2022.04.12

<新刊絵本>ずっとかわらない、大切なきずな『ゆきちゃんは、ぼくのともだち!』

人気絵本作家・武田美穂さんの新刊をご紹介します。認知症となったおばあちゃんと「ぼく」の心の交流を描く絵本です。

入院していたおばあちゃんが、やっとおうちにかえってきたけれど、ときどきちょっとへんなんだ。



ぼくのことがわからなくなったり、「おばあちゃん」ってよんだら、「わたし、おばあちゃんじゃない!」っておこったりするんだよ。なんだか、ときどき「むかし」にかえってしまうみたい。



いつものおばあちゃんにもどったとき、そのことを話したら、
「こんど、おばあちゃんがへんなおばあちゃんになったら、『ゆきちゃん』ってよんでみて。それで、『いくつ?』てきいてみてよ」だって。


ある日、学校からかえると、おばあちゃんがぼんやりと立っていた。勇気をだして、
「ぼく、けんた。ゆきちゃんはいくつ?」
ってきいてみたら、「7さい」だって。ぼくといっしょなんだ……
7さいのゆきちゃんと、プリンのとりあいでケンカになった。



またべつの日、おばあちゃんに声をかけられたけど、ぼくは公園にサッカーをしにいった。ともだちとやくそくしていたんだ。
ところが、おばあちゃんがついてきちゃっていた!
ベンチにすわっていてもらうことにしたんだけど、やがて……
おばあちゃんがかえろうとするから声をかけたら、また、ゆきちゃんになっていた。こんどは、5さいだって……!


ゆきちゃんと手をつないでかえる。とちゅうでヨーヨーを売っているのを見たら、
「ほしいほしい」と、だだをこねだした。
しかたなくて買ってあげたら、ゆきちゃんは、もうごきげん!
うまくヨーヨーであそべなくて、手でぽんぽんできなかったけれど、
「いいや、ぽんぽんしなくて。たからものにするの」だって。



その日の夜、おばあちゃんはねつをだして、お医者さんがやってきた。
つぎの日も、そのつぎの日も、ぼくはおばあちゃんにあわせてもらえなくて……
ゆきちゃん、はやく元気になって、またヨーヨーしようよ──


変わっていってしまうおばあちゃんと、それを受けいれようとする「ぼく」の姿を、ユーモアもまじえ、あたたかく描きだす作品です。

前見返し(表紙を開いて最初に目に入る、表紙と本の中身をつなぎあわせているページ)には、「ゆきちゃん」が子どもだった頃の思い出の写真が、後ろ見返しには、「ぼく」と、その成長を見守るおばあちゃんとの思い出の写真が並び、物語には出てこない2人がすごしてきた豊かな時間が描かれています。



「……ゆきちゃんは、ずっとぼくのともだちだよ」
認知症になって、「ぼく」のことがわからなくなっても、すごしてきた時間や、大切な存在であることはずっと変わらない……。
2人の心がふれあう瞬間瞬間を、あたたかなまなざしで見つめた感動作です。


36ページ/4・5歳から
(武田美穂・作/絵)
ゆきちゃんは、ぼくのともだち!

童心社のおはなしえほん

ゆきちゃんは、ぼくのともだち!

武田美穂 作・絵

ゆきちゃんは、ぼくのおばあちゃん。このごろ、ときどきへんなんだ。
ぼくのこともわからなくなるし、なんだか「むかし」にかえってしまうみたい。
「ゆきちゃん、いくつ?」ってきいてみたら、きょうのゆきちゃんは7さいだった。おやつのプリンのとりあいで、けんかになった。
おまつりの日、ヨーヨーをかってきてあげたら、5さいのゆきちゃんは大よろこび。ヨーヨーでうまくあそぶことはできなかったけど、「たからものにする」んだって!日によって、話がぜんぜんつうじなかったり、すごくこまることもあるけれど……ゆきちゃんは、ずっとぼくのともだちだよ!!

おばあちゃんと孫の男の子の交流を、時にユーモアも交えて描き出します。老い・認知症といった深刻な問題が背景にありながらも、2人の心が触れ合う瞬間瞬間を温かな眼差しで見つめた感動作です。

  • 4・5歳~
  • 2022年3月18日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み