2021.03.25

シリーズ20周年!「ももんちゃん あそぼう」とよたかずひこさん インタビュー

2021年2月 アトリエの屋上にて。

2021年、「ももんちゃん あそぼう」シリーズは20周年を迎えます。
この3月に23作め(※)となる新刊『ももんちゃん どこへいくのかな?』が刊行となった、作者のとよたかずひこさんに、あらためてシリーズや新刊にこめた思いをうかがいました。




――ももんちゃんがうまれて、今年で20年ですね。


人間でいえば、ももんちゃんは成人式をむかえるということです。絵本の中のももんちゃんはあいかわらずオムツをしたあかちゃんですが、作者である私だけが20年老いた、ということですね(笑)。

――シリーズ最初の2冊『どんどこ ももんちゃん』『ももんちゃん どすこーい』が出版されたとき、とよたさんは絵本作家として歩みはじめてから20年くらい、50歳を超えていましたが、なぜあかちゃん絵本をつくろうと思ったのですか?


初めてあかちゃん絵本にたずさわったのは、松谷みよ子さんの『りんごころころ』(童心社)でした。そのお仕事のあと松谷さんにお会いしたときに、「あかちゃん絵本って難しいのよね」とおっしゃっていたんです。あの『いないいないばあ』を作った松谷さんでさえ「難しい」とおっしゃるあかちゃん絵本、それならオイラも挑戦してみよう! と思ったんです。それがきっかけですね。

――ももんちゃんは、あかちゃん絵本としてはとっても大胆なストーリーで、そこが人気の理由でもありますね。


ぼくが作るなら、「あかちゃんがそんなことやるわけない!」というくらい、主人公を自由に遊ばせたいと思ったんです。自立したあかちゃん、といえばいいでしょうか。また、あかちゃん絵本は真の読者であるあかちゃんは読めないわけで、読んであげる大人の存在がとても大きい。当然ですよね。読み手が楽しめれば、あかちゃんにとっては少々難しい事象でも伝わるのではないか、そんな願望をこめて作っています。

――「ももんちゃんは男の子ですか? 女の子ですか?」という質問がよく届くのですが……。


最初は「桃太郎」をイメージしていたので、ぼくとしては男の子のつもりだったんです。でも、おはなし会などで読者のみなさんに聞いてみると、ももんちゃんを女の子だと思っている方もたくさんいることがわかりました。みなさん、わが子と重ね合わせてももんちゃんを愛してくださっているんですね。ですからそこにあまりこだわらなくてもいい。だから今は、「性別不明、年齢不詳」とお話しするようにしています。あれだけいろんなことができてしまう「スーパーあかちゃん」ですから、人間かどうかもあやしいくらいなんですけどね(笑)。



さぼてんさん、きんぎょさん、おばけさん。ももんちゃんのなかよしのおともだち。(『ももんちゃん ぽっぽー』より)

――さぼてんさんなど、あかちゃんにとって身近でないものがともだちとして出てくるのはめずらしいと思うのですが、このキャラクターたちはどのようにうまれたのですか?


ももんちゃん どすこーい』をつくるときに、砂漠にいるさぼてんの姿が頭に浮かんだんです。そうすると、「少し水気もほしいな」と考えていたらきんぎょが出てきて、「あいている空にも何か出したいけれど、鳥ではつまらないな」と考えていたら、自然とおばけが出てきたんです。「見たことがないのにさぼてんはちくちくするって、あかちゃんがちゃんとわかっていてふしぎ」と、あるお母さんに言われたことがあります。あかちゃんの想像力ってすごいと思いますし、何がわかるとか、決めつけなくていいんじゃないかな、と思っているんです。

――読者の方からは「ももんちゃんがわが子にそっくり!」というのと同じくらい、「くりかえし読んでも楽しい」という感想をよくいただきます。1作1作、どんなふうに作りあげていくのでしょうか。


ぼくは絵と言葉がいっしょに出てきます。何度も何度も口に出して読みながら練っていきます。編集者に試作を見せるときも、必ずぼくが声に出して読みます。画面の中で言葉をどう配置するかは、「こんなふうに読んでほしい」という気持ちをこめて考えています。言葉と言葉の「間(ま)」や文と文の「間(ま)」など、読む方に伝わるように心がけています。

――とよたさんは絵本や紙芝居のイベントも多いですね。たくさんの子どもたちや、子どもたちの近くにいる大人のみなさんと直接ふれあう時間は、とよたさんにとってどんな時間ですか?


読者の方とふれあえる機会は、小さな人たちの反応を直接知ることができる、ぼくにとってとても大切なものなんです。思ったような反応が返ってこなくても、その経験はこれから作る作品に必ずいかされます。




――最新作の『ももんちゃん どこへいくのかな?』は、どんなふうにうまれたのでしょうか。


ぼくは新しいお話を考えるとき、まず表紙を描いてみるんです。タイトルも決めて、きちんと色もぬって。今回もそうです。ももんちゃんがどろんこじどうしゃに乗っている絵と「ももんちゃん どこいくの?」というタイトルを思いついたので、まずは表紙をしっかり描いてみました。アトリエの壁に貼っておいて、それをときおり見ながらイメージをふくらませて、思いついたストーリーやページ割りを手帳やノートに書きとめていきます。タイトルを最終的には「ももんちゃん どこへいくのかな?」と変更しました。



本づくりの最初に描くという表紙


ノートに書きとめられた『ももんちゃん どこへいくのかな?』のストーリーのアイディア。ヘリコプターやてるてるぼうずも描かれています。

――表紙のももんちゃんが動き出すのを待つ、という感じなんですね。さて、今回のももんちゃんはどこへ行くのでしょうか。


どろんこじどうしゃを運転して、ヘリコプターを操縦して……きんぎょさん、さぼてんさん、おばけさんといういつものおともだちをつれて、ももんちゃんが向かったのは、雲の上です。実はももんちゃんは、そこで自分のおともだちとおともだちを会わせてあげたかったんです。この出会いで、もっと大きなおともだちの輪ができます。ももんちゃんは、これまでたくさんのおともだちと出会ってきました。読者のみなさんもおともだちです。ぜひ、これからも一緒に遊んでください。
どろんこじどうしゃやヘリコプターはこれまでの作品にも登場しています。これまでシリーズを読んでくださった方は、どの作品に出ていたか、さがしてみてくださいね。

――これからも、ももんちゃんの大活躍を楽しみにしています! 今日はありがとうございました。




読者の皆様へのメッセージを色紙に描いてくださいました。



※「ももんちゃん あそぼう」シリーズ22作、「ももんちゃんのポップアップえほん」シリーズ1作
ももんちゃん どこへいくのかな?

ももんちゃん あそぼう

ももんちゃん どこへいくのかな?

とよたかずひこ さく・え

ともだちを乗せて、どろんこじどうしゃやヘリコプターを運転するスーパーあかちゃん・ももんちゃん。どこへいくのかな? どろんとやってきたおばけさんもつれて、向かった先では……とってもすてきな出会いが! 「ももんちゃん あそぼう」シリーズ20周年にふさわしく、おなじみのともだちがたくさん出てきます。ともだちと、ともだちが出会って、輪が広がっていく喜び、いっしょに思いきり遊ぶうれしさいっぱいの1作。

  • 0・1歳~
  • 2021年3月1日初版
  • 定価990円 (本体900円+税10%)
  • 立ち読み
どんどこ ももんちゃん

ももんちゃん あそぼうはじめましてのももんちゃん 3冊セット

どんどこ ももんちゃん

とよたかずひこ さく・え

どんどこ どんどこ どんどこ どんどこ。
橋をわたり、坂道をのぼり……ももんちゃんが、いそいでどこかへ向かっています。
山の上でくまさんにとうせんぼされても、どーんとたおし、どんどこ進んでいくももんちゃん。
ところがたいへん、ころんで頭をぶつけちゃった!
それでもたちあがり、涙をこらえてかけていくももんちゃんを待っていたのは……。

日本絵本賞を受賞した、「ももんちゃん あそぼう」シリーズの第1作。「どんどこ どんどこ……」と、声に出して気持ちのいいリズミカルな言葉と、力強く大胆な展開で、あっという間に最後のシーンまでひきこまれます。
「うちの子にそっくり!」「どんどこ前に進んでいくももんちゃんの姿に元気をもらっています」など、刊行以来、読者のみなさまから多くの反響があるロングセラー絵本です。

  • 0・1歳~
  • 2001年9月10日初版
  • 定価990円 (本体900円+税10%)
  • 立ち読み
ももんちゃん どすこーい

ももんちゃん あそぼう

ももんちゃん どすこーい

とよたかずひこ さく・え

ももんちゃんが、ひとりでおすもうをとっています。

どすこーい どしーん
どすこーい どしーん

大きくゆれたら、さぼてんさんが地面からぬけて、きんぎょさんが金魚鉢からとびだした!?

すた すた すた すた……
ちゃぽ ちゃぽ ちゃぽ ちゃぽ……

さぼてんさんと、きんぎょさんが向かったのは、どこでしょう?

『どんどこ ももんちゃん』と同時刊行された、大人気「ももんちゃん あそぼう」シリーズの第2作。シリーズでおなじみの、さぼてんさんときんぎょさんが初登場します。あかちゃんをおひざにのせて、「どすこーい どしーん」と、一緒にゆれながら読むのも楽しい絵本です。

  • 0・1歳~
  • 2001年9月10日初版
  • 定価990円 (本体900円+税10%)
  • 立ち読み