インタビュー
インタビュー『いすちゃんです。』とよたかずひこさん

子どもの身近にある「もの」を主人公に、なにげない毎日にある楽しいできごとを描いた絵本「たのしい いちにち」シリーズ。第4作めとなる新作『いすちゃんです。』の刊行を記念し、作者のとよたかずひこさんにお話をうかがいました。
――新刊『いすちゃんです。』がいよいよ刊行となりますが、「たのしい いちにち」シリーズが生まれたきっかけを改めて教えてください。
紙しばいを作ったあと、身近な「もの」を主人公にした絵本をつくろうという話になりました。子どもたちは「もの」にこだわりを持っていて、例えばタオルやボールなどにも、「自分のもの」という意識がありますよね。「たのしい いちにち」というシリーズタイトルを決めてスタートしました。子どもたちと同じように「もの」にも1日があって、そして、子どもたちと「もの」とのいい関係を描ければ……とアイディアを膨らませていきました。『まくらちゃんです。』は絵本の「めくり」も考えながら制作していったので、紙しばいとは違った絵本ならではの世界観、流れになったと思っています。
――「もの」の1日が楽しく描かれているのが、『まくらちゃんです。』と同時刊行された『リュックちゃんです。』ですね。
これは、リュックそのものというより、リュックを背負った子どもたちの関係性からスタートしました。裏表紙に登場する4人の子どもは、きょうだいではなく、近所の年齢が異なる友だち同士です。その中で一番年下の子もみんなの役に立った、というお話にしたいと考え、『リュックちゃんです。』のストーリーができました。リュックたちに、子どもたちの姿を投影しているのです。
――読んでいる子どもたちは、リュックちゃんを「自分のリュック」に重ねたり、また「自分自身」に重ねたりして味わうのでしょうね。
新作は、いすが主人公です。いすを選んだ理由について教えてください。
「もの」を描くということは、それを使う人間の暮らしを描くということです。まくらやリュックなどは擬人化して手足をつけ動き回らせてますが、暮らしの中にあるいすには始めから脚(あし)がついている。それゆえ歩き出してはいけない(笑)。いつも動かずそこにいて、誰かが来てくれるのを待っている、本来の姿のいす。この作品ではネコやスイカ、洗濯ものがやってきます。私たち人間にしてみると、いすは“ とりあえず置く ”という場所でもある。重たいスイカを買ってきて、とりあえずどっこいしょ、洗濯ものを取り込んでとりあえず……、と。いすにしてみれば、本意ではないかもしれないけれど(笑)。いすは本当は誰かに座ってもらいたいと思っていて、そして、やっとご主人の男の子が来てくれた、ということなのです。いすは、快適な居場所です。幼子にとっても同じ、小さいながらに「自分のいす」にこだわりがあって、大事にしています。一方、いすは自分では動けないけれど、いつもかわらずそこにいると主張しているのです。
――裏表紙を見ると、男の子といすがとてもいい関係であることが伝わってきて、見ている子どもたちもきっと嬉しくなると思います。
そんなふうに読んでもらえたらと思います。このシリーズでは、「たのしい いちにち」というタイトルの通り、なにげない1日の中にある楽しさを伝えたいと思っています。子どもとの毎日は慌ただしいとは思いますが、お父さんお母さんにはかけがえのない時間を大切に、この絵本もくり返し楽しんでもらえると嬉しいです。
――ありがとうございました。
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リュックちゃんです。
とよたかずひこ さく・え
おともだちといっしょに出かけたリュックちゃんは、コップにシャベルに……いろいろなものを持ってきました。
でも、おべんとうがありません。どうする、どうする?
いちばん小さなリュックちゃんも、最後には大活躍!
身近なものたちが動きだし、家族やともだちに囲まれて暮らす楽しさいっぱいの新シリーズ。
朝起きて夜寝るまで、ものたちはどんな一日を過ごしているのでしょう。新しい一日を迎えるのが楽しみになるシリーズです。- 0・1歳~
- 2015年10月20日初版
- 定価880円 (本体800円+税10%)
- 立ち読み
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かみしばい とよたかずひこ わいわいシリーズ / 2015年度定期刊行紙しばい 年少向け おひさまこんにちは
しきぶとんとうさんと かけぶとんかあさんと まくらちゃんのいちにち
とよたかずひこ 脚本・絵
かぞくみんなで朝のたいそう。〝いっち にっ いっち にっ〟。それから、おひさまのもとに行って、〝ぽかぽかぼかぼか ぬくぬくぬくぬく…〟。さて、ふっくらした三人は、いったいどこにもどるのでしょう?
- 2歳~
- 2015年11月1日初版
- 定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
- 立ち読み