2022.03.25

<連載・今日はなんの日?>3月27日は「さくらの日」。花の季節にあじわう民話の世界

3月27日は、「さくらの日」です(※)。
「3×9(咲く)=27」の語呂合わせと、七十二候(時候をあらわす名前)の「桜始開(さくらはじめてひらく)」の時期が重なることが由来だそうです。

ご紹介するのは、表紙の満開の花が目にまぶしい『はなさかじい』です。


むかし あるところに、
びんぼうな じいさまと ばあさまが いた。
あるひ、じいさまは やまへ しばかりに、
ばあさまは かわへ せんたくに でかけた。
ばあさまが せんたくしていると、
おや、かわかみから
しろいこばこと、あかいこばこが、
つんぶく かんぶく ながれてきたって。

 おらのうちの たからなら こっちへこう
 むこうのうちの たからは あっちへいけ


ここで作者、松谷みよ子さんの言葉をご紹介します。
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「はなさかじい」は数多い日本昔話のなかでも、もっとも人びとの心に残っている話でしょう。
また広い地域で語られている話です。
子どものいないじいにさずけられた子犬を、とりあげ殺してしまうとなりのじい。
しかし、犬をうめたところに植えた木はみるみる育ち、臼をつくると大判小判があふれます。
となりのじいは怒って臼を燃やしてしまいます。よいじいがその灰をまくと、花がみごとに咲きほこる……。

生命を愛する人に、生命の花が咲く物語です。

松谷みよ子

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どれだけむごい目にあっても、優しさをうしなわないじいさまとばあさまの姿に胸うたれます。
シロへの思いがこめられた灰から生まれたたくさんの花は、それはそれは美しく、あたたかく、人々を笑顔にするのでした。

松谷みよ子さんによる言葉は、声に出して読みたくなる民話らしい響きが魅力です。
悪いじい、よいじいのコントラストや、ドラマチックな展開を鮮やかに描きだすのは、西村繁男さんです。

さくらの便りをききながら、味わってみてはいかがでしょうか。 

(松谷みよ子・文 西村繁男・絵)
はなさかじい

松谷みよ子むかしむかし 第二集松谷みよ子むかしむかし

はなさかじい

松谷みよ子 文/西村繁男

むかし、ばあさまが川でひろった小箱から白い犬が生まれて、シロと名付けられた。シロはずんずん大きくなって、ある日じいさまを背中に乗せて山へ出かけたところ…。

  • 3歳~
  • 2008年2月25日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)