書評

あったかい思い出　母のひろば704号（2023年１月15日発行）

　着るものはもちろん、口にするもの、手にするもの、身の周りに“あたたかい”が恋しくなる季節です。お風呂の存在も、他の季節とはちょっと違うように感じるのは、私だけでしょうか。
　タイトルを見て、「ぞうさんだものねぇ～」と思いながら表紙をめくります。果たして、見開きいっぱいに、脚付きのおしゃれな浴槽に１人で入るぞうさんがいました。そういえば、「湯舟に入ったとき、ざざ～っとお湯が溢れるのが最高！」と亡き母も言ってましたっけ……。
　１人も良いけれど、大勢で入るお風呂も楽しいですよね。だから、ぞうさんもこぞうさんたちを誘って一緒に入ります。版画で描かれたぞうさんたちの姿や表情の微妙な違いが楽しいです。ぬくぬく、ぽっかぽっか、ごしごしと、お風呂でお馴染みの擬態語が賑やかに繰り広げられ、泡だらけになったら、ぞうさん得意の鼻シャワーで仕上げです。みんなが笑ってふきふきしている様子には、湯上りのあたたかさと安堵感に溢れていて、一緒にお風呂に入ったような気持ちになりました。
　最後に表と裏の表紙を広げて見た私は、「これ、やるよね！」と思わず笑ってしまいました。湯気を感じながら、お風呂のあったかい思い出がよみがえり、大きなお風呂にドボンと入りたくなりました。

（安冨ゆかり／JPIC読書アドバイザー、絵本専門士委員会認定絵本専門士）