2022.08.26

<ニュース>「五山賞」の贈呈式が行われました。

上段左から、荒木文子さん、伊藤秀男さん、アーサー・ビナードさん、堀田穣さん、下段左から、早乙女愛さん、片岡審査委員長、折原由美子さん

1年間に出版された紙芝居の中から優秀な紙芝居作品に贈られる「五山賞」。
7月31日に、その贈呈式が東京・目白にて行われました。


アーサー・ビナードさん

第58回五山賞特別賞を受賞したのは、「原爆の図」をもとにアーサー・ビナードさんが物語を紡ぎ2019年に刊行された『ちっちゃい こえ』です。

本作は、「大きな訴求力を持つ優れた作品と評価され、単に五山賞として顕彰するのではなく、もう一段別の立場から考え見ていくことが大事ではないか」という論評があり、「特別賞」となりました。

受賞の挨拶でアーサー・ビナードさんは、高橋五山について「紙芝居に限らず、日本の演劇における最高の脚本家であり、ぼくの中では日本文学の作家のうちトップ3に入る」と評し、『ちっちゃい こえ』の制作を続ける中で高橋五山の作品と出合えたことは、大きな収穫だと話しました。

第59回の五山賞を受賞したのは2020年刊行の『三月十日のやくそく』です。

1945年3月10日の東京大空襲。体験者である早乙女勝元さんが脚本を手がけた本作は、「シンプルな脚本であるが、空襲の恐さ、戦争のみじめさが伝わり、それらを見事に描き切った絵と相まって、戦争の悲惨さや悲しさもしっかりと表現され、脚本、画家の描写力のすごさが迫ってくる。五山賞に値すると全員一致で推薦された。」と評価されました。


早乙女愛さん

早乙女勝元さんは、今年の5月に逝去されました。長女の愛さんは、戦争を伝える活動を続けてきた早乙女勝元さんが、これからの子どもたちのために、と最後にたどり着いたのが紙芝居だった、と受賞の挨拶をしました。


伊藤秀男さん

絵を手がけた伊藤秀男さんも登壇し、作画にあたり、たくさんの資料を集められたという制作時のエピソードを披露しました。


このほか、第58回五山賞奨励賞は『どんと来い! 三途の川』(脚本/絵・折原由美子 監修・ときわひろみ 雲母書房)が、第4回堀尾賞(※1)は堀田穣さんが、第6回右手悟浄(ごじょう)・和子賞(※2)は荒木文子さんが受賞しました。


荒木文子さん

紙芝居のすぐれた演者に贈られる「右手賞」を受賞した荒木文子さん。
賞名にもなっている右手和子さんの指導を経て、全国各地で実演を行ってきました。
人気の参加型紙芝居『まんまるまんま たんたかたん』の脚本を手がけるなど、紙芝居作家としても活躍しています。

贈呈式では、アーサー・ビナードさんの講演や、受賞作の実演も行われました。

紙芝居への熱い思い、平和への願いを分かちあうひとときとなりました。


※1 堀尾賞…紙芝居作家・宮沢賢治研究者・第3代子どもの文化研究所長として子ども文化の広い領域で活動された堀尾青史氏の業績と生誕100年を記念して2015年に設けられた。「堀尾賞」は、紙芝居にかかわる学術的研究、調査、学術的出版、評論活動など、広く紙芝居文化の振興に貢献した個人・団体を対象に隔年に贈られる。

※2 右手悟浄・和子賞…戦前、戦後紙芝居の名演者として大活躍された右手悟浄氏と、紙芝居一筋80余年の生涯を送られた名実演家、右手和子氏の親子二代の業績を記念して2015年に新しく設けられた、演者として、また普及活動に優れた業績を上げる個人・団体を対象に贈られる。
ちっちゃい こえ

単品紙芝居

ちっちゃい こえ

アーサー・ビナード 脚本/丸木俊・丸木位里 絵/「原爆の図」より

ネコが語ります。家族のこと。命をつくりつづける、体の中のちっちゃい声のこと。ヒロシマのこと…。わたしたちはどうすれば生きていけるのか? 美しい絵から響いてくるそのこたえに、一人ひとり耳をすます紙芝居。
『ちっちゃい こえ』プロモーション動画はこちら

『ちっちゃい こえ』紹介リリース

  • 小学3・4年~
  • 2019年5月20日初版
  • 定価2,970円 (本体2,700円+税10%)
  • 立ち読み
三月十日のやくそく

2020年度定期刊行紙しばい ともだちだいすき

三月十日のやくそく

早乙女勝元 脚本/伊藤秀男

毎日、あちこちで空襲がある。学校も兵隊になる訓練ばかりだ。でも、ぼくのところにまで空襲はまだこないと思っていた。けれど、その日はやってきた。1945年3月10日の真夜中、空は爆撃機にうめつくされ、町は炎につつまれた……。熱風にあおられながら逃げまどうさなか、ぼくは友達のガンちゃんにであう。「また あおう、やくそくだぞ。」と、再会を誓ったけれど……。著者、早乙女勝元さんの実体験をもとにした紙芝居。

  • 4・5歳~
  • 2021年3月1日初版
  • 定価2,090円 (本体1,900円+税10%)
  • 立ち読み
まんまるまんま たんたかたん

子ども参加かみしばい みんないっしょに、うれしいな!

まんまるまんま たんたかたん

荒木文子 脚本/久住卓也

ちびっ子忍者のまん丸は、まだまだ修行中。となり村のじいちゃんに、手紙を届けにでかけます。ピンチのときは、分身の術だ! 「まんまるまんま、たんたかたん」と唱えておいらをふやすよ。楽しい参加型紙しばい。

  • 3歳~
  • 2007年8月15日初版
  • 定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
  • 立ち読み