2023.05.26

<ニュース>第54回「講談社絵本賞」贈呈式が行われました。

5月23日に、赤坂プリンスクラシックハウスにて第54回「講談社絵本賞」贈呈式が行われました。
講談社絵本賞は、絵本において新分野を開拓し質的向上に寄与した優秀な作品に対して贈られる賞です。


第54回の受賞作は、田島征彦さんの『なきむしせいとく 沖縄戦にまきまれた少年の物語』
40年以上にわたり沖縄で取材を重ねた田島さんが、その集大成として少年の視点から沖縄戦を描いた作品です。

贈呈式では、選考委員である絵本作家の長谷川義史さんが、選評を話しました。
「1年間に刊行される新刊絵本から1冊を選ぶことはとても難しいけれど、ぼくは圧倒的に『なきむしせいとく』がふさわしいと思いました。
実際には沖縄戦を経験されていない田島さんが、何十年もかけて現地の方と心を通じあわせ、子どもたち、大人たちにむけて、強い信念をもってつくったすばらしい作品」と本作を評しました。


田島征彦さん

つづいての受賞者挨拶で田島さんは、「こんなにつらい絵本制作ははじめてだった」と語りました。
戦時中、大阪の堺で少年時代を過ごした田島さんが、もし沖縄にいたらどうなっていただろうか、と、せいとく少年になって沖縄戦を「体験」していく困難な作業の中で、時には大声で叫びながら絵を描いていったといいます。

挨拶の最後、田島さんは「『なきむしせいとく』は決して過去の絵本ではない。」と、沖縄を取り巻く現状について、子どもたちの未来について、強い危機感を語りました。

その後の祝賀会では、選考委員の方々からのスピーチや、全国訪問おはなし隊の方によるよみきかせも行われました。

田島征彦さんが『なきむしせいとく』にこめた「平和を願う心」を分かちあうひとときとなりました。
なきむしせいとく

童心社の絵本

なきむしせいとく

たじまゆきひこ

《沖縄に40年以上通い続けてきた著者が描く「沖縄戦」》

ここは1945年の沖縄。ぼくの名前は「せいとく」です。
いつも泣いているので、みんなから「なちぶー」とよばれています。
父に続き、兄も兵隊となり、ぼくは母と妹の3人で、南へ逃げることになりました。

絵本作家・田島征彦は、40年以上取材を重ね、これまでにも「沖縄の絵本」を描いてきました。
(『とんとんみーときじむなー』[1987年]『てっぽうをもったキジムナー』[1996年]『やんばるの少年』[2019年、いずれも童心社・刊])

本作では、長年の取材の集大成として、真っ正面から「沖縄戦」を描きます。

  • 小学3・4年~
  • 2022年4月30日初版
  • 定価1,760円 (本体1,600円+税10%)
  • 立ち読み