておいでー!」っていったら、たこさんがでてきた! 
こんどは、ぴょこぴょこ。だれかなあ。
ぷーちゃんは海のなかでたくさんのともだちにあったよ。

♪ぷくぷく ぷっぷー ぷく ぷっぷー
 ともだち いっぱい うれしいな

ともだちと出会うよろこびいっぱいの紙しばい。

  • 2歳~
  • 2023年5月1日初版
  • 定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
  • 立ち読み