ニュース
2021.10.11
<ニュース>愛されつづけて40年『ゆうちゃんのゆうは?』
1981年に刊行された、神沢利子さんと田畑精一さんによる絵本『ゆうちゃんのゆうは?』。
今年40周年という節目をむかえました。
・・・・・・・・・・・・・・・
あたしの おとうと
もうじき ひとつ
ゆ、う、って いう なまえよ
ゆうちゃん と よんだら
あーい と へんじ する
・・・・・・・・・・・・・・・
ゆうちゃんの「ゆう」は、何のゆうなのでしょう?
「ゆうびん」の、「ゆう」?
それとも、「ゆうえんち」の、「ゆう」?
いろいろな人がいろいろなものを連想します。
「ゆう」というたったひとつの言葉から、どこまでも想像がひろがっていきます。
実は「ゆうちゃん」とは、作者の神沢利子さんのお孫さんのお名前だそうです。
絵を手がけたのは、『おしいれのぼうけん』で知られる田畑精一さん。
田畑さんは、制作時のエピソードを後にこう語っています。(※1)
「この本で思い出深いのは、『ゆうゆうとした山』とか『ゆうゆうとした雲』ってどんなものだろうと考えたこと。
『ゆうゆう』というのは、どっしりと重いものではなく少しやわらかいんじゃないかなと。
浅間山や乗鞍、妙高などの山を1年かかって登りました。ゆうちゃんは男の子でしょ。きっとこういう山のイメージになってほしいなっていうものがあるんじゃないかと思って、山を見て歩いたんです。(中略)
そんなふうにずいぶん山を見たり雲を見たりして。絵本を作るのに時間がかかるようになった、きっかけのような作品だね。神沢さんのところへできましたと行ったら
『ゆうちゃんの誕生日祝いまでに間に合ったらうれしいんだけどと頼んだはずよ。今いくつだと思う?4歳よ』
と言われたので、ぼくは『ゆうゆうと作っていたんです』と。」
神沢利子さんは、刊行時にこんなメッセージを寄せています。(※2)
「すべては個から発して多くのものに関わりながら、宇宙にひろがってゆくものであろうと、わたしはつねづね思っております。
ゆうはひとりのものであり、すべてを含むゆうであり、含まれるゆうであるように……、さまざまのことば、なまえから、さまざまのイメージがこだましあってひろがるさまを心に描き、ねがっております。」
田畑さんが年月をかけて描いた「ゆうということばからひろがるイメージの山や風、大洋の潮の香までする絵」を見てとてもうれしかったとも綴っています。
数かずの名作を生みだしたお二人の作品の中でも、のびやかな個性を放つ詩の絵本です。お子さんの名前にこめた思いなど語りあいながら、ぜひご家族でお楽しみください。
(神沢利子・田畑精一 さく)
※1『ありがとう 絵本作家・田畑精一の歩いた道』(2021年 童心社刊)。2002年にいわむらかずお絵本の丘美術館で行われた「田畑精一/いわむらかずお ミュージアムトーク」からの言葉です。
※2「母のひろば 204号」(1981年 童心社刊)より
今年40周年という節目をむかえました。
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あたしの おとうと
もうじき ひとつ
ゆ、う、って いう なまえよ
ゆうちゃん と よんだら
あーい と へんじ する
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ゆうちゃんの「ゆう」は、何のゆうなのでしょう?
「ゆうびん」の、「ゆう」?
それとも、「ゆうえんち」の、「ゆう」?
いろいろな人がいろいろなものを連想します。
「ゆう」というたったひとつの言葉から、どこまでも想像がひろがっていきます。
実は「ゆうちゃん」とは、作者の神沢利子さんのお孫さんのお名前だそうです。
絵を手がけたのは、『おしいれのぼうけん』で知られる田畑精一さん。
田畑さんは、制作時のエピソードを後にこう語っています。(※1)
「この本で思い出深いのは、『ゆうゆうとした山』とか『ゆうゆうとした雲』ってどんなものだろうと考えたこと。
『ゆうゆう』というのは、どっしりと重いものではなく少しやわらかいんじゃないかなと。
浅間山や乗鞍、妙高などの山を1年かかって登りました。ゆうちゃんは男の子でしょ。きっとこういう山のイメージになってほしいなっていうものがあるんじゃないかと思って、山を見て歩いたんです。(中略)
そんなふうにずいぶん山を見たり雲を見たりして。絵本を作るのに時間がかかるようになった、きっかけのような作品だね。神沢さんのところへできましたと行ったら
『ゆうちゃんの誕生日祝いまでに間に合ったらうれしいんだけどと頼んだはずよ。今いくつだと思う?4歳よ』
と言われたので、ぼくは『ゆうゆうと作っていたんです』と。」
神沢利子さんは、刊行時にこんなメッセージを寄せています。(※2)
「すべては個から発して多くのものに関わりながら、宇宙にひろがってゆくものであろうと、わたしはつねづね思っております。
ゆうはひとりのものであり、すべてを含むゆうであり、含まれるゆうであるように……、さまざまのことば、なまえから、さまざまのイメージがこだましあってひろがるさまを心に描き、ねがっております。」
田畑さんが年月をかけて描いた「ゆうということばからひろがるイメージの山や風、大洋の潮の香までする絵」を見てとてもうれしかったとも綴っています。
数かずの名作を生みだしたお二人の作品の中でも、のびやかな個性を放つ詩の絵本です。お子さんの名前にこめた思いなど語りあいながら、ぜひご家族でお楽しみください。
(神沢利子・田畑精一 さく)
※1『ありがとう 絵本作家・田畑精一の歩いた道』(2021年 童心社刊)。2002年にいわむらかずお絵本の丘美術館で行われた「田畑精一/いわむらかずお ミュージアムトーク」からの言葉です。
※2「母のひろば 204号」(1981年 童心社刊)より
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ゆうちゃんのゆうは?
生まれた弟の名前は「ゆう」。その一つの言葉を追って、つぎつぎに展開する空想世界。
- 4・5歳~
- 1981年3月30日初版
- 定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
- 立ち読み
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おしいれのぼうけん
お昼寝前に、ミニカーのとりっこでけんかをしたさとしとあきらは、先生に叱られておしいれに入れられてしまいます。そこで出会ったのは、地下の世界に住む恐ろしいねずみばあさんでした。
ふたりをやっつけようと、追いかけてくるねずみばあさん。でも、さとしとあきらは決してあきらめません。手をつないで走りつづけます―。80ページものボリュームがありながら、かけぬけるように展開するふたりの大冒険。1974年の刊行以来多くの子どもたちが夢中になり、版を重ねてきました。累計239万部を超えるロングセラー絵本。- 3歳~
- 1974年11月1日初版
- 定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
- 立ち読み
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ありがとう 絵本作家・田畑精一の歩いた道
<子どもたちをできるかぎり“いきいき”と描きたいと思っている。“いきいき”ということは、絵の中の子どもたちにちゃんと「いのち」があること>『おしいれのぼうけん』の作者であり、なかまたちとともに日本の新しい子どもの本の世界を切りひらいた絵本作家・田畑精一。その数々の言葉を紹介。戦争を体験して、絵本作家になるまでのこと。絵本の表現や、子どもたち、自作絵本への想い……。そこには子どもの本づくりの原点が!
- 一般~
- 2021年7月2日初版
- 定価1,320円 (本体1,200円+税10%)
- 立ち読み