インタビュー
台湾でも大人気!『もぐらけんせつ』作者・長崎真悟さんにインタビュー

大人気の絵本「もぐらけんせつ」シリーズ。
お隣の台湾でもシリーズ第1巻『もぐらけんせつ りすさんいっかの木のおうち』の刊行がはじまり、大きな反響が届いているそうです。
作者の長崎真悟さんへのインタビュー取材にあわせて、台湾版の出版社の小魯文化事業股份有限公司(Hsiao Lu Publishing Co., Ltd.)のみなさんが童心社にご訪問くださいました。
作者・長崎真悟さんへのインタビューをご紹介します。
(文章は、実施されたインタビューを元に加筆修正したものです)
今年刊行されたシリーズ第2作『もぐらけんせつ ぽんぽこでらのおまつり』も台湾での刊行準備が進んでいます。
――本作の創作をどのように発想されたか、ご紹介いただけますでしょうか。
この『もぐらけんせつ』という作品は、もぐらの職人さんたちが一生懸命働いて、依頼主さんのために何かあたらしいわくわくするものを作るというおはなしです。
迫力ある「重機」を描きたいと思い始まった作品ですが、もぐらたちが働いて活躍し、みんなのためになにかいいものを作る様子をわくわくして見てもらえたらいいなと思って描きました。
――『もぐらけんせつ』にはもぐらの職人さんたちなど、いろいろなキャラクターが登場します。
長崎さんが一番好きなキャラクターはだれでしょうか?
キャラクターたちは、長崎さんの身近な周りの人がモデルやヒントになっているのでしょうか?
いろんなキャラクターが出てきますが、なるべくキャラクターが個性的になるよう、映画や小説、マンガ、身の回りの人や出会った人たちから着想を得ています。
一番好きなキャラクターですが、もぐぞうが職人らしい性格で好きですね。
――読者の子どもたちはしっかりとキャラクターたちを見分けて、好きなキャラクターや重機の名前をおぼえ、絵の中で見つけて楽しんでいることが、いただく感想から伝わってきます。
最初にキャラクターたちの性格を決めて「この場面だったらこの人はこうしたらおもしろいだろうな」と考えながら描いていますので、そうやっていろいろ見つけてくれたらうれしいですね。
――なぜもぐらを絵本のキャラクターにしたのでしょうか?
台湾や海外ではどうかわかりませんが、工事現場にもぐらがヘルメットをかぶっているイラストがあったり、日本ではもぐらは工事のイメージがある動物なんですね。
それからもぐらは地面を掘ったりもぐったりするので、そういう作業とマッチしたというのもあります。
あまり他の作品で主人公になっていないように思ったので、描けたらかわいい絵本ができるかなと思いました。
――もぐらはサイズも大きすぎず、大きくかっこいい重機車両が引き立っていて、ぴったりの動物ですね。
絵本は、最初からもぐらたちが活躍する構想だったのでしょうか?
いえ、はじめは普通の人間のおじさんだったんです。
担当の編集者さんと話をしていくなかで、動物の方が子どもたちに親しみやすいんじゃないかと、話しあう中でもぐらに変わっていきました。
――そうなんですね!! では、おじさんバージョンのラフなんかも‥‥
はい、ありますよ。
――おじさんたちの絵もなんだかかわいいですね‥‥!
ショベルカーやブルドーザーなど、作中にはさまざまな重機が登場しますが、実際にどんな風にそうした重機が動くのかを間近でみたり、あるいは操縦されたことはあるのでしょうか?
ちょうど家のまわりで工事が多かったので、ずっとウロウロして見てまわったりしました。実際に操縦したことはありませんが、大人も体験できる重機の展示会に行って、重機のシートに座ったことはありますね(笑)。
――「安全第一」や「お客様への思いやり」など、職人スピリッツが強く感じられますが、なぜこのような考えをストーリーに盛り込もうと思ったのでしょうか?
工事をお仕事にされている方だけでなく、お客さまを相手に仕事をされている方々は、基本的にもともと「安全第一」や「お客さまのために」といった考えのもとに仕事をされていると思っています。
だから僕がそれを伝えるというよりも、結果的におはなしをつくる中でそうなっていきました。
ですので、あまり「思いやりは大事」と教えるつもりはなくて、読者の子どもたちには自由に絵本の世界を楽しんでもらえたらと思っています。
――はたらくのりものが出てくる絵本は他にもたくさんありますが、なぜ長崎さんは新しい作品を作ろうと思われたのでしょう?
もともと重機やはたらくくるまが好きだったのもありますし、絵を描く視点からも、大きく迫力のある絵や、働いている様子が喜んでもらえるだろうと思いました。
また、写真や認識絵本などで重機を紹介する、ずかんのような絵本は多いですが、おはなしにのせて重機が活躍するおはなしは、まだ少ないように感じました。
――長崎さんが絵本づくりに入ったきっかけはなんだったのでしょうか。
元々イラストや絵本の挿絵を仕事にさせてもらっていましたが、自分の仕事や展示で他の人に作品を見てもらう機会がふえて、絵本づくりにさそってもらったのがきっかけです。
絵本ではこの『もぐらけんせつ りすさんいっかの木のおうち』は2作目で、その前の恐竜の絵本『ぼくのきょうりゅうかんさつ日記』(徳間書店)が1作目になります。
――それぞれ、絵本の物語を練り上げるのに、どれくらいの時間がかかるのでしょう?
作品によってまちまちですが、『もぐらけんせつ』では、アイデアを出して編集の方に見てもらい、ちゃんとしたお話になっていくまでは半年から1年はかかっていると思います。
――絵本づくりのインスピレーションの源はなんでしょうか?
自分でもよくわかりませんが、ぱっと思いつく時もありますし、別の作品を描いているときや、散歩、リラックスしているときなどに「こういうおはなしはおもしろいかな」と発想しているような気がします。
――子どもたち向けに絵本を創作するとき、最も重要なポイントはなんでしょうか?
ぼくもまだ絵本づくりを始めたばかりですが、子どもたちが喜ぶからといって、子どもの目線になりすぎずに作ることも大切だと思っています。大人の方が見てもおかしくない、大人の方も楽しめる作品でないと、子どもたちは見抜いてしまうと思います。みんなが楽しめるものを作りたいし、それを子どもたちがよろこんでくれたらうれしいなと思って描いています。
――最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
この絵本に興味をもっていただきありがとうございます。
迫力のあるいろいろな重機がでてきたり、個性的なキャラクターたちがたくさん登場します。「このもぐらは何をしているのかな」「どんな建物ができるのかな」と想像しながら読んでもらえたらうれしいです。
――今日はお話ありがとうございました。
追記(2024.10.31)こちらの小魯文化社さんのインタビュー動画が公開されました。ぜひご覧ください。
『もぐらけんせつ りすさんいっかの木のおうち』著者インタビュー
1:本書のきっかけ
2:モグラを主人公に選んだのはなぜ? 長崎真悟さんのお気に入りのキャラクターは?
https://youtu.be/ZNnfOkpgA78
3:作中にはさまざまな重機が登場しますが、操縦されたことはありますか?
https://youtu.be/XUPtvdz_Dp8
4: 絵本を書き始めたきっかけは何ですか? 絵本が完成するまでどれくらいかかりますか?
https://youtu.be/9YDtjBFXahs
5:なぜ物語に「日本の職人魂」を加えようと思ったのでしょう?
https://youtu.be/olVWy5k6pQ8
6:台湾や香港の読者へのメッセージ
https://youtu.be/z2oCD9hIV48
-
もぐらけんせつ りすさんいっかの木のおうち
長崎真悟 さく
まちのこうむてん、「もぐらけんせつ」が安全第一でこうじをうけおいます。
すむひと、使うひとのことをかんがえて、こころをこめて作業します。
ショベルカーやブルドーザーなど、かっこいい重機たちがだいかつやく。
たてものができていく過程を、絵で見て楽しめるおはなし絵本です。
*
もぐらけんせつは、まちでいちばんうでのいいこうむてん。今日は、りすさん一家がそうだんにやってきました。
「おうちがかたむいてしまったので、なおしてもらいたいのです」
もぐらのさぎょういんたちはうたいながら、おおきなのりものにのってさっそく現場にむかいます。
「♪ほれ おせ はこべ つりあげろ あんぜんだいいち わすれずに こわして なおして ととのえて もぐらけんせつ しゅっぱつだ」
りすさんの木のおうちは、すっかりかたむいて、いまにもたおれてしまいそうでした。
もぐらたちは、さっそくこうじをはじめました。
まずは、ショベルカーが木のわきの土をほります。つぎに、クレーン車が木をひっぱり、まっすぐになおします。
ダンプカーが土をはこんできて、あいたあなに土をながしこみます。
さいごにブルドーザーがいわや土をどかして、じめんをたいらにします。
つぎの日からは、おうちのこうじ。トラックがざいもくをはこんできました。
部屋をふやして、キッチンをあたらしくして……こうじはどんどんすすみます。
「おや? このとびら、たてつけがわるいぞ。せーの……」ぱかっキッチンにあるとびらをあけると……?
もぐらけんせつ応援コメント
もぐらけんせつ応援コメント2- 3歳~
- 2023年7月15日初版
- 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
- 立ち読み