単行本絵本

もしも わたしが

チャン・ドクヒョン 作/ユン・ミスク 絵/かみやにじ

ある日、王さまは人々に「すべての国民はわしのいうとおりにせよ。そうすれば幸せになれる」とつげました。
まず、王さまは、よその戦争は自分たちとは関係ないと言って、よその戦争から逃れてきた人びとを追いだしました。
つぎに、障害を持つ人々を城から追いだしました。それから、働けないお年寄りも、追いだしてしまいました。
わたしは難民でもなく、障害者でもなく、老人でもなかったので、だまっていました。
でもある日、兵隊たちがわたしを連れにきました。
なぜなのかわからないまま、連れていかれたとき、もう、わたしのために声をあげてくれる人は、だれもいませんでした。
あのとき、王さまが人々を追いだしたときに、もし、わたしが声をあげていたなら……
ちがった結果になっていたでしょうか?

  • 定価1,980円 (本体1,800円+税10%)
  • 初版:2026年3月26日
  • 判型:B5判/サイズ:25.7×18.2cm
  • 頁数:29頁
  • 4・5歳~
  • ISBN:978-4-494-02354-7
  • NDC:929

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内容説明

ある日、王さまは人々に「すべての国民はわしのいうとおりにせよ。そうすれば幸せになれる」とつげました。
まず、王さまは、よその戦争は自分たちとは関係ないと言って、よその戦争から逃れてきた人びとを追いだしました。
つぎに、障害を持つ人々を城から追いだしました。それから、働けないお年寄りも、追いだしてしまいました。
わたしは難民でもなく、障害者でもなく、老人でもなかったので、だまっていました。
でもある日、兵隊たちがわたしを連れにきました。
なぜなのかわからないまま、連れていかれたとき、もう、わたしのために声をあげてくれる人は、だれもいませんでした。
あのとき、王さまが人々を追いだしたときに、もし、わたしが声をあげていたなら……
ちがった結果になっていたでしょうか?

書評

排除ではなく、ともに生きる世界のために 童心社のひろば743号 2026年4月15日発行
 この本は、人権や民主主義をどうやって子どもたちに伝えたらいいだろうか、という試みから生まれた韓国の絵本です。かつてナチ党を支持していたドイツの牧師ニーメラーの、戦後の悔恨の言葉をモチーフにしています。韓国の人権活動家チャン・ドクヒョンが現代の子どもへ届く物語に編み直し、ユン・ミスクが鮮烈でポップな絵を重ねました。
 ヒトラーは、共産主義者、良心的な学校や新聞、ユダヤ人を次々に攻撃し、排除しました。ついに教会が標的となったとき、ニーメラーは初めて抗議の声をあげますが、すでに遅く、彼は強制収容所へ送られてしまいました。沈黙は、中立ではなく、暴力を認めてしまう行為だったのです。
 差別や分断が広がるいま、排除の言葉はときに「正しさ」の顔をして語られます。でも、特定の誰かを次々に排除していけば、やがて排除の論理は自分自身にも向かってきます。
 独裁国家だった韓国の人々が、民主化を勝ち取ってまだ40年弱。民主主義は声をあげる人々がいてこそ、かろうじて保たれる仕組みです。排除ではなく、ともに生きる世界を作るには……。
 この本は、「もしもわたしが……」と、胸に問いかけ、声をあげる大切さをやさしく伝えてくれる一冊です。
かみや にじ/翻訳家、日韓研究

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