<インタビュー>紙芝居『おはいんなさい!』著者・さいとうしのぶさん

(2019.12.29 大阪梅田にて)


絵本作家のさいとうしのぶさんは、『よーいよーいよい』(月刊絵本「おはなしチャイルド」第280号 チャイルド本社)で1998年にデビューしました。その後、学童クラブで働いていたときの子どもたちとの遊びを絵本にした『あっちゃん あがつく たべものあいうえお』(リーブル)をはじめ、多くの人気作品を出版してきました。創作活動の一方、絵本ライブなどさまざまな場で子どもたちと絵本を楽しむ活動も続けています。

このたび童心社より、さいとうさんにとって初めての紙芝居『おはいんなさい!』が刊行されました。観客とのコミュニケーションが楽しめる、さいとうさんならではの作品です。
刊行を記念し、制作のエピソードや紙芝居への思いなどをうかがいました。



『おはいんなさい!』さいとうしのぶ 脚本・絵

スプーンさんとフォークさんがなわをまわして、「さあ、おおなわとびしよう!」
だれかさんがとんだら、何かにへんしんするんだって。
♪だれかさん おはいんなさい……すると、「はーい!」って、ごはんさん、うめぼしさん、のりさんがやってきた。みんなでとんだら……おにぎりにへんしん!
次にやってきたのは、ぎゅうにゅうさん、たまごさん、おさとうさん。今度はなににへんしんするかな?




――さいとうさんにとって初めての紙芝居作品ということですが、創作のきっかけは?


初めて童心社の編集の方とお会いしたとき、ちょうど私は大きな作品を作り終えたところで、何か自分にとって新鮮に感じられることをしたいと思っていました。そんなときだったので、編集の方が持参し、目の前で見せてくれた紙芝居にひかれ、楽しそうだな、やってみたいなと思いました。すぐにいくつかアイディアを出し、その中から『おはいんなさい!』をつくることになったのです。

――食べものたちが大なわとびをしておいしいものに変身する、という展開は画面をぬいたときの驚きがあり、紙芝居ならではですね。


そうですね。それから、「おはいんなさい」というフレーズがいいなと思っていました。わらべうたの絵本をつくったこともありますし、長年続けている絵本ライブの活動でも、わらべうたのすごさは感じていたので、ぜひ作品に取り入れたいと。「おはいんなさい」は地域によってイントネーションが異なりますが、子どもたちにはすっとなじむフレーズだと思ったのです。演じ手によってリズムが変わるのもライブ感があって楽しいです。

――以前から、紙芝居にふれたことはありましたか?


小さいころは観るのも大好きでしたが、自分でもチラシの裏や厚紙を使って作っていたのをおぼえています。大人になって学童クラブで働くようになってからも、子どもたちのために小さな紙芝居を作って演じていましたね。もちろん『ごきげんのわるいコックさん』(童心社)など長く愛されている作品も演じましたよ。学校が終わってから過ごす学童クラブは、子どもにとってどっぷり遊びたい時間なのですよね。それも友だちと一緒に。そのときに紙芝居はぴったりで、子どもたちも入りこんで楽しんでいました。

――実際に制作し、絵本と紙芝居の違いを感じましたか?


それは全く違うものでした!
『おはいんなさい!』は、小さい子でも楽しめる8場面にすることになり、まずはおはなしの展開、脚本を完成させました。はじめはたまねぎやにんじんが、場面をぬくたびに順番に出てきてカレーライスになる、というものを考えていました。でも編集の方とやりとりするうち、大なわとびによって食べものが変身するというおもしろさは、何回かくり返した方が小さな子たちに伝わりやすく、その展開がわかると、次は何に変身するか期待も高まるのではないか、と考えるようになりました。それで、変身してできるものをおにぎり、次にプリン、と2段階にし、そのあとさらに食べものの友だちがやってきて変身!という展開にしました。
その後、絵に取りかかったのですが、それがとても難しかった! 絵本はページをめくるものですが、紙芝居は場面をぬいて展開していきます。ぬいていく方向は決まっていて、しかもぬきながら次の場面が見えてくるのです。自分で演じると絵が見えませんし、鏡に映すと反対ですし……。観客には絵がどう見えているのか、という感覚をつかむまでに苦労しました。

――紙芝居ならではの形がある、ということですね。絵を描くときに意識したことはありますか?


私は絵本の絵のときは、とにかく細かく描きこみます。まわりの絵からもいろいろな発見をして楽しんでほしいと思っているのです。ですが紙芝居は遠くからはっきり見えることが重要です。絵本のときは輪郭線に色鉛筆を使うことが多いのですが、今回は筆で太く描き、はっきり見えるよう心がけました。シンプルだけにごまかしがきかなくて、難しかったですね。
そういうわけで、今回は絵本と違って背景が色だけの場面が多かったのですが、それによって印象が大きく変わることにも驚きました。一度紫色で背景を塗ってみたのですが、なんだか暗く感じてしまって……。色の効果を強く感じましたね。今回、おにぎりのあとまた誰もとんでいない大なわだけの場面が入るのですが、そこは背景が白のままで、ある意味でリセットする役割になったと思っています。


――制作の途中でどなたかに演じることはありましたか?


家族や、よみがたりの活動をされている方、幼稚園の先生にも観ていただきました。大人の方でも♪みんなで とんだら なにに なる? と語りかけると、「おにぎり!」と楽しそうに声を出してくださり、思ったとおりの反応がありました。牛乳と、たまごと、さとうで何になる? という場面では「ホットケーキ」などさまざまな答えがあり楽しかったです。最後にでてくるデザートの名前をきくところがあるのですが、「プリン・ア・ラ・モード」と答えられるのは昭和の方が多いようですね(笑)。
作品が形になってからは、絵本ライブや子育て支援の場など、子どもたちがたくさんいるところでも演じています。会のはじめに演じると、大人も子どもも一緒に楽しめてぐっと集中してくれます。導入の作品としてぴったり、と言っていただくことも多いです。

――登場する食べものが本当においしそうで、そしてそれぞれが表情豊かで楽しく、さいとうさんならではの作品だと感じます。大なわとびの場面は実際に画面を上下に動かすのですよね。


これは編集の方のアイディアです。紙芝居ってそんなこともできるんだ! と私も改めて驚きました。舞台を使って演じると画面がはっきりくぎられるので、紙芝居の動きもより効果的に見えるのです。私も演じるときには舞台を使っています。

――ほかに『おはいんなさい!』を演じるポイントはありますか?


私は、演じるときに観客の皆さんとのやりとりを大切に考えています。脚本どおりに無理には進めず、その時のコミュニケーションをたっぷり楽しむといいのではないでしょうか。♪だれかさん おはいんなさい! は言葉のリズムを感じて読んでほしいですね。子どもたちは観るのはもちろん、演じてみたい気持ちもとても強いです。この紙芝居はシンプルな作品なので、子どもたちにも挑戦してもらえたら嬉しいです。

――今後の作品についての構想はいかがでしょうか。


今回初めてつくってみて難しさも感じましたが、新しい世界を知ることもできました。紙芝居でならこんなこともできるかも? とアイディアはいろいろ浮かんでいます。昔から愛されているたくさんの紙芝居も見たりしながら、新しいことに挑戦していけたらと思っています。

――今日はどうもありがとうございました。

おはいんなさい!

2019年度定期刊行紙しばい 年少向け おひさまこんにちは

おはいんなさい!

さいとうしのぶ 脚本・絵

さあ、おおなわとびしよう! まずやってきたのは、ごはんさん、うめぼしさん、のりさん。ピョン ピョン ピョンって、みんなでとんだら……おにぎりにへんしん! 今度は牛乳さん、卵さん、おさとうさんが……。

  • 2歳~
  • 2020年3月1日初版
  • 定価1,540円 (税込)
  • 立ち読み