2021.09.03

<新刊紹介>子どもと向きあい作りつづけた紙芝居のすべて――『かこさとしと紙芝居 創作の原点』

絵本作家として、数多くの名作を生みだしたかこさとしさん。
生涯に残した作品は、出版していないものも含めて600を超えるそうですが、その4分の1近くが紙芝居だということを、みなさんは知っていますか?

かこさんは、大学卒業後から40代まで、セツルメントというボランティア活動の中で紙芝居を作り続けました。
かこさんの長女で加古総合研究所の鈴木万里さんは、こう書いています(※)。

「どんなに思いを込めて作った紙芝居でも、子どもたちは途中で飽きてしまい、外へ虫採りに行ってしまうこともしばしばあったそうです。
虫採りに負けないくらいおもしろい紙芝居を作って、子どもたちに最後まで観てもらうことが、かこの紙芝居作りの目標になりました。
子どもたちの『続きはどうなるの?』『もういっぺん』を聞きたくて、20年あまり紙芝居作りに力を注いだのです。」

子どもと向き合い、おもしろい作品を追求し続けたことが、かこさんの創作活動の原点になりました。
本書では、かこさとしさんが作った紙芝居全作品を掲載し、創作のひみつをひもときます。


【本書の内容】

第一章
ボランティア活動をしていた当時の作品や研究会の機関誌など、貴重な資料とともにかこさんの紙芝居づくりのあゆみをたどります。


第二章・第三章
かこさんは、紙芝居の歴史を研究するなど、その本質にせまろうとしました。
絵本作品との比較やご自身の言葉を通して、かこさんが紙芝居をどうとらえていたかを読みときます。

第四章
かこさとしさんが生涯に生みだした130もの紙芝居作品をすべて掲載しました。
鈴木万里さんの解説やさまざまな場面・展開の分析をまじえて、かこさんの紙芝居創作のひみつや、作品にこめた思いにせまります。



最後に、かこさとしさんの言葉をご紹介します。


紙芝居というのは、絵巻物とか絵本をばらしたようなものと思っている方がありますけど、そうじゃなくて、
要するに紙による芝居なんですね。
演劇としての起承転結があって、
時間の流れその他がぴたっといかないと、見ている人には何のことやら、となってしまう。
ぼくは紙芝居をやったことは、絵本作りに非常に役に立ったと思いますね。

(別冊太陽『絵本の作家たちⅣ』平凡社/2006年)


かこさとしさんの紙芝居のすべてがぎゅっとつまった1冊です。
じっくりとご覧ください。


(かこさとし・鈴木万里 著)
167頁/A5判/21.6×15.4cm

『かこさとしと紙芝居』「はじめに」より
かこさとしと紙芝居

単行本図書

かこさとしと紙芝居

かこさとし鈴木万里

かこさとしは、一九四八年に大学を卒業してから四十代半ばまで、セツルメントというボランティア活動をとおして、毎週のように手描き紙芝居を子どもたちの前で演じていました。
子どもたちの欲求に応えるおもしろい作品を探究しつづけたことが、その後の創作活動へと繋がっていきました。また、かこは紙芝居の歴史を研究し、その本質を知ろうとしました。
本書では、かこの膨大な紙芝居資料をふりかえり、作品の魅力を探ります。

  • 一般~
  • 2021年8月25日初版
  • 定価2,420円 (本体2,200円+税10%)
  • 立ち読み