2022.08.04

<子どもたちと向き合う ―戦争と平和―①>
刊行から10年、ヒロシマから今を見つめる『さがしています』

ヒロシマで「ピカドン」を体験したものたちが語る絵本『さがしています』
今年、刊行から10年という節目を迎えました。

創作のきっかけについて、刊行当時、作者のアーサー・ビナードさんはこう語っています。


「広島に行くと、いつも(広島平和記念)資料館を訪ねて、弁当箱やビー玉、帽子など、生活の中で人々が使っていたものに眼を凝らしていました。すると、その向こうにあった生活が見えて、持ち主の声が聞こえる、あるいはそのものの声が聞こえてくるようなときがありました。声に耳をすまして、ものたちがかかえている物語を掘り下げれば、絵本になりうるかもしれない――そこが出発点でした。」(※)


ものたちと見つめあって、ひたすら聞く……そういうことをくりかえして、少しずつ、言葉を見つけていったと言います。


絵本は、床屋さんの壁にかかっていた時計の語りからはじまります。


おはよう おはよう
おはようございます
あなたにとって 「いま」は なん時?
わたしにとって 「いま」は いつでも
あさの 8時15分。
(中略)
あの光は わたしの 顔の 「1」にも
「2」にも 「3」にも 「8」や
「9」の 数字にも ささってきました。
わたしの 「いま」は とまったのです。

「おはよう」の
あとの 「こんにちは」を
わたしは さがしています。


軍手、弁当箱、ワンピース――今も存在するものたちが、大切な持ち主のことを語ります。
人々の日常を奪う原爆の恐ろしさと、一人ひとりの命の重さが、静かに、強く迫ってきます。

ピカドンを体験したものたちの物語は、今を生きる私たちにつながっているのです。


(アーサー・ビナード/作 岡倉禎志/写真)
表紙写真:「鍵束」寄贈者・中村明夫
見開き写真:「時計」寄贈者・濵井徳三/「軍手」寄贈者・浅野純以
(いずれも広島平和記念資料館所蔵)

※『母のひろば』579号(2012年8月15日 童心社刊)
さがしています

単行本絵本

さがしています

アーサー・ビナード 作/岡倉禎志 写真

「おはよう」「がんばれ」「いただきます」「いってきます」「ただいま」「あそぼ」そのことばをかわすことができる、みんなの生活は、どこへいったのか?
 1945年8月6日の朝、ウランの核分裂が広島で引き起こしたことは、どこまで広がるのか?
ピカドンを体験したカタリベたちは、さがしています─たいせつな人びとを、未来につづく道を。
ヒロシマから今をみつめる写真絵本。

  • 小学3・4年~
  • 2012年7月20日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み