インタビュー
2020.11.17
インタビュー『かわいい!どうぶつパーク』いしかわこうじさん
――『たまごのえほん』『おはようのえほん』『のりものしかけえほん』など、あかちゃん向け人気絵本シリーズでおなじみのいしかわこうじさん。
今月刊行された、新刊絵本『かわいい!どうぶつパーク』について、お話を伺いました。
――この『かわいい!どうぶつパーク』は、どんなきっかけから生まれたのでしょう。
「のりものしかけえほん」シリーズは、のりものたちが動く様子をリアルに体感してもらいたいと考えて、作ったしかけ絵本でした。今回、動物でも同じように、「動き」を体感できる絵本が作れないかなと考えたのです。
もともと動物にはすごく興味があって、よく動物園にも行きます。その中でも特に印象に残っているのが、シンガポール動物園です。何回か足を運んでいるのですが、とにかくのびのびとした動物園なんです。日本のサファリパークと似てるのですが、自然環境に近い「オープン・ズー」というコンセプトで、柵はなくて、放し飼いされていたりしていて、動物はすごくのびのびしているし、僕らものびのび見ることができます。夜にはナイトサファリで、夜行性の動物を見たりもできるんです。それがすごく好きで。
夕暮れ時に遠くのほうに、キリンがゆっくり歩いているわけです。向こうには森が見えて、実際は動物園の中なんだけど、本当に自然の中を歩いているみたいな感じの情景で。非常に絵画的でね。ちょっと「ジュラシックパーク」を思い出したりもしました。大きい動物が歩いているシルエットも格好よかったですね。
そういう感覚は、なかなか日本の動物園では体験できないですよね。自然の中にいる動物が動いたりしているのを見て、「すごい」とか「かわいい」という感動を、絵本で表現できないかと考えたのが、最初のきっかけですね。
――『かわいい!どうぶつパーク』では、登場する動物たちだけではなくて、すんでいる環境なども含めて、子どもたちに伝えられるような内容ですよね。
そうですね。僕の絵本は幼児対象のものではあるけれども、1枚1枚の絵を絵画として鑑賞できるものにもしたいと常に思っているんです。色のバランスだったり、線だったり、空気感だったり。子どもから大人まで、いろんな見方で見てもらえるかなと思っています。たとえば雪だったらちょっとヒンヤリ感じてもらえるように、海だったら水の気持ちいい感じや明るい陽射しまで体感できるように、色を細かく調整しています。動物たちがすんでいる環境も、細部から感じ取ってもらえたら嬉しいです。
――表紙のパンダがかわいくてとても目を引きますね。
パンダは、僕が小学校に上がるくらいの頃に第1次パンダブームがありまして、中国からカンカン、ランランが来たのです。みんな大騒ぎになって。僕も上野動物園に行列して、見に行きましたね。またそれに合わせて、『パンダコパンダ』(監督・高畑勲、脚本・宮崎駿、1972年)という映画も放映されて、すごく巨大なパンダのぬいぐるみを親に買ってもらったんです。その頃からずっとパンダが好きですね。
僕の絵本の中でパンダは何かと出てきています。『パンダくんのおにぎり』や『パンダくんのおつかい』(ともにポプラ社刊)などパンダが主人公の絵本もあります。これはパンダに限ったことではないのですが、自分が子どもの頃に好きだったものが、僕の絵本の中にはすごくストレートに出てくるんです。絵本づくりをしているとそういうのに気づく瞬間が多いですね。きっと、子どもに向けて作っているから、子ども時代に好きだったものが、自然と出てきてしまうんですね。
――今回も動物園や水族館へ取材されたと聞きましたが、特に印象に残っていることはありますか。
ペンギンですね。ペンギンは実際に見ると、人間の腕にあたるヒレが、本物はとても薄いんですよ。改めて観察して「本当のペンギンって、こんな感じなんだ」と驚きました。フワッとボリュームのあるヒレをイメージしていたのですが、実際にはナイフのように鋭かったりして。写真や映像で見てもある程度は想像できるのですが、やっぱり実際に見てみることに越したことはありませんね。
――実際に観察されて、動いている動物たちの姿を見ていることが、絵本のしかけのページに投影されているんですね。
そうですね。今回の絵本は、動きがテーマでもあるからね。実際の動物たちを見て気づいたことや、おもしろかったり、笑えたりするユーモラスな部分も、絵本の中に取り入れるようにしています。たとえば、水族館で、ペンギンがおなかで滑っているところを見て、子どもたちが驚いたり、笑ったり、とにかく喜んでいたんですね。そんな子どもたちの姿を見て、このシーンを描きたいなと思ったんです。
――最後のページでは登場した動物たちがみんな集合します。絵本の終わりにもう1回、登場した動物たちに出会える楽しさがありますね。他のシリーズでも、最後に登場人物たちが集合する展開の作品が少なくありませんが、ここにはどんな思いが込められているのでしょう。
「いつもこの展開に」と意識してるわけではないのですが、最後はにぎやかに楽しく、親子で一緒に見たもの、読んだ絵本ついて語ってもらえたらという思いはありますね。
本を読むっていうのは、旅に近いところがあると思っているんですね。あっちに行ったり、こっちに行ったり、その中でいろんな経験をしたり。1つ1つのページが、旅のワンシーンであって、その中に感動や驚き、発見がある。
旅からの帰り道で、行った場所を振り返ったり、旅先での思い出に浸ったりしますよね。それと同じように、最後に、もう一度本の中身を追体験するページがあっても面白いかなと思って、パノラマの絵を描いているのです。読者の方から伺ったのですが、最後のページで「このどうぶつはどこにいたかな?」と親子で話しながら、またもう1度そのページに戻ったりして、楽しんでもらっているようです。
――読者の子どもにとって、この絵本で初めて出会う動物もいるかもしれませんね。
そうですね。この本を読んで、動物園に行ったり、実際の動物たちを見る体験と結びつけて読んでもらえたら嬉しいです。親子やおじいちゃんおばあちゃん、それから幼稚園や保育園でも、みんなで楽しんでもらって、「今度、じゃあ、動物園に見に行こうね」とリアルなイベントに結びつけて、楽しんでもらいたいです。
本や絵で見たものが、実際にいるのを見るのは、それ自体がすごく嬉しいことですよね。のりものでも、動物でもそれは同じだと思います。実際に見た瞬間の喜びや驚きというのは、子どもでも大人でも変わらないものなんじゃないかな。
これから「どうぶつパーク」シリーズとして何作か絵本を作っていきたいと考えています。今回は「かわいい」に着目したけど、動物にはいろんな特徴があるので、バラエティに富んだ、“あかちゃんのための動く動物図鑑”みたいなシリーズにしていきたいですね。
――今日はお話をありがとうございました。
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のりものしかけえほん
いしかわこうじ さく
いろいろなのりものが大集合!しかけページをめくると、のりものたちが動きだします。のりものを大好きな子どもたちの気持ちに応えるのりものしかけ絵本シリーズです。
※こちらの4巻セットは、『りくののりものえほん』『そらののりものえほん』『はたらくのりものえほん』『うみののりものえほん』を収録する、のりものしかけえほんシリーズ全4巻のセットです。出産のお祝いやプレゼントにぴったりの美麗ケース付き。- 0・1歳~
- 2016年6月20日初版
- 揃定価4,400円 (本体4,000円+税10%)
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