2021.08.08

<連載3/4>今、広がる「いのちの響き」――『ちっちゃい こえ』に出会ったみなさんの言葉から

2019年に刊行された紙芝居『ちっちゃい こえ』(脚本・アーサー・ビナード/絵・丸木俊・丸木位里「原爆の図」より)。
このたび、『ちっちゃい こえ』に出会い、「いのちの響き」に耳をすましてくださった皆さんの言葉を連載企画としてご紹介しています。
3回目の今日は、ご家庭や地域でこの紙芝居を演じてくださっている、ねっこかなこさんの言葉です。


子どもたちは細胞の声を聞く

「紙芝居がはじまるよー!」と声がかかると、子どもたちが「はーーい!」と走って広間へ集まってきた。ここは島根県の山中にたたずむ茅葺(かやぶき)民家。

生きのいい地元の子どもたちは、紙芝居を前から見たり、裏から見たり、横から見たり。自分も演じてみたいなと、目を輝かせている。

子どもたちは、紙芝居『ちっちゃい こえ』を通して、自分たちの細胞の声を聞く。「ずんずん るんるん ずずずんずん るんるんるん」紙芝居を目の前で聞いていた一人の子どもが、自分の細胞の音は「ぴょんぴょん ぴょんぴょん聞こえてる!」と言った。アーサーさんはその子に「うん。なんかきみは、ぴょんぴょんって感じするよね」って言って笑った。それぞれに違うその人の細胞の音が、私たちを生かしている。

原爆の落ちるシーンで、それまでウロウロ歩きながら見ていた子の動きが止まり、まっすぐに視線が画面に注がれた。見えない何かを、その子の心が感じとった。

集まった保育園から小学校の子どもたちは、この紙芝居の感想を聞かれても、今はうまく言葉にならないかもしれない。ただ、この体験が、この子たちが大きくなった時、一体どこに本質があるのかを、イメージする力へとつながっていることを私は願っている。その力が、きっと豊かな選択を引き寄せる。たくさんの人のもとへこの体験が届きますように。

(ねっこかなこ/島根県)
「母のひろば」687号(2021年8月15日 童心社発行)より

その後、ねっこかなこさんは、ご自身でもお子さんや地元の子どもたちに『ちっちゃい こえ』を演じているそうです。『ちっちゃい こえ』は見たあとも子どもたちがよく覚えていて、さまざまな質問をされるといいます。4歳の息子さんからは、「かあちゃん、まだ戦争をしている国はあるの?」と問いかけられ、この作品が子どもの心に確かに届いていると感じた、とお話しくださいました。この紙芝居を通して、お子さんたちと戦争や原爆の話を日常の中でするようになったそうです。

写真は、「この絵が好き!」と大きな猫の目の場面を選んでくれた息子さんです。


(脚本 アーサー・ビナード 絵 丸木俊・丸木位里「原爆の図」より)

みなさんの声もぜひお寄せください。
『ちっちゃい こえ』のご感想はこちらまで
https://www.doshinsha.co.jp/review/

ちっちゃい こえ

単品紙芝居

ちっちゃい こえ

アーサー・ビナード 脚本/丸木俊・丸木位里 絵/「原爆の図」より

ネコが語ります。家族のこと。命をつくりつづける、体の中のちっちゃい声のこと。ヒロシマのこと…。わたしたちはどうすれば生きていけるのか? 美しい絵から響いてくるそのこたえに、一人ひとり耳をすます紙芝居。
『ちっちゃい こえ』プロモーション動画はこちら

『ちっちゃい こえ』紹介リリース

  • 小学3・4年~
  • 2019年5月20日初版
  • 定価2,970円 (本体2,700円+税10%)
  • 立ち読み