2023.10.29

<連載⑩>いのちを育てるということ『14ひきのかぼちゃ』

ことしで刊行40周年となった「14ひきのシリーズ」より1作ずつご紹介する、記念連載企画。
10回目となる今回は、『14ひきのかぼちゃ』です。


おじいさんがもちかえったのは、かぼちゃのたね。
「いのちのつぶ」をまいて、育てることにしました。


みんなで見守る中、芽をだしたかぼちゃ。
雨の日も、嵐がうなる日も、子どもたちは一生懸命おせわをします。

さっちゃんが「かぼちゃん」と名付けたかぼちゃが、ついにどてっと大きく実りました。
14ひきみんなで、うれしい収穫です。


『14ひきのかぼちゃ』が刊行されたのは1997年。
1998年に開館する「いわむらかずお絵本の丘美術館」の準備が進む中、絵本は制作されました。

栃木県那珂川町にある「いわむらかずお絵本の丘美術館」は、「子どもたちにはもっと自然の中でさまざまな体験をしてほしい」といういわむらかずおさんの思いからうまれました。
美術館の敷地内には田んぼや農場があり、田植えや収穫体験などの活動がおこなわれてきました。

本作に登場するかぼちゃも、絵本の丘の農場で育てられていた野菜のひとつ。
「人のくらす里の自然は農業が支えている。だからこそ農作物に関心があった」といわむらさんは言います。

季節をこえ、育っていくかぼちゃ。
「かぼちゃは月の光を感じたり、コオロギの声をきいたりして育っていく。まわりの生きものとともに生きているということ。」
そんな思いをこめ、いわむらさんは絵を描いていきました。

「いのちのつぶ」が大きく実るまでの様子、そしてそれを見守る子どもたちの愛情があたたかく伝わる1冊です。


(いわむらかずお・さく)
14ひきのかぼちゃ

14ひきのシリーズ

14ひきのかぼちゃ

いわむらかずお さく

「これは かぼちゃの たね、
 いのちの つぶだよ、と おじいさん。
 みんなで たねまきしよう、と おとうさん。」

みんなで草を抜いて、土をたがやしたら、種まきです。

「ゆっくり おやすみ たねさん、よっちゃんがいうと、 しっかり めをだしてね、と なっちゃん。」

「本当に生きているのかな」と、子どもたちが見守る中、ある日ようやく芽をだしたかぼちゃ。枯れ草をしいたり、虫をおいはらったりしている間に、かぼちゃは葉っぱをのばして、ぐんぐんと大きくなっていきます。かぼちゃに黄色い花がさいて、やがてちいさな実ができました。かぼちゃのあかちゃんに、さっちゃんは「かぼちゃん」と名前をつけます。

風のうなる嵐の日も、子どもたちは嵐からかぼちゃんを守ります。季節がすぎ、大きく立派に実ったかぼちゃを、さあ、みんなで収穫です。

かぼちゃコロッケ、かぼちゃまんじゅう、かぼちゃの煮付け、かぼちゃスープに、かぼちゃパイ。おいしそうなごちそう、みんなでいただきます。

かぼちゃを題材に、命のつながりを描いた人気ロングセラーシリーズの第10作。子どもたちに身近な食べ物かぼちゃがどのように種から成長し、花を咲かせ、実となるのか、美しく丁寧に描かれています。
種から実となり、また種となるかぼちゃの命のつながりとともに、自然の恵みの中で、おじいさんから孫たちへと手渡されていく、くらしや命のつながりがあたたかく描かれています。

  • 3歳~
  • 1997年4月25日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み