シリーズの特徴

1.日本の絵本作家がよびかける

 アジアに対する侵略という苦い過去を見つめ、平和の大切さを絵本で世界の子どもたちに伝えようと、日本の絵本作家4名田島征三、田畑精一、浜田桂子、和歌山静子の各氏が中国の絵本作家たちによびかけたのは、2005年6月のことでした。そして、翌年韓国にもよびかけたのです。よびかけは、次のような内容でした。
 「私達の国日本は、古くから中国大陸や朝鮮半島の発達した文化を受け入れ学び、自国の文化を育んできました。しかし近代、日本は中国、韓国を始めアジアの国々に対し、武力と侵略と植民地支配により多くの犠牲と苦痛を強いました。戦後も、国としての謝罪や補償はあいまいなまま年月が流れました。(中略)子供たちにとって最も大切なこと。それは同時代を生きる他の国の人たちと仲良くし豊かな信頼関係を築くことです。そして戦争のない平和な世界を作ることです。もし、中国、韓国、日本の絵本作家が連帯し、心を一つにして1冊の絵本を作ることが出来たら、意義は大変大きいのではないでしょうか。絵本は子どもの心に直接働きかけられる媒体ですから。」

2.初めての試み、三か国共同出版(それぞれの国で、それぞれの言語で、12冊の絵本を刊行しあう)

 日本作家のよびかけに熱い気持ちで応えてくれた中国、韓国の絵本作家との交流が続きました。そして2007年11月、各国の出版社も決まり、中国の南京で会議がもたれたのです。翌年、ソウル・ブックフェアでは、出版社同士の合意も確認され、ここに絵本史上例のない、日・中・韓三か国による共同出版の試みがスタートしました。
 絵本作家たちや編集者たちが、言葉や文化の違いを越えて、それぞれの企画を発表し合い、厳しい意見交換をしながら絵本化を進めるという、これまでにない試みです。

3.三か国それぞれを代表する絵本作家12名が協力する

 東アジアの三か国の作家や出版社が協力し合い、平和をテーマにしたオリジナル絵本を作ることはかつてない意義ある取り組みです。と同時に、作品を通じて子どもたちに国を超えた相互理解と、交流をしあうことの大切さを感じ取ってもらい、平和の尊さを理解してもらうことを目的にしたこのプロジェクトは、きわめて重要な意味を持っていると確信しています。
 この企画で特筆すべきは、参加する絵本作家たちがそれぞれの国の絵本を代表する作家ぞろいであるということです。『おしいれのぼうけん』の田畑精一、『とべ、バッタ!』の田島征三、『ひまわり』の和歌山静子、『あやちゃんのうまれたひ』の浜田桂子という日本の四人はもちろん、『桃源郷ものがたり』の蔡皋、『ヤンヤンいちばへいく』の周翔、さらに岑龍、姚紅といった中国の作家たち、そして、『ソリちゃんのチュソク』のイ・オクベ、『こいぬのうんち』のチョン・スンガク、『マンヒのいえ』のクォン・ユンドク、キム・ファンヨンという韓国の絵本作家たちは、それぞれの国の現在の絵本を代表する作家たちです。このように、各国の第一線の絵本作家たちが、この企画の成功を目指して手を取り合い、全力を傾けて絵本の完成を目指して来たのです。
 いま、東アジアから世界に向けて、平和に対する確かなアピールを発信する絵本が生まれつつあります。

日・中・韓 平和絵本