2021.07.27

<新刊紹介>ためいきは最後に幸せをはこんでくる!?『みんなのためいき図鑑』

みなさんはどんなときに、ため息をつきますか?
かなしいとき? さみしいとき? 
でも、うれしいときや、安心したときにもためいきをつきます。
では、ためいきって、なんなのでしょう?

今日は、ためいきをテーマに子どもたちの思いを時に切なく時にユーモラスに描いた、人気作家村上しいこさんの新刊図書をご紹介します。


 



クラスで班ごとにオリジナルの図鑑をつくることになった“たのちん”こと、田之上嵐太。
たのちんの班は、小雪、七保、コーシロー、そして保健室登校で教室にほとんど来ない加世堂さんの5人です。

他の班は「おしごと図鑑」に「ペット図鑑」「病気図鑑」など、テーマが順調に決まっていく中、何も決まっていなかったたのちんの班は、明日までにテーマを決めてくるよう、先生に宿題を出されます。

たのちんは、塾でどうしても忙しいという小雪と七保から、明日までに班の図鑑のテーマを考えてきてほしいと頼まれてしまいます。
たのちんが、保健室の加世堂さんを訪ね、おおきなためいきをつきながらその話をすると、加世堂さんが「ためいきこぞう」の絵を描いてくれました。

その絵をもらってきたたのちんが、夜中にひとり、家で図鑑のテーマを考えていると、
「ここから、だしてや!」という声が。
ランドセルから、ぴょこんととびだしてきたのは、ためいきこぞう。
なんと、加世堂さんの絵がうごきだしたのです!


 



たのちんは、ためいきこぞうを相談相手に、「ためいき図鑑」つくることを思いつきます。
みんな、どんなときにためいきをつくのだろう、ためいきってなんだろう……と。

たのちんの考えた「ためいき図鑑」が班の図鑑のテーマに決まり、班のみんなは図鑑づくりに動きだします。
たのちんは、絵の得意な加世堂さんに、図鑑の絵を描いてもらおうと思っていましたが、小雪も絵を描きたいとゆずってくれません。
加世堂さんが絵を描けば、教室にくるきっかけになるかもしれないのに……。
小雪と加世堂さんは以前は仲がよかったはずなのにどうしてなのでしょう?
そして加世堂さんの家庭の問題も見えてきて……。

「あーあ、わからん!」
みんなの気持ちを大切にしたいけれど、それってすごくむずかしいことなのです。
たのちんが悩んだ末にだした答えとは……。

 



班でのオリジナル図鑑づくりと、教室にこられなくなってしまったクラスメイト・加世堂さんの存在をめぐって、小学4年生の主人公の視点から、クラスメイトたちの心の交流をユーモラスに描いた本作。

絵からうまれた不思議な存在“ためいきこぞう”は、たのちんの悩みによりそいながら、たのちん自身が気づかなかった思いに気づかせ、クラスメイトたちの考えに目をむけるきっかけをつくっていきます。

作者は『かめきちのおまかせ自由研究』(岩崎書店)『れいぞうこのなつやすみ』(PHP研究所)『うたうとは小さないのちひろいあげ』(講談社)など、ユーモラスな幼年童話や読みごたえのあるYA小説で人気の村上しいこさん。
絵は話題作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)の装画や、絵本『やましたくんはしゃべらない』(岩崎書店)など、幅広く活躍するイラストレーター、中田いくみさんです。


小学校中学年から楽しめる作品ですが、大人の方もぜひお手にとってみてください。
ためいきについて深く考えてみると、まわりの人や自分自身を知るきっかけになるかもしれません。
夏の読書感想文にもおすすめの作品です!


166ページ/小学校3年生から
(村上しいこ/作 中田いくみ/絵)
みんなのためいき図鑑

単行本図書

みんなのためいき図鑑

村上しいこ 作/中田いくみ

授業参観にむけて、たのちんの班は「ためいき図鑑」をつくることになった。どんな時にヒトがためいきをつくのか調べて発表するんだ。でもいっしょの班の加世堂さんは、保健室登校で、教室にはちっともきてくれない。加世堂さんもいっしょに図鑑をつくれないかと、たのちんがある提案をしたところ、班のほかのメンバーと、もめてしまい……もうためいきばっかり! 家族や友達との関係にゆれる子どもの気持ちを、鮮やかに描いた物語。

  • 小学3・4年~
  • 2021年7月7日初版
  • 定価1,320円 (本体1,200円+税10%)
  • 立ち読み