ぼくのこえがきこえますか

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ぼくのこえがきこえますか

国や民族の違いを越えて

 1962年、私家版「しばてん」(1971年偕成社から出版)を出してから、今年でちょうど50年。この絵本を描き上げたとき、ぼくは50年間、この絵本をつくるためにここまで歩いてきたんだと気づいた。
 戦争や権力の横暴に、ひどいめにあい、傷つき、ころされるのは、いつも弱い立場の人々だ。戦争の悲惨さを国や民族の違いを越えて、大人や子どもの区別なく、うったえられるのではないかと考えた。
 絵本というメディアでなければできない絵本ができたと思っている。

田島 征三

田島征三
1940年大阪府生まれ。高知県で幼少期を過ごす。1969年から東京都日の出村(現町)で創作を続ける。1998年伊豆へ移住。2009年新潟県十日町市に「絵本と木の実の美術館」開館。絵本に『ちからたろう』(ポプラ社・世界絵本原画展金のりんご賞)『ふきまんぷく』(講談社出版文化賞)『とべバッタ』(以上偕成社・小学館絵画賞・年鑑イラストレーション作家賞)『はたけのカーニバル』(童心社)など多数。


推薦のことば 絵が語る、文が問いかける。あなたは今日。平和を考えたか?と 落合恵子

……「くにのために たたかえ」と みんなに はげまされて、ぼくはせんそうに いった。かあさんだけが ないていた……。
 平易で、選び抜かれた深いことばのひとつひとつが、頁(ページ)からくっきりと立ち上がる。
 そして、「ぼくの からだは とびちった」。けれど、「ぼくの こころが なにかを み、なにかを きき、なにかを かんじはじめている」。
 だから、遠い故郷でかあさんが泣いているのがわかる。弟が「にいさんの かたきを うってやる」と怒っているのもわかる。弟よ、ここに来てはいけない。かあさんをひとり残して。それでも兄を戦争に奪われた弟は……。
 悲しみ、喪失、行き場のない憤り、憎しみ、そして……。戦争が引き出す、ひとのあらゆる「感情」と「感覚」を、田島征三さんは、この一冊の、ひとつひとつの「絵」に込め、描き尽くすことに成功した。「ゆきばもなく どろどろと うずまく いかり」を敵も味方もなく、「たましいに なって のぼってくる」奪われたいのちを。癒えることのない悲しみを。
 この地上から、あらゆる戦争が、いのちを脅(おびや)かすすべてのモノやコトがなくなることを祈るだけではなく、わたしたちの絶え間ない意志の力でなくしていくのだ、と。

(おちあい けいこ/作家 子どもの本の専門店クレヨンハウス主宰)

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