海底電車
てつおは、おかあさんと二人で古ぼけたおじいちゃんの家にひっこしてきた。ある日おじいちゃんの部屋から、ゴーッというふしぎな音がきこえた。部屋に入ると、電車のジオラマが並び、大きな水槽には魚が泳いでいた。てつおは、車掌のひいおじいさんと一緒に、海底電車デハ1形にのりこむ。
「海底電車」は人の記憶を旅するふしぎな電車なのだった。美しいたてものをめぐり、歴史に触れるうちに、てつおの心はなにかをつかんでいく。
- 定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
- 初版:2016年3月15日
- 判型:B5判/サイズ:26.6×19.1cm
- 頁数:32頁
- 4・5歳~
- ISBN:978-4-494-02568-8
- NDC:913
内容説明
てつおは、おかあさんと二人で古ぼけたおじいちゃんの家にひっこしてきた。ある日おじいちゃんの部屋から、ゴーッというふしぎな音がきこえた。部屋に入ると、電車のジオラマが並び、大きな水槽には魚が泳いでいた。てつおは、車掌のひいおじいさんと一緒に、海底電車デハ1形にのりこむ。
「海底電車」は人の記憶を旅するふしぎな電車なのだった。美しいたてものをめぐり、歴史に触れるうちに、てつおの心はなにかをつかんでいく。
読者の声
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あたたかみのある絵のストーリーからも感じ取られました。(61歳・女性)
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てつお君の揺れ動く気持ちが幻想的でいて、あたたかみのある絵のストーリーからも感じ取られました。松森清昭さんの次作を楽しみにしています。
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関連情報
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2018/7/4
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推薦のことば
- 著者より 絵本『海底電車』について 2016年3月23日
- 『海底電車』を作ることになったのは、松森さんの絵を拝見したことがきっかけでした。何点か見せてもらった絵は、どれも水の底にある不思議な街であり、そこには電車が描かれていました。「なにか、水の底って記憶がたまっているような気がするんです」
松森さんはそう語りました。
30年以上も長野県で中学校の美術の教師をしながら、松森さんはずっと水の中の街の絵を描き続けていました。そして驚いたことに、私が若いころに書いた『絵本論』という本の読者で、いつか絵本を描きたいという思いを30年以上も胸に秘めていた人でした。
私は松森さんの作品からインスピレーションを得て、絵本の案を考え始めました。
私の記憶の海には、世界各地で目にした印象的な風物、人類が生み出した美しくも不思議な建造物がいくつも沈んでいました。
「松森さんの描くあの電車に乗って、記憶の海を旅しよう」
このアイディアが生まれるとストーリーは自然に浮かんできました。
『海底電車』ができるまでには2年半の歳月を必要としました。私自身が撮影した写真をはじめ、さまざまな資料にあたり、イメージを膨らませ、松森さんは数えきれないほどの習作を描いてくれました。
この絵本を手にした子どもたちが、海底電車に乗って、主人公のてつおとともに不思議な水の中の旅を楽しみ、さらに、この幻想的な世界を通して、人類がつくってきたさまざまな文化や歴史に興味を持ってくるならばこんなに嬉しいことはありません。 - 松本猛(美術・絵本評論家、作家、ちひろ美術館常任顧問、絵本学会会長)
書評
- 記憶の海での秘密の冒険(母のひろば624号) 2016年5月15日
- お母さんと一緒におじいちゃんの家に引っ越してきた少年は、「ぜったいに入ってはいけない」といわれていた、おじいちゃんの部屋で不思議な体験をします。知らないおじいさんが運転するレトロな電車に乗って、海の底を探検するのです。
海底電車は、人の記憶の海を走るのだといいます。ドイツの南にあるノイシュヴァンシュタイン城、ローマの水道やコロセウム、エジプトのピラミッドやスフィンクスや太陽の船。人類の長い歴史が生み出した不思議な建物や遺跡が、銀河のようにきらびやかな蒼い海底に幻想的に描き出され、どの場面も工夫されていて、見はじめると興味が尽きません。
中学の美術教諭をしながら創作活動をしている画家の、はじめての絵本だそうですが、場面転換の妙や青を基調とした構成と構図の巧みさ、描き込みの濃密さには驚かされます。
曾祖父から祖父へ、そして孫へと伝えられる記憶の世界での素晴らしい冒険が、学校に行けず閉じこもりがちな少年の心を、さりげなく解きほぐす物語構成も見事です。
蜘蛛の巣が張った不気味な洋館の、等身大の鉄仮面の像がみはる奇妙な一室を舞台にした記憶の海の冒険は、子どもたちの好奇心を刺激するとともに、乗り物好きにはたまらない魅力的な絵本にもなるでしょう。巻末の図版解説も楽しめます。 - 野上暁(のがみ あきら/評論家)
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