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Garden 8月9日の父をさがして
ぼくは二つの名前を持っていた。一つは正真正銘の本名。もう一つは父の従姉妹のおばさんが家に来たときだけ呼ばれる名前だ。子どもの頃、おばさんが来るという日には、ぼくはもう一つの名前で過ごした。家族全員、緊張の連続だった。おばさんは父に、もし三人目の子どもが授かったときは自分に命名させてほしいと頼んでいた。そうして父はおばさんに命名をまかせておきながら、土壇場になってその名前をつけなかった。しかもそのことをとうとうおばさんに打ち明けなかったのだ。なぜ、そこまでして隠しておかなければならなかったのだろう。その名前をつけたくなかった理由があったのだろうか。
1945年8月9日、12歳の父は爆心地から800メートルにあった中学校へ、午前中だけの試験を受けに行って、掃除当番をさぼって浦上駅から列車に飛び乗り、山一つ越えた疎開先に近い地点で被爆したが助かったと聞いていた。しかし、まじめだった父が当番をさぼるだろうか。もしかしたら、誰かが当番を代わってくれたのではないだろうか。もしもその人が原爆で亡くなっていたとしたら。もしそうだったら、その人と同じ名前は自分の子どもにつけられない……。
父の被爆者健康手帳にある「入市」の文字。父は爆心地から4.8kmの地点で直接被爆をした。それだけではなく被爆直後に、破壊し尽くされ、放射線がまき散らされた長崎市内に入って被曝したのだ。どうして? どうやって? 手帳には、父がつらい過去と不安な未来の両方にずっと向き合ってきた、必死に生きてきた証があった。ぼくは何をわかっていたというのか。父の何を……。今からでも父にぼくは会えるだろうか。- 中学生~
- 2025年6月発売予定
- 定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
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生きる 劉連仁の物語
1944年9月日本軍により中国から連れ去られた劉連仁。苛酷な炭坑労働から逃亡し北海道の山中で一人、13年間生き抜いた魂の記録。
- 中学生~
- 2015年7月5日初版
- 定価2,750円 (本体2,500円+税10%)
- 立ち読み