新刊紹介
<連載 3/3>『てんじつきさわるえほん いないいないばあ』できました!

「点字つきさわる絵本」には、製本行程でも難しさがあるといいます。
通常の絵本と同じように製本すると、圧力によって点字がつぶれたり、点字の向かい側のページをへこませたりしてしまうのです。そのためこれまでは「リング綴じ製本」や「蛇腹式製本」が採用されてきましたが、コスト高やページ数・サイズに制限があることなど、大きな制約がありました。
そんな中、絵本と同じように紙を貼り合わせて、綴じ、本としてまとめる「合紙製本」を可能にしたのが、大村製本さんです。
今回、工場に足を運び、齋藤和明社長、福原繁工場長にお話をうかがいました。
★★これまでも「点字つきさわる絵本」の製本は手がけてこられたのでしょうか。
齋藤さん:点字つきさわる絵本の製本は、『ぐりとぐら』『ぞうくんのさんぽ』(福音館書店)『じゃあじゃあびりびり』(偕成社)に続いて4冊目です。
はじめは試行錯誤の連続でした。合紙絵本はページごとにきっちり貼り合わせることが基本なので、そもそも表面に凹凸があってはいけないのです。また貼り合わせる際には、何十冊も積んで、プレス機で圧力をかけていきます。ですが、「点字つきさわる絵本」では、それをすると点字の部分が向かい合うページにうつってしまう。矛盾した作りなんです(笑)。
★★では、どのように製本していくのでしょうか。
福原さん:まずページ全面に糊を付けずに、四隅のみに糊を付けて、接着しています。また、プレスする際の圧力は、通常の本の時の10分の1以下に抑えています。読む人にとって、点字や触図以外の凹凸は「雑音」になってしまいますので、それを防ぐことを最優先に考えています。ライン作業で大部数を一気に作るのではなく、1冊1冊手作業で行っています。
★★「点字つきさわる絵本」がどんなふうに読まれているか、ご覧になる機会はありましたか?
齋藤さん:できあがった「点字つきさわる絵本」を、目の見えない方が手にとってくれてとても喜んでいらっしゃる姿を見たことがあるんです。その光景は忘れられませんね。大変な作業の連続ですが、あれだけ喜んでくださる人がいるんだと実感し、本当に報われました。その姿を思い出しながら、今も製本作業に臨んでいます。
印刷、製本それぞれのプロセスで、作品世界を「さわる」ことでも十分に伝えたい、という皆さんの思いが込められていることがよくわかりました。
お話をうかがった田中産業さん、大村製本さんの皆様、ありがとうございました。
「点字つきさわる絵本」と聞くと、見えない人だけのものと考えがちですが、決してそうではありません。「さわって楽しむ絵本」という新しいジャンルの絵本なのです。
見えない子と見える子が、1冊の絵本を一緒に楽しむことができる豊かな可能性を秘めた本作、ぜひ手にとっていただければと思います。
(松谷みよ子・ぶん 瀬川康男・え)
https://www.doshinsha.co.jp/search/info.php?isbn=9784494001248
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てんじつきさわるえほん いないいないばあ
1967年の刊行以来、多くの子どもたちの誕生を祝ってきた『いないいないばあ』。日本で一番読まれている絵本が、もっと多くの方に楽しんでもらえるように、「点字つきさわる絵本」になりました。
見て楽しむことのできる絵と文字の上に、透明樹脂インクで、触って楽しむことのできる絵(触図)と文字(点字)を、盛り上げ印刷しています。見える人と見えない人が、いっしょに楽しめる絵本です。
★見える人も、見えない人も一緒に!
・目の不自由なこどもたちに
点字を読める子は、点字の文を読みながら、絵を触って楽しんでください。まだ点字を読めない子には、大人が読んであげながら絵を触らせてください。
・目の不自由なお母さん、お父さんに
お子さんに絵を見せながら、点字の本文を読んであげてください。
・見える子どもや大人たちに
絵を触って見えない人の感じ方を体験してみてください。バリアフリーの社会を考えるきっかけにもなります。- 0・1歳~
- 2021年1月20日初版
- 定価3,960円 (本体3,600円+税10%)
- 立ち読み
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いないいないばあ
日本の絵本ではじめて! 累計700万部を突破
1967年の刊行から、半世紀あまり。
2020年には日本の絵本で初めて700万部を突破し、現在757万部を超えるロングセラー絵本となっています。(※1)。
世代を超えて読みつがれる、「人生で初めて出会う一冊」です。
※1…株式会社トーハン発行「ミリオンぶっく 2025」調べ
あかちゃんに語りかける言葉
あかちゃんと目があう絵
「いないいないばあ にゃあにゃが ほらほら いないいない……」
『いないいないばあ』の文章は、作者の松谷みよ子さんが子育ての中でわが子に語りかけていた言葉がもとになっています。
画家の瀬川康男さんは、あかちゃんと向き合い試作を重ねました。
「ばあ」の場面の動物たちは、あかちゃんと目があうように描かれています。
あかちゃんと一緒に読むと、言葉と絵がひとつになり、臨場感をもっておひざの上のあかちゃんに伝わります。- 0・1歳~
- 1967年4月15日初版
- 定価770円 (本体700円+税10%)
- 立ち読み