2020.10.28

ねじめ正一さんが描く、大切な人とのあたたかなきずな『みどりバアバ』

今日ご紹介するのは、ねじめ正一さんの新作絵本『みどりバアバ』です。

こうくんのバアバ、みどりバアバは花屋さんです。

こうくんはバアバの作るコロッケが大好きです。
どうしてコロッケがおいしいのかたずねるこうくんに、みどりバアバはこう答えます。

「まいにち おはなを てで さわって、おはなの えいようを いっぱい もらっているからだよ」

そんな働き者のみどりバアバの右手が、だんだん動かなくなり、お花の世話もできなくなってしまいました。
こうくんは、それでもお店に行きたいというみどりバアバの気持ちに寄りそいます。

みどりバアバが亡くなったとき、こうくんはこわくなってなみだが出てきました。

おとうさんが、こうくんに言いました。

「いつもと おなじ、やさしい かおを してるだろ。てを さわってごらん」

みどりバアバは、ねじめ正一さんのお母様がモデルです。
本作を創ったきっかけについて、ねじめさんはこう書いています(※)。

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母みどりが、3年前93歳で亡くなった。

葬儀の後、私は5歳の孫と一緒に母がやっていた民芸店の前を通った。
そのとき、孫がシャッターの郵便受けの小窓に顔をくっつけ、暗闇の店の中を見続けてから言った。

「じぃーっと見てたら、暗いのに慣れて、みどりバアバが見えた」

そんな孫とのエピソードから絵本『みどりバアバ』は生まれた。

大切な人の死は、決して怖いものではない。残された人の心の中で温かく生き続け、引き継がれていくのだから。
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みどりバアバの生き方をそばで見て、バアバとふれあい、そして見送るという経験をしたこうくん。

畳の目、季節のうつろい、お父さんの背中……下田昌克さんの絵から、みどりバアバと家族の日常や心の機微がやさしく伝わってきます。
バアバのまわりにあふれる、美しくあたたかい花たちもぜひじっくりと味わってみてください。

(ねじめ正一・作  下田昌克・絵)

※童心社定期刊行物『母のひろば 677号』(2020年10月15日発行)より


みどりバアバ

童心社のおはなしえほん

みどりバアバ

ねじめ 正一 作/下田 昌克

花屋のみどりバアバが作るコロッケは、大きくておいしい。バアバは「毎日お花を手でさわって、お花の栄養をいっぱいもらっているからだよ」と、こうくんに手を見せてくれた。でも、やがて右手に力が入らなくなり、バアバはしんでしまう。こわくなって涙が出てきたけれど、花屋の栄養たっぷりのバアバの手をさわったこうくん。お葬式が終わった夜、みどりバアバのお店にいくと…。バアバと向き合う男の子の気持ちを丁寧に描く。

  • 小学1・2年~
  • 2020年10月20日初版
  • 定価1,540円 (税込)
  • 立ち読み