単行本図書

あおのいえ

いとうみく 作/丸山ゆき

「あおくんちって、なんかふくざつだね」ぼくは、ともだちのおねえさんに言われたことを、しずさんに伝えた。しずさんは「そうね、人と人がいっしょにくらすって、ふくざつなことなのよ」といった。「つまり、かんたんじゃないってことね。かんたんじゃないことってわかりにくいでしょ」「ぼくんちは、わかりにくいってこと?」まあそうねと、しずさんはつぶやいた。「たぶん、クラスのほとんどの子のうちには、おとうさんとおかあさんがいるでしょ」「うん」「あおは、そうじゃない」??みんなとちがうって、いけないことなの?
さまざまな家族のあり方を描き続ける、いとうみくの新作。

  • 定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
  • 初版:2025年5月28日
  • 判型:A5判/サイズ:14.8×21cm
  • 頁数:95頁
  • 小学1・2年~
  • ISBN:978-4-494-02088-1
  • NDC:913

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内容説明

「あおくんちって、なんかふくざつだね」ぼくは、ともだちのおねえさんに言われたことを、しずさんに伝えた。しずさんは「そうね、人と人がいっしょにくらすって、ふくざつなことなのよ」といった。「つまり、かんたんじゃないってことね。かんたんじゃないことってわかりにくいでしょ」「ぼくんちは、わかりにくいってこと?」まあそうねと、しずさんはつぶやいた。「たぶん、クラスのほとんどの子のうちには、おとうさんとおかあさんがいるでしょ」「うん」「あおは、そうじゃない」??みんなとちがうって、いけないことなの?
さまざまな家族のあり方を描き続ける、いとうみくの新作。

書評

子どもたちの寛容な心を育てる 母のひろば733号 2025年6月15日発行
『あおのいえ』のゲラを拝読しながら、ある学校図書館に司書として1日だけお手伝いに行った際の出来事を思い出していました。低学年の児童が、自分はスカートではなくズボンをはいていたいと、その日初めて会った私にわざわざ伝えに来てくれたのです。校長先生も知っているということでしたから、その児童の性自認を周囲も理解しているのだろうと受け止めました。
『あおのいえ』は、子どもたちに多様な性のあり方を考えるきっかけを与えてくれる作品です。そして、自分の生まれ持った性に幼少期から違和感を覚えている子どもは、この作品から心強いメッセージを受け取ってくれるのではないかと思います。
 あおくんが作中で語る「みんなとちがうと、おかしいとか、わからないって思いがちなのよね」「ほんとうはおなじなんてひとつもないんじゃないかな」「ちょっとちがう。だいぶちがう。ぜんぜんちがう。いろいろちがう。みんなちがう。だけどやっぱり、ぼくのうちは、ぼくんちだ」は、学校司書として児童に伝えたい言葉です。
 最終ページの見開きイラストは、あおくん・しずさん・なおくん家族が、これからも幸せに暮らしていくことが表現されていて心が温まります。新しい家族のかたちがここにあるのですね。
 誰もが笑顔で暮らせる社会になりますように。
伊藤咲子/学校司書

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