単行本図書

オオカミは海をめざす

2025年7月発売予定

予約受付中

三田村信行 作/北沢夕芸

イリヤ。ぼくたちは、彼のことをそう呼んでいた。 けれどそれは、彼の名前ではなかった。彼にはもともと名前はなかった。人が間に合わせに〃イリヤ〃という名前を彼に与えたにすぎない。もっとも、ぼくたちにとっては、そんなことはどうでもよかった。イリヤはイリヤで、それ以外の何者でもなかった。その名前に、ぼくたちは今でも親しみと懐かしさを感じている。その名前に、憧れを感じる者もいる。もちろんぼくも、みんなと同じように、イリヤに親しみと懐かしさと憧れも感じている。ただひとつだけ、みんなが感じていないものを、ぼくはイリヤに感じていた。

それは、恐怖──。しかし不思議なことに、イリヤに感じていた恐怖こそが、ぼくがイリヤにもっとも引きつけられたところのものなのだ。
イリヤは、ある日突然ぼくたちの前に現れ、強い印象をぼくたちに与えて消えた。イリヤとぼくたちとの関わりを要約してみれば、ただそれだけのことにすぎなかったが、その内実は、謎と秘密と不思議な冒険に満ちていた。

三田村信行の創作は、幼年から高学年まで多岐にわたり、作品数も膨大ですが、一貫して書き続けてきたモチーフが“オオカミ”です。1988年『オオカミのゆめ ぼくのゆめ』を嚆矢とするならば、その集大成とも言える作品が『オオカミは海をめざす』です。
児童文学というジャンルすら忘れさせる、一級のミステリー&エンターテインメント作品。

  • 定価2,090円 (本体1,900円+税10%)
  • 初版:2025年7月15日
  • 判型:A5判/サイズ:21.5×15.3cm
  • 頁数:368頁
  • 小学5・6年~
  • ISBN:978-4-494-02092-8
  • NDC:913

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内容説明

イリヤ。ぼくたちは、彼のことをそう呼んでいた。 けれどそれは、彼の名前ではなかった。彼にはもともと名前はなかった。人が間に合わせに〃イリヤ〃という名前を彼に与えたにすぎない。もっとも、ぼくたちにとっては、そんなことはどうでもよかった。イリヤはイリヤで、それ以外の何者でもなかった。その名前に、ぼくたちは今でも親しみと懐かしさを感じている。その名前に、憧れを感じる者もいる。もちろんぼくも、みんなと同じように、イリヤに親しみと懐かしさと憧れも感じている。ただひとつだけ、みんなが感じていないものを、ぼくはイリヤに感じていた。

それは、恐怖──。しかし不思議なことに、イリヤに感じていた恐怖こそが、ぼくがイリヤにもっとも引きつけられたところのものなのだ。
イリヤは、ある日突然ぼくたちの前に現れ、強い印象をぼくたちに与えて消えた。イリヤとぼくたちとの関わりを要約してみれば、ただそれだけのことにすぎなかったが、その内実は、謎と秘密と不思議な冒険に満ちていた。

三田村信行の創作は、幼年から高学年まで多岐にわたり、作品数も膨大ですが、一貫して書き続けてきたモチーフが“オオカミ”です。1988年『オオカミのゆめ ぼくのゆめ』を嚆矢とするならば、その集大成とも言える作品が『オオカミは海をめざす』です。
児童文学というジャンルすら忘れさせる、一級のミステリー&エンターテインメント作品。