新刊紹介
<新刊>子どもたちの笑顔ががっこうかっぱの願い 『がっこうかっぱの生まれた日』
このたび、『がっこうかっぱのイケノオイ』、『がっこうかっぱのおひっこし』につづく最新作『がっこうかっぱの生まれた日』が刊行されました。
がっこうかっぱは、小学校の池にすむかっぱです。
『がっこうかっぱの生まれた日』は、がっこうかっぱが、まだがっこうかっぱではなかったころのおはなしです。
かっぱは、100歳をすぎて一人前になり、やぶの中にある小さな池にやってきました。そこで出会った女の子が、「ちよ」でした。
ちよは、「そかい」してきたのだといいます。「そかい」って? 「せんそう」って? かっぱにとっては知らないことばかり。ちよはかっぱに「コケマル」という名前をつけてくれました。
ちよは、かっぱに「がっこう」のことも教えてくれました。国語では漢字を勉強すること、運動したり、歌をうたったりすること。でも今は、勉強できない日もあること……。
冬になると、ちよが池にやってこなくなりました。
春、久しぶりにあらわれたちよは、家族はみんな燃えてしまった、とコケマルに告げたのです。
コケマルは、涙も流せずにいるちよをぎゅうっとだきしめます。そして、怒るのです。
なんでだ。なんでだ。なんでだ。
なんで、ちよは、こんなにがまんしなくちゃいけない。子どもは、
あまえていいんだ。あまったれでわがままで、すぐないて、すぐわらって、たくさん食べて、たくさんねて、大きくなる。それが子どもだ。なのに。
年月は流れ、「コケマル」はがっこうかっぱになりました。
それからずっと、子どもたちの笑い声があふれる学校を、池からずっと見守っています。
小さな子どもたちに「戦争」についてどんなふうに伝えればいいのか。
このことに難しさを感じる方は多いのではないでしょうか。
本作のあとがきで、作者の山本悦子さんは読者である子どもたちに向けてこう書いています。
「せんそうとは、かんたんにいえば国と国のケンカです。ケンカというとかわいらしく聞こえますが、じっさいには人をきずつけたり、命をうばったりするおそろしいものです。」
子どもたちの笑い声がきこえるはずの学校までも壊されてしまうのが、「戦争」なのです。
「二度とせんそうはしないとちかった日本ですが、ぜったいにおこらないとはいい切れません。なにかのはずみで、せんそうはおこってしまうかもしれないのです。
そうならないように、「せんそうはぜったいにしない」と、みんながむねにきざみつけていくことが大切だと思います。」
「せんそう」とは何だろう。これからどうすればいいのだろう。
コケマルとちよの物語をとおして、子どもが自分のこととして考えはじめる――そんなきっかけの1冊になることを願っています。
95ページ、小学校低学年から。
(山本悦子・作 市居みか・絵)
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がっこうかっぱの生まれた日
かっぱは人間よりもずっと長生きだ。池にも何百年もすむことになる。おれは、あちこちさがしていちばん気に入ったこの池をすみかに決めた。近くに村があるから、よく子どもたちがのぞきにくる。
ある日、おれは池に落ちた女の子を助けた。女の子の名前は、ちよ。家族とはなれてひとり、この村に疎開してきたという。いまこの国では戦争をしていて、大きな町には爆弾が落とされているらしい。ちよは学校のことをいっぱい話してくれた。ちよは、いっしょに学校にいこうと言ってくれた。学校にも池があるらしい。ところが、雪が舞う季節になって、ちよはぷっつり姿を見せなくなって……。- 小学1・2年~
- 2023年2月1日初版
- 定価1,320円 (本体1,200円+税10%)
- 立ち読み
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先生、しゅくだいわすれました
しゅくだいをわすれたゆうすけ。しどろもどろに口からでまかせのウソでいいわけをしていると、えりこ先生が「だめだなあ、ウソをつくならもっと上手につかなくちゃ」「え?」「すぐばれるようなのはだめよ。それから、聞いた相手が楽しくなるようなのじゃなくちゃ」「楽しくなる?」「そう。聞いた人がウソとわかっても、はははってわらっちゃうようなのじゃなきゃ」「じゃあ、上手にウソがつけたら、しゅくだいやってなくてもしかられないってこと?」「そうねえ。だって、だまされちゃったらしかたないし」といって、えりこ先生はにやっとわらった。…次の日から子どもたちはしゅくだいができなかったわけを考えてきて発表することに…。
- 小学3・4年~
- 2014年10月25日初版
- 定価1,210円 (本体1,100円+税10%)
- 立ち読み
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二年二組のたからばこ
たからくんのおとしものを見つけたら入れておく箱が「たから箱」。たからくんは物を大切にしないからおとしても平気な顔してるって、友だちは思ってる。たからくんが日直になった日、生活科室のかぎがなくなって…。
いつもおとしものをしてしまうたからくんをクラスメイトの女の子”みな”の視点から描いた本作。なぜそんなにおとしものをするのか不思議に感じたり、何度も貸してと言われて煩わしく思ったり……みなが、たからくんの思いを知り、受けとめ、本当の仲間になるまで、子どもの素直で揺れやすい心模様が丁寧に描かれています。小学校の教員として長く勤めてこられた著者山本悦子さんの、いろいろな子がいるけれど、みんながありのまま過ごせる、それが「普通」であってほしい、という願いがこめられた物語。
佐藤真紀子さんによる絵もふんだんに入って、子どもたちの表情、教室の空気が伝わってきます。- 小学1・2年~
- 2018年11月15日初版
- 定価1,100円 (本体1,000円+税10%)
- 立ち読み
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がっこうかっぱのイケノオイ
ぼくは、あさのかいのとき、クラスのみんなの前でしゃべる「スピーチ」がきらい。うまくしゃべれないし、どきどきしてあさごはんをもどしそうになる。みかちゃんもだまったまま、なみだをうかべている。
きょうはアンドレくんのばんだ。アンドレくんは、日本語がじょうずじゃない。「カッパ、ミタ」といってカエルをみせて、みんなに笑われた。でも、帰りに学校の池でぼくと、アンドレくん、みかちゃんはカッパをつかまえる。カッパの飼い方なんてわからないから弱らせてしまう。あめ玉で一命をとりとめるカッパ。その瞬間、ぼくたちは池の中にしょうたいされ、心を通わせて、お互いの気持ちを知る。
カッパは学校でいちばん好きな音は笑い声だという。だからこの池にいるんだ、と。その後、三人は学校でよくわらうようにった。- 小学1・2年~
- 2010年12月20日初版
- 定価1,320円 (本体1,200円+税10%)
- 立ち読み
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がっこうかっぱのおひっこし
友だちってどうやってつくるんだろう。考えるとドキドキしてきて、けいくんは、まだ友だちがつくれていない。学校の池の工事が始まる日、けいくんは池で小さなかっぱと出会い、家に連れて帰ることに…。
- 小学1・2年~
- 2019年12月17日初版
- 定価1,320円 (本体1,200円+税10%)
- 立ち読み