2021.08.06

<連載2/4>今、広がる「いのちの響き」――『ちっちゃい こえ』に出会ったみなさんの言葉から


2019年に刊行された紙芝居『ちっちゃい こえ』
詩人のアーサー・ビナードさんが「原爆の図」と向き合い、7年という歳月をかけてつくりあげたこの紙芝居は、観客と演じ手のみなさんに驚きをもって受けとめられ、今、さまざまな場で広がっています。

この夏、連載企画として、『ちっちゃい こえ』に出会い、「いのちの響き」に耳をすましてくださった皆さんの言葉をご紹介しています。

2回目の今日は、長年絵本や紙芝居を子どもたちに伝える活動をしてこられた、高松勝子さんの言葉です。


紙芝居で伝えられること

私は終戦の年に生まれ、戦争に勝つことを願って「勝子」と名づけられました。今の子どもたちにとって、戦争や原爆のお話は昔話のように感じるかもしれませんが、私が生まれたころ、本当にあったことなのです。

これまでさまざまな場で絵本や紙芝居を届ける活動を続けてきて、原爆のお話も大切に伝えてきました。でも、『ちっちゃい こえ』をすぐには演じられませんでした。この紙芝居の絵の元になった「原爆の図」を見なければ演じられない。そういう感情に突き動かされ、まるで何かに運ばれるように、福岡から埼玉の丸木美術館(※)に向かっていました。大きな絵の中に確かに存在する、紙芝居の登場人物たち。その一人一人に出会えたとき、どう演じればいいのか頭で考えるのではなく、自分なりに、素直に心を込めて演じればいいのだと、やっと思うことができました。

そうして、子どもたちや親御さんも集まる場でこの紙芝居を演じたとき、みなさんがお話に集中してくれているのを感じました。紙芝居は臨場感を持って、観客のみなさんの心に伝わるものです。肉体は小さくても、いきいきとした魂を持った子どもたちにも伝わっているということを実感しました。

戦争や原爆について事実を伝えるお話が多い中、『ちっちゃい こえ』は細胞の音とともに生きることを伝える、懐の深い作品だと感じています。これからも大切に演じていきたいと思います。

(高松勝子/福岡県)
「母のひろば」687号(2021年8月15日 童心社発行)より


高松さんが『ちっちゃい こえ』を演じた際に、小学生の子が演じてみたいと手をあげて、とても素敵な実演をしてくれたそうです。「この紙芝居は、子どもから大人まで、今生きているすべての命につながるおはなしです」と嬉しそうに語ってくださいました。


(脚本 アーサー・ビナード 絵 丸木俊・丸木位里「原爆の図」より)
※埼玉県東松山市にある「原爆の図 丸木美術館」のこと。丸木位里・丸木俊による共同制作作品「原爆の図」は、四曲一双の屛風(縦1.8m、横7.2m)に仕立てられ、1部から14部が常設展示されている。

みなさんの声もぜひお寄せください。
『ちっちゃい こえ』のご感想はこちらまで
https://www.doshinsha.co.jp/review/

ちっちゃい こえ

単品紙芝居

ちっちゃい こえ

アーサー・ビナード 脚本/丸木俊・丸木位里 絵/「原爆の図」より

ネコが語ります。家族のこと。命をつくりつづける、体の中のちっちゃい声のこと。ヒロシマのこと…。わたしたちはどうすれば生きていけるのか? 美しい絵から響いてくるそのこたえに、一人ひとり耳をすます紙芝居。
『ちっちゃい こえ』プロモーション動画はこちら

『ちっちゃい こえ』紹介リリース

  • 小学3・4年~
  • 2019年5月20日初版
  • 定価2,970円 (本体2,700円+税10%)
  • 立ち読み