「日・中・韓 平和絵本」刊行によせて

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一大壮挙の成功を!
国際子ども図書館を考える全国連絡会会長 笠原良郎

 敗戦から65年という歳月が流れ、戦争を知らない戦後生まれが、総人口の75.5%を占める時代になった。日本がアメリカと交戦したという過去を知らない大学生も増えているという。
 そして、このところ、尖閣沖の漁船衝突事件、北朝鮮による韓国西方沖延坪島砲撃事件と、きな臭い事件が相次いでいる。メディアがそれを熱狂的に伝え、日本の核武装まで声高に主張する人さえ出てきている。偏狭なナショナリズムは戦争への第一歩につながるという教訓を、今こそ私たちは再確認するべきであろう。

 こういう情況の中で、日・中・韓三国の絵本作家が連帯し、「戦争のない世界を願って」「平和絵本」を刊行するという。2005年に日本の絵本作家が呼びかけ、以後6年有余真剣な話し合いを積み上げ、いよいよ刊行が実現することになったと聞く。これは、まさに時宜にかなった一大壮挙である。単に参加する絵本作家が、それぞれ独自に作品を描き、それをシリーズ化するというのではなく、一作一作を三国の参加作家や編集者たちが討議し、その結果をふまえて作品化するというのがすごい。絵本出版の歴史の中で、おそらく、これは初めての試みではないか。

 国際子ども図書館の「翻訳データベース」によると、日本の子どもの本の「国・地域別翻訳出版件数ランキング」の第1位は韓国(2177件)、第2位台湾(1206件)、第3位中国(537件)となっている。日本からの「輸出超過」の傾向ではあるが、子どもの本の世界で、三国間の国際交流は、徐々に進んでいることが分かる。今回の大企画が成功し、三国の作家たちの切実な平和への願いが各国の多くの子どもたちに伝わることを強く希求する。子どもの本にかかわる大人たちは、このシリーズを着実に子どもたちに手渡すことに力を尽くすべきである。

三カ国の絵本作家に拍手を
この本だいすきの会代表 小松崎 進

 日本・中国・韓国の絵本作家が協力して、「平和絵本」を出版するという話を聞いたのはいつだったか、それはすばらしい、でも本当に出来るんだろうかと、ずっと思っていた。
 それが実現した。完成した作品を見せてもらった。平和を願いながら多くの傑作絵本を出されている三国の12人の絵本作家による「平和絵本」。これは、すごいことだ。
 かつて敵同士であった三国の作家の絵本の実現に拍手をおくり、子どもたちとその親、教師に強くすすめていきたいと思っている。

平和のために手を結び、語り合おう
親子読書地域文庫全国連絡会 代表 広瀬 恒子

 このたび、日本、中国、韓国の絵本作家と出版社が手をむすび、平和へのねがいをこめた絵本の三か国共同出版が実現しました。
 これは、これまでの児童書出版界になかった快挙であるとともに、東アジアの絵本交流文化活動としても意義ある取りくみであったと拍手を送ります。
 日本は過去の戦争で、中国、韓国に対して苦痛を与えたにがい歴史があります。
 世界では今も紛争や内戦により命を失っている子どもたちもいます。
 地球上に平和を築く取りくみとして、どんなことができるのかを考えるとき、三か国共同出版による絵本は、私たち、子どもと本を結ぶ読書活動をしているものには、力づよい助っ人です。
 今回の3冊の絵本は、日本、中国、韓国それぞれが立脚する「平和」のメッセージを伝えてくれています。
 絵本は国境を越えて、人びとに話しかけ疎通する力をもっています。
 子どもとともに、おとなも読み、語り合い話し合いたいと思います。
 その輪を広げることが、平和をより確かにする力にもつながっていくのではないかー
そうねがっていますから。

日・中・韓 平和絵本