2022.08.05

<子どもたちと向き合う ―戦争と平和―②>紙芝居『ちっちゃい こえ』

2019年の刊行以来、さまざまな場で演じられ、反響を呼んでいる紙芝居があります。
画家の丸木俊さん、丸木位里さんによる大連作「原爆の図」(※1)をもとに、詩人のアーサー・ビナードさんが物語を紡いだ『ちっちゃい こえ』です。

「原爆の図」と初めて出合ったときの感覚を、アーサー・ビナードさんはこう語っています。

「それまでの美術鑑賞とは違う現象が自分の中で起きていると感じました。自分はいま美術作品を鑑賞しているのではなくて、作品に巻き込まれているのではないかと。『原爆の図』は、絵画ではあるけれど、同時に見る人を、傍観者から当事者へと引き込む装置なのではないか。」(※2)

そのとき、来日して初めて紙芝居を見たときの感覚がよみがえったと言います。
それは、物語の世界に巻き込まれていく感覚です。

2つの体験がつながったとき、アーサー・ビナードさんは「原爆の図」をもとにして、絵を切りとって紙芝居の物語を紡いでみようと考えました。

「原爆の図」に描かれた生きものと向き合い、その声に耳をかたむけつづける日々。脚本を進めては絵を探し、実際に演じ……試行錯誤をくり返し7年という年月をかけて、ついに作品は完成しました。


このほど、紙芝居に贈られる賞である「五山賞 特別賞」(※3)を受賞しました。
受賞に際し、『ちっちゃい こえ』は以下のように紹介されました。

「ビナードさんが7年もの間、紙芝居に対峙し、取り組む紙芝居は2019年5月に完成。五山賞審査会でも議論が沸いた。『ねこのクロの語りで展開するのが良い』『地球は人間だけのものではない。重い題材をサイボウに転化させ、心にひびいてくる。すごい表現である』等、大きな訴求力を持つ優れた作品となっていると高く評価された。」(※4)


この紙芝居はヒロシマを描いていますが、主人公は、いのちをつくりつづけるサイボウです。
わたしたちはどうすれば生きていけるのか?
美しい絵からひびく声に、耳をすませてください。
演じ手と観客、一人ひとりの中にある声もひびきあい、広がる紙芝居です。

(脚本/アーサー・ビナード 絵/丸木 俊・丸木位里「原爆の図」より)

※1「原爆の図」…原爆投下直後に広島へ入った丸木位里さん、丸木俊さんが目にした光景と、体験者の証言をもとに描かれた15部にわたる大連作。それぞれの作品の大きさは、どれも縦1.8m、横7.2mであり、四曲一双の屏風絵の形をとっている。

※2『母のひろば』662号(2019年7月15日 童心社刊)

※3五山賞…教育紙芝居の生みの親といわれる高橋五山(1888~1965)の業績を顕彰し、創設された。1年間に出版された紙芝居の中から優秀な作品に授与される。『ちっちゃい こえ』が特別賞を受賞した第58回の選考は延期されていたが、第59回とあわせて行われた。

※4子どもの文化研究所「第58回・59回 紙芝居3賞 受賞作品・受賞者紹介」より

ちっちゃい こえ

単品紙芝居

ちっちゃい こえ

アーサー・ビナード 脚本/丸木俊・丸木位里 絵/「原爆の図」より

ネコが語ります。家族のこと。命をつくりつづける、体の中のちっちゃい声のこと。ヒロシマのこと…。わたしたちはどうすれば生きていけるのか? 美しい絵から響いてくるそのこたえに、一人ひとり耳をすます紙芝居。
『ちっちゃい こえ』プロモーション動画はこちら

『ちっちゃい こえ』紹介リリース

  • 小学3・4年~
  • 2019年5月20日初版
  • 定価2,970円 (本体2,700円+税10%)
  • 立ち読み