2019.07.01

<新刊 連載1/2>絵本こくん

今日ご紹介するのは、6月に刊行された新しい絵本『こくん』です。

作者の村中李衣さんは、長年、小児病棟、老人保健施設などさまざまな場で、子どもから大人まで多くの人たちと絵本の読みあいの活動を続けてきました。
本作は、村中さんがある幼稚園で目のあたりにした光景をもとに創作したものです。


主人公は歩行器を使っている少女、ちさと。
ちさとはときどき「こくん」と、大きくうなずきます。
それは自分でやりたい、やるんだ、の「こくん」なのです。

ちさとにはしゅんくんというやんちゃな友だちがいます。
ある日、しゅんくんのある挑戦を目にしたちさとは、どーんとたっているすべり台を見あげます。そして大きく「こくん」しました。
ずっとあこがれていたすべり台をのぼると決めて、歩行器から手をはなし――。


しゅんくんの一歩がちさとの心を動かし、背中を押し、ちさとの一歩がうまれました。
ふたりの心が響きあう瞬間がドラマチックに描かれます。

ちさとが「こくん」するときの強い気持ちを秘めた顔、しゅんくんの真剣な横顔、そしてふたりのとびきりの笑顔。
石川えりこさんが、子どものありのままの気持ちをみずみずしく描き出します。
次回は、本作にこめられた作者の思いに迫ります。

(村中李衣・作 石川えりこ・絵)

こくん

童心社のおはなしえほん

こくん

村中李衣 作/石川えりこ

退院して大好きなつばさ園にくると、しゅんくんがかけてきた。歩行器をみて「てつだってやる」というしゅんくんに、わたしは「いらない」と強い声で言った。わたしは体を思うように動かすのが難しい。でも、歩行器があればみんなと歩ける。ある日、挑戦するしゅんくんの姿を見て、わたしもすべり台にのぼりたいと思った。わたしは、こくんって、うなずく。だいじょうぶ。きっとできる……。
新しい一歩をふみだしたふたりの物語。

  • 4・5歳~
  • 2019年6月20日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み