<新刊>気づかないうちになってるのが、ともだち『がっこうかっぱのおひっこし』

今回は、『先生、しゅくだいわすれました』『神隠しの教室』『二年二組のたからばこ』(いずれも童心社)など、子どもの心をとらえる多くの作品を生みだしている、山本悦子さんの最新作『がっこうかっぱのおひっこし』をご紹介します。


けいくんは、小学1年生。ママとふたりぐらしです。
ママの会社の近くの保育園に行っていたから、小学校に知っているともだちはいません。「はやく、ともだちをつくらなきゃ」そう思うものの、どう話しかけていいかわからずいるうちに6月になってしまいました。
ママは「けいくんがしっかりしてて、よかった」と言います。だから、ママには今日も学校は楽しかったと話すのです。



休み時間は門の近くにある池で過ごします。パンをコイにあげたり、トカゲやカナヘビを見つけたり。
そんな大切な居場所だった池の工事が決まりました。ビオトープ(※)として生まれかわるというのです。
工事の前日、池に行ってみるとけいくんの足をよじのぼる緑色の小さな生きものが……。それは、なんとカッパでした。

カッパを家に連れて帰ることにしたけいくん。それをきっかけに、これまで話しかけられなかったクラスメイトと仲よくなっていきました。げんちゃんやなこちゃんと冗談を言って笑いあうけいくん、そして「キュキュキュ」と笑うカッパ。楽しい時間が流れます。



やがてビオトープは完成し、3人はカッパを工事の終わった池に戻すことにしました。
お別れの日、カッパは3人を池の中へと連れて行き……。


けいくんが小さなむねに抱える不安や悩み、孤独を、山本悦子さんはあくまで自然に描きます。カッパという架空の生きものが登場するファンタジーながら、その手ざわりまで伝わってくるような描写は、読み手を物語の世界に楽しく誘います。
そして市居みかさんによる挿絵が、けいくんの繊細な心模様やカッパの飄々とした魅力をいきいきと伝えてくれます。


カッパは最後に、けいくんにこう伝えます。

「気がつかないうちになってるのが、ともだちってもんさ」

子どもならではの思いを受けとめ、さりげなく背中を押す、学校の守り神のような存在のカッパ。これからも子どもたちを優しく見守っていくのでしょう。


95P、小学校低学年から。
本作は、2010年に刊行された『がっこうかっぱのイケノオイ』の姉妹編です。


(山本悦子・作 市居みか・絵)


(※)「生き物が住む場所」という意味。学校ビオトープは、主に地域の自然環境を体験的に学ぶために設置されています。
がっこうかっぱのおひっこし

単行本図書

がっこうかっぱのおひっこし

山本 悦子 作/市居 みか

友だちってどうやってつくるんだろう。考えるとドキドキしてきて、けいくんは、まだ友だちがつくれていない。学校の池の工事が始まる日、けいくんは池で小さなかっぱと出会い、家に連れて帰ることに…。

  • 小学1・2年~
  • 2019年12月17日初版
  • 定価1,320円 (税込)
  • 立ち読み