書評

すてきな五文字が親子の合い言葉に！ 　母のひろば714号（2023年11月15日発行）

　読みきかせでも大活躍の「あかちゃん ととととと」シリーズ。これまでも何度か〇～二歳児さんたちに読んだことがあります。中でも一作目の『ぼうしかぶって』は、お散歩でぼうしをかぶることの多い（嫌がる子も多い……）保育園生活でとくに身近で、先生方にも大人気。二歳児にもなると、なすのとうさんのかばんを見て「会社に行くんだね」とすぐに気づき、隣の子にささやいていたり、ミニトマトのあかちゃんがなすのぼうしをかぶろうとしている絵には「違う～！」とクスクス笑い出す子も。そんなふうに細かなところまでしっかりと描かれているのが、このシリーズの人気の理由かもしれません。
　テーマも「おふろ」「あいさつ」「かさ」など、子どもたちの生活に密着したキーワードばかり。
寒い季節に「うちの子、最近なかなかお風呂に入りたがらなくて」という困ったようすのママさんに『おふろにはいろ』をおすすめしたことがあります。後日、「なんと！　絵本のそらまめさんのまねをして、『ぱぱぱぱぱ』と言いながらごきげんで脱いでお風呂に入るようになったんです～」との報告があり、二人でバンザイしたことも。大人だって自分の好きな音楽などで気分を上げることがありますが、絵本から引用したユーモアと愛情ある言葉を大好きな人が自分に向けてくれると、子どもの小さな心にちゃんと届き、がんばる力になると実感しました。
　そして六作目となる最新作は、『ごろん ごろごろ』。表紙の絵、タイトルの語感から絵本への期待が一気に高まります！
　お気に入りのぬいぐるみを手に、いい夢を見られそうないちごのあかちゃん。ソファーで横になって、なんとも嬉しそうなバナナのとうさん。キャベツのかあさんは、少しお疲れのごようすで「ふわ～」とあくびをしながらの登場。おしまいのみかんの家族の場面には、みんなでギュッと集まり、こたつでごろんとする心地良さと、楽しいオチが待っています。この、体中にじわ～っと染み渡る温かさは、この絵本のシリーズが持つ幸せそのものです。
　野菜や果物そのもののようすも表しつつ、子どもたちを瞬時に惹きつけ、イメージを広げ、安心をもたらしてくれる「ととととと」のような“五文字の連続言葉”も健在です。絵本を手にするそばから、きっと声に出してみたくなることでしょう。
　「ふふふふふ」！「ままままま」！　普段の親子の会話の中に、こんなふうに絵本からの共通の言葉を持つことができたなら、子どもと一緒の時間が今より、もっともっと楽しいものになると思います。わが子と自分を一瞬で結びつける心通い合う言葉は、きっとこんな絵本から生まれるんですね。読む人みんなを笑顔にする三浦太郎さんの絵本。また、新しい作品を手渡していけることがとても楽しみです。

いわた あき／目白のえほんや にこにこ書店店主