2023.10.19

<連載⑨>家族いっしょにすごす幸せな時間『14ひきのこもりうた』

40周年をむかえた「14ひきのシリーズ」から1冊ずつご紹介する連載企画、第9回です。

今日ご紹介するのは、1994年刊行の『14ひきのこもりうた』


おかえりなさい、かけていく とっくん。
ゆうひが さして、ながい かげ。

1日の終わり。みんなが家に帰ってきました。
ごうくんたちは、おふろにまきをくべています。
台所で夕ごはんの準備が進むなか、子どもたちはおふろに入ります。


おふろが終わったら、みんなで食卓をかこみます。
ごはんの後も家族だんらんのひととき。
今日あったできごとをみんなで語らいました。


だんだん眠くなってきたとっくん。
パジャマに着がえて、おかあさんに本を読んでもらいました。


ねむねむ ねむのき はを とじて、
ねむねむ やまばと めを とじる……。


おかあさん、おばあさんのこもりうたで眠りにつく、10ぴきの子どもたちです。


シリーズでおふろが登場したのは、実はこの『14ひきのこもりうた』がはじめてでした。

作者のいわむらかずおさんの心にのこっているのは、戦後、疎開から戻りふたたび家族そろって暮らしはじめた幼いころのおふろだそうです。
お父さんがドラム缶でつくったそのおふろ。煙のにおいがする湯気のことをよくおぼえていると話してくださいました。

夕方から夜にかけての日常のひとときを描いたこの絵本。
そのことを、「家族がともにいる幸せを感じる時間」といわむらさん。

絵本のなかにでてくるこもりうたは、作曲家の寺島尚彦さんが作曲し、後見返し(裏表紙をめくったところ)には楽譜も掲載されています。

1日の終わり、ほっとした気持ちで味わいたい1冊です。


(いわむらかずお・さく)
14ひきのこもりうた

14ひきのシリーズ

14ひきのこもりうた

いわむらかずお さく

夕日がさして影が長くなり、森へたきぎを拾いにいっていたお父さんたちが帰ってきました。
今日のゆうごはん、きのめのシチューのいいにおいが漂ってきたころ、子どもたちは順番にお風呂に入ります。

小さなヨットを浮かべたり、おじいさんの背中を流したり、みんなで楽しくおふろであたたまったら、家族そろって楽しいゆうごはんです。

ごはんの後はみんなで、今日のできごとを語りあいます。眠りにつく前、子どもたちはお母さんに本を読んでもらいます。ゆったりした気持ちになったところで、お母さん、おばあさんがこもりうたを歌ってくれます。

「ねむねむ どんぐり そら みあげ
 ねむねむ いもむし ゆめを みる。
 おやすみ おほしさん とおろりろ……。」


夕方から眠るまでの14ひきたちのいとなみを描いた、人気ロングセラーシリーズの第9作。

なんとも心地よさそうな14ひきたちのお風呂場の場面では、3場面にわたって夕方から夜にかけて差し込む光や空気が刻々と変わっていく様子が描かれています。毎日くり返される、お風呂やゆうごはん、眠る前の1冊の本の中にこそ、確かな幸せがあることを教えてくれる作品です。

  • 3歳~
  • 1994年7月10日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み