日・中・韓平和絵本

父さんたちが生きた日々

父さんたちが生きた日々

立ち読み

岑龍 作/中由美子

中国海南島生まれの父さんは勉強が大好きで苦学して大学に進み、さらに日本の大学に留学する。そこで知り合った日本人の学友・山本さんとは兄弟のように親しくなり、学問にはげむ。そこへ日中戦争が勃発し、父さんは留学前に母親と写した写真を山本さんに贈って中国に帰る。山本さんは戦死という悲しい知らせ。戦後、山本さんのお母さんから父さん母子と山本さん母子の写った二枚の写真が送られてきて、友情の思い出がよみがえる。

  • 定価2,750円 (本体2,500円+税10%)
  • 初版:2016年3月20日
  • 判型:B5判/サイズ:19.1×26.6cm
  • 頁数:40頁
  • 小学5・6年~
  • ISBN:978-4-494-01970-0
  • NDC:923

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書評

子どもの本棚 2016年10月号 No.576
日本児童文学2016年5・6月号  ブックラック 2016年6月1日
国境を越えた友情をひきさくもの(母のひろば622号) 2016年3月15日
 日・中・韓平和絵本としてこれまで『京劇がきえた日』『火城 燃える町─1938』が中国側から発刊されていますがこの作品はそれに続く第3作目になります。
 物語は、今は亡き父さんが生きた時代を娘の「わたし」が語りかけます。
 中国の少数民族出身の父さんは、子どもの頃から勉強が大好きで、大学で人類学を学び日本の大学院へ留学します。そこで同じ学究の徒、山本さんと出会いふたりは友情を深め兄弟のような親密な結びつきを持つようになりました。しかし、中国で日本軍の進攻による戦争がはじまり、父さんは祖国に帰り、抗日活動に参加します。日本の山本さんは東南アジアで戦死、「戦争が終わったら桜の咲く頃、会おう」というふたりの約束は、果たされませんでした。
 この絵本はセピア色を基調とした写実的な表現によって1930年代の日本の生活を背景に父さんの暮らしぶりをリアルに伝えています。
 巻末の父さん、山本さんが、それぞれ自分の母さんとふたりで写した2枚の写真の絵をじいっと見ていると、国はちがっても母と子の情愛の深さや、それぞれの困難をかかえ生きた母親たちの人生にも思いをめぐらされます。
 戦争は人間の命をうばう残酷さと共に、人と人との絆や人間が理想を持つことまで許さない無情なものであることが切なく胸に伝わる作品でした。こうした時代を再び決して招かぬように、子どもだけではなく、大人たちもこの絵本を仲立ちにして、話し合ってみたいものです。
広瀬 恒子/親子読書地域文庫全国連絡会代表