単行本図書

空から見える、あの子の心

シェリー・ピアソル 作/久保陽子 訳/平澤朋子

エイプリルは、まわりの子たちが恋やおしゃれに目ざめていく様子についていけない。同級生と距離をとりたくて、休み時間に年下の子のお世話をするボランティアをはじめた。気にかかるのは、校庭をひとりでうろうろと歩き回ったり、寝そべったりする男の子、ジョーイ。いったい何をしているのだろう?
ある日、エイプリルはジョーイが足で校庭に巨大な絵をかいていることに気がつく。渦巻き、タイガー、ピザ、雪の結晶……ジョーイのかく絵は壮大なアートだ! そんなジョーイを、そっと見守るエイプリルだが、ひょんなことから絵のことが学校中にしれわたり、ジョーイにとんでもない依頼がまいこむ……。
自閉的な性格で、自分の言葉で気持を伝えることが苦手なジョーイ。そんなジョーイを理解しようと向き合う少女エイプリル。ふたりの出会いが、学校をまきこんだおおごとに発展していく!

  • 全国学校図書館協議会選定/福井県優良図書推奨(2022年)
  • 定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
  • 初版:2021年12月22日
  • 判型:四六判/サイズ:19.4×13.4cm
  • 頁数:344頁
  • 小学5・6年~
  • ISBN:978-4-494-02076-8
  • NDC:933

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内容説明

エイプリルは、まわりの子たちが恋やおしゃれに目ざめていく様子についていけない。同級生と距離をとりたくて、休み時間に年下の子のお世話をするボランティアをはじめた。気にかかるのは、校庭をひとりでうろうろと歩き回ったり、寝そべったりする男の子、ジョーイ。いったい何をしているのだろう?
ある日、エイプリルはジョーイが足で校庭に巨大な絵をかいていることに気がつく。渦巻き、タイガー、ピザ、雪の結晶……ジョーイのかく絵は壮大なアートだ! そんなジョーイを、そっと見守るエイプリルだが、ひょんなことから絵のことが学校中にしれわたり、ジョーイにとんでもない依頼がまいこむ……。
自閉的な性格で、自分の言葉で気持を伝えることが苦手なジョーイ。そんなジョーイを理解しようと向き合う少女エイプリル。ふたりの出会いが、学校をまきこんだおおごとに発展していく!

読者の声

読者さま

よりそえるおとなでありたいと思わされた本でした。(70歳・女性)

他人とちがう行動をとるだけで、変わった子の評価がされ、無視かイジメかにつながる。おおらかな視点で子どもを別の角度から見ると、気づきになる。その気づきが世界をひろげる。おとなも時々子どもも、常識にとらわれすぎて、大切なことを見失う危険がある。おおらかな視点で、より深く広く、なぜ、どうして、と疑問を持ちながら、よりそえるおとなでありたいと思わされた本でした。
読者さま

他人を受入れる、認めるということを学んでもらえたら(47歳・女性)

小学校の学校図書館の蔵書にしました。小さな学校なので、クラスに特性のある子がいても仲良くしているのですが、中学になると3つの小学校がまとまるので、色々な個性に出会います。
その前に読書を通して他人を受入れる、認めるということを学んでもらえたらと思い、購入しました。自ら学ぶ気持ち、生きる力を読書で育んでほしいなー!!

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書評

相手と真剣に向き合うことから生まれるもの 母のひろば692号(2022年1月15日発行)
 わたしは知的障がいと身体障がいをあわせ持つ12歳の娘を、母子家庭で育てています。娘が生まれるまで、障がいのある方が身近にいたことのなかったわたしにとって、この12年は未知の世界を手さぐりで進むような日々でした。一緒にどこかへ出かけても、わたしと娘が見ている景色はちがいます。近所の公園に散歩に行くという、わたしにとっては気軽な気分転換であることも、娘にとっては足元の砂利や小さな段差につまずいて転ばないか、ひやひやしながら歩かなければいけない、くたびれる行程であったりします。娘は今、どう感じているのか。何が見えているのか。それを推測しつづける日々ですが、親子として12年も密接に接していても、わからないことばかりです。
 12月に刊行された『空から見える、あの子の心』は、自閉スペクトラム症とディスレクシア(読み書きが困難な症状)をあわせ持つと思われる小学4年生の男の子ジョーイに、6年生の女の子エイプリルが気づき、積極的に関わっていくことから紡ぎ出されていく物語です。エイプリルは6年生の同級生たちになじめず、孤立感を覚えています。そこで、同級生とできるだけ同じ空間で過ごさずにすむよう、校庭で遊ぶ4年生の見守りをする「友だちベンチ」係に立候補します。
「友だちベンチ(BuddyBench)」は実際にアメリカなどの小学校に設置されています。校庭で遊び相手が見つからない子や、いじめられて困っている子などがそのベンチにやってくると、それを見たほかの子が遊びにさそったり、話をきいてくれたりするというシステムです。エイプリルはこのベンチで4年生の見守りをする中で、ジョーイが校庭の地面に足で巨大な絵をかいていることに気づきます。
 ジョーイのじゃまをしないよう、そっと見守りつづけていたエイプリルですが、やがてジョーイのしていることが学校中のうわさになり、その芸術の才能を見込んで大きな依頼が舞い込んできます。マスコミも注目し、どんどん脚光を浴びていきますが、そうした急激な環境の変化にジョーイが混乱していないか、エイプリルは気をもみます。そして、みんなに才能を知られることが、はたしてジョーイにとって良いことだったのかどうかと悩みます。様々に思いをめぐらすエイプリルの一生懸命な姿に、胸を打たれます。
 親子や友だちという身近な存在でも、やはり他人です。相手がどう感じ、何を考えているのかを完全に知ることができないのは、健常者同士でも同じです。しかし相手を思いやり、しっかりと向き合おうとすること自体に価値があるというメッセージが伝わってきます。この本を手にとった子どもたちが、今、身近にいるだれか、これから出会うたくさんの人と、前向きに交流していけるきっかけとなればと願っています。
久保陽子/翻訳家

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