2019.07.19

〈連載〉せなけいこ展『ばけものづかい』

今月から神奈川県の横須賀美術館で展示がはじまった「せなけいこ展」。
今年から来年にかけて愛知・大阪・広島での巡回が決まっています。
これを記念し、せなけいこさんの代表作を連載でご紹介します。
ぜひ展覧会で原画とあわせてお楽しみください。
今日は「せなけいこおばけえほん」シリーズでも特に人気の高い『ばけものづかい』です。

昔、とても人づかいの荒い、おじいさんがいました。
おじいさんが、家賃は安いが、ばけものがでるという評判のやしきにひっこすというので、いつも多すぎる用事を言いつけられていた召使いも、とうとう逃げだしてしまいました。

ある晩のこと。
おじいさんが一人で本を読んでいると、なまあたたかい風がふいてきて、ぞくぞくっとしました。
みるときれいな女の人がいて、その首が、するするーと伸びていきます……。
「こんばんは〜」

 ところが、おじいさんはちっとも驚きません。
そこで、ひとつめ小僧、からかさおばけ、火の玉や大入道も現れますが……。

おじいさんは、おばけたちに驚かず、よく来たなと招き入れると、
「ろくろっくびや、きもののやぶれをなおしておくれ」
「ひとつめ小僧や、おまえは肩をたたいてな。それから火ばちでかきもちをやいておくれ」
とおばけたちに次つぎと用事をいいつけます。

「まだ用事がいっぱい残ってるのに、明日の晩も来ておくれ」
まだ用事を頼み足りないおじいさんに、
とうとうおばけたちも逃げ出します。

「せなけいこおばけえほん」は落語ばなしを題材にしたシリーズですが、
せなけいこさんのお連れ合いは、落語家の6代目柳亭燕路。
せなさんご自身も東京生まれの江戸っ子です。
本作のおじいさんの語り口も、落語の口調のようで小気味良く、あっけらかんとした楽しさがあります。

怖すぎないのが人気のひみつ。3・4歳から楽しめます。(せなけいこ 作/絵)

この作品は、以下の2種類のサイズで刊行されています。ぜひ他の作品もお楽しみ下さい。

『ちいさなおばけえほん ばけものづかい』
『ばけものづかい』

せなけいこ展 公式サイトはこちら

ちいさなおばけえほん ばけものづかい

ちいさな〈せなけいこ・おばけえほん〉

ちいさなおばけえほん ばけものづかい

せなけいこ 作・絵

とってもひとづかいのあらいおじいさんが、ばけものがでるとひょうばんの家にひっこしてきます。すると、なまあったかーい風がふいてきて、まちかまえていたばけものたちが、「こんばんは~、どろどろどろどろ~」と、おじいさんをおどろかしにやってきます。ところが、おじいさんはまったくおどろかないどころか、「かたをたたいておくれ」「かいものにいっておいで」と、あべこべにばけものたちをこきつかいます。さて……。

  • 4・5歳~
  • 2017年6月10日初版
  • 定価858円 (本体780円+税10%)
  • 立ち読み
ばけものづかい

せなけいこ おばけえほん

ばけものづかい

せなけいこ

ろくろっくびや大入道のすむ家にひっこしてきた、おじいさん。あべこべに、ばけものをこき使います。

  • 3歳~
  • 1974年7月20日初版
  • 定価1,210円 (本体1,100円+税10%)