だいすき絵童話

はるかちゃんが、手をあげた

はるかちゃんが、手をあげた

立ち読み

服部 千春 作/さとう あや

二年二組のほとんどの人は、まだ、はるかの声をきいたことがありません。家ではちゃんとしゃべれるのに、はるかは学校で話すのがこわくて、すごくはずかしくてできないのです。ある日となりの席のあきらくんが…。

  • 定価1,100円 (本体1,000円+税)
  • 初版:2019年11月15日
  • 判型:A5変型判/サイズ:20.1×15.1cm
  • 頁数:63頁
  • 小学1・2年~
  • ISBN:978-4-494-02058-4
  • NDC:913

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書評

友だちへの思いが自分を強くする 母のひろば667号(2019年12月15日発行)
 気が弱くて、人前で自由に話せなかった経験は、誰にでもありそうです。しっかり発言したいし行動も起こしたいのに、自分のからだが思うように動いてくれないもどかしさは、それほど珍しいことではないかも知れません。とくに、幼少期においての経験は、ときにトラウマになって長く引きずることもあるそうですが、大事なことをしたいときに、もじもじしたあげくに、見過ごすことしかできなかった経験は、大人になってからも苦さが伴う記憶になります。 もうちょっと勇気があったならと、悔やむのも、特別なことではありません。
 それほどに、ある意味「普通」の出来事を作品の背景にした『はるかちゃんが、手をあげた』は、とても「普通」でありながら、それでいて実は「特別」な作品だと感じています。
 はるかちゃんは病気で小学校の入学式に出られず、登校したのは1週間後でした。出遅れてしまったのです。これは、デリケートな精神の持ち主にとっては大きな問題です。クラスの皆が当たり前にしていることが、自分にとっては何もかも初めてなのですから。相当なストレスだったに違いありません。
 言葉を発したくても、のどがつまって言葉がでてこないのです。しゃべらないはるかちゃんを、先生もクラスの友だちも優しく受け止めます。特に、はるかちゃんにさりげなく寄り添う先生に好感を抱きました。
 しゃべらないことが普通になったはるかちゃんの横に、席替えで、元気いっぱいのあきらくんがきます。邪心のないあきらくんの積極性に助けられるはるかちゃんですが、あるとき、そのあきらくんが風邪で欠席します。給食に出たデザートは、あきらくんの好きなヨーグルトゼリーでした。先生が欲しい人は? と尋ねます。はるかちゃんはそのゼリーをあきらくんに届けたくてなりませんでした。あきらくんにと強く願っているうちに、はるかちゃんの手が自然にあがります。そして、はっきりと「あきらくんにもっていってあげたい」と言っていました。
 人は自分のためよりも、人のために何かをしたとき達成感(幸せ)を感じるように思います。友だちのことを一生懸命に思ったときに、勇気が湧いたはるかちゃんは、どんなにほっとしたことでしょう。
 誰にも経験のある普通の生活の中に、人生の真実がこれほどまでに分かり易く楽しく描かれていることに驚きます。幼年童話の底力を感じさせられる作品でした。
 幼い読者に手渡したい1冊です。
中川なをみ/児童文学作家

2019/11/27

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