2020.06.17

<いま、演じたい紙芝居>おおきな おおきな 父の愛『おとうさん』

もうすぐ「父の日」です。
今日ご紹介するのは、ロングセラー紙芝居『おとうさん』。スマトラの民話をもとにした作品です。
1968年の刊行以来、演じられつづけています。


一場面目、不思議な絵にくぎづけになっていると、脚本がこうはじまります。

ずうっと、ずうっと、みなみの しまにね、
マンガラン・グリーン・ベクーって いう、まものが すんで いました。

さあ、いって ごらんなさい。


呪文のような名前、「マンガラン・グリーン・ベクー」。そのひびきの楽しさに、子どもたちは声に出してみたくなります。

マンガラン・グリーン・ベクーはひとりぼっちでさびしく生きていました。
ある日、楽しそうに水浴びをするおとうさんとぼうやを見かけたマンガラン・グリーン・ベクーは、「おとうさん」になればさびしくない、そう思います。
そしておとうさんそっくりに化け、ぼうやの手をひいて連れていってしまったのです。

本物のおとうさんは大あわて。ようやくぼうやを見つけたものの、そこには自分にそっくりのマンガラン・グリーン・ベクーの姿がありました。

本物のおとうさんかどちらなのかを決めるため、王様が裁判をすることになりました。
その方法は、ぼうやを太鼓に入れ山のぼりをするという大変なもの。

最初に太鼓をかついで「えっさか えっさか」山のぼりをはじめたのはマンガラン・グリーン・ベクーでした......。


この作品で描かれるのは、なんといってもおとうさんの愛です。
太鼓をかついで、暑いなか山のぼりをするおとうさんの「ぼうやを にせものに とられて なるもんか。がんばれえ――」という言葉に象徴されるような、ぼうやへのおおきな愛情が、観客にまっすぐに届きます。

マンガラン・グリーン・ベクーはというと、悪者になりきれない、憎めない愛嬌あるキャラクターとして描かれています。
絵を手がけたのは、『おしいれのぼうけん』の田畑精一さんです。
『おしいれのぼうけん』とはおおきく異なる筆致、南国の情緒たっぷりの色使いもお楽しみください。

王様はどのようにして本物のおとうさんがわかったのでしょうか?
おとうさんの愛が証明するその結末を、演じ手と観客とでわかちあい、物語は「おしまい」となります。

皆さんもぜひ、今年の「父の日」に演じてみてはいかがでしょうか。

(与田凖一・脚本 田畑精一・絵)

おとうさん

紙芝居ベストセレクション 第1集

おとうさん

スマトラの民話 より/与田凖一 脚本/田畑精一

南の島にひとりぼっちで住んでいた、魔物のマンガラン・グリーン・ベクーは、川で水あびをして遊んでいたお父さんとぼうやをみて、二人がうらやましくなります。ふしぎな呪文をとなえてお父さんそっくりに化けたマンガラン・グリーン・ベクーは、自分が本当のお父さんだと、ぼうやを連れていこうとします。どちらが本物のお父さんか見分けがつかないので、島の王様に相談することになりました。王様はお父さん二人に、交代でぼうやをたいこに入れて山のぼりをするよう命じますが……。

  • 3歳~
  • 1968年6月1日初版
  • 定価2,090円 (本体1,900円+税10%)
  • 立ち読み
おしいれのぼうけん

絵本・ぼくたちこどもだ

おしいれのぼうけん

ふるたたるひたばたせいいち

お昼寝前に、ミニカーのとりっこでけんかをしたさとしとあきらは、先生に叱られておしいれに入れられてしまいます。そこで出会ったのは、地下の世界に住む恐ろしいねずみばあさんでした。
ふたりをやっつけようと、追いかけてくるねずみばあさん。でも、さとしとあきらは決してあきらめません。手をつないで走りつづけます―。80ページものボリュームがありながら、かけぬけるように展開するふたりの大冒険。1974年の刊行以来多くの子どもたちが夢中になり、版を重ねてきました。累計239万部を超えるロングセラー絵本。

  • 3歳~
  • 1974年11月1日初版
  • 定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
  • 立ち読み