<連載『ちっちゃい こえ』①>アーサー・ビナードさんの紙芝居のはじまり

5月の刊行以来、多くの反響が寄せられている、アーサー・ビナードさんの新作紙芝居『ちっちゃい こえ』
本作について、さらに掘り下げてご紹介する連載企画をお送りします。
第1回は、脚本を手がけた詩人、アーサー・ビナードさんの言葉をご紹介します。


ぼくの紙芝居の初体験は遅い。23歳になってからだ。来日して、近所の池袋図書館の児童書コーナーに入り浸って絵本を読んでいた。スタッフと親しくなって、ある日「おはなしたんぽぽ」という催しに参加させてもらえた。テーブルの上に木の箱が置かれ、不思議に思ったら扉が開き、舞台に変身した。昔話の世界にぼくは吸いこまれて夢中になった。

どこにでもありそうな紙芝居。でもアメリカにはなく、出合わずに育ったぼくは、無謀なことを考え始めた。「いつか作ってみたい……」

何年もたって、やっと紙芝居の創作にとりくんだときも、ぼくはまた無謀なことを考えていた。丸木俊さんと丸木位里さんが作りあげた大連作「原爆の図」をもとにして、絵を切りとってストーリーをつむいでみようと……。

「原爆の図」の前に立つと、だれでもどんどんまきこまれて、追体験することになる。丸木夫妻は遠くから眺めるのではなく、ピカにさらされた生き物に寄りそって描き出している。

美術作品としてのその力学が、まさに紙芝居と共通していると、ぼくは思った。観客たちをまきこむ装置として、「原爆の図」も、紙芝居もはたらくのだ。

それから7年間、どこにでもありそうで、どこにもない紙芝居をさがし、ピカの体験者に耳をかたむけつづけた。いのちの源であるサイボウにも耳をすまして、『ちっちゃい こえ』が形になった。さあ、これからひとりひとりの中の声と、どのようにひびき合って広がるのか。

アーサー・ビナード
(『ちっちゃい こえ』紹介リーフレットより)


ビナードさんが「原爆の図」と向き合いつづけ、ついに刊行となった『ちっちゃい こえ』。
次回はその制作の7年を振り返ります。

『ちっちゃい こえ』
(脚本/アーサー・ビナード 絵/丸木俊・丸木位里「原爆の図」より)
ちっちゃい こえ

単品紙芝居

ちっちゃい こえ

アーサー・ビナード 脚本/丸木 俊・丸木 位里 絵/「原爆の図」より

ネコが語ります。家族のこと。命をつくりつづける、体の中のちっちゃい声のこと。ヒロシマのこと…。わたしたちはどうすれば生きていけるのか? 美しい絵から響いてくるそのこたえに、一人ひとり耳をすます紙芝居。
『ちっちゃい こえ』プロモーション動画はこちら

『ちっちゃい こえ』紹介リリース

  • 小学3・4年~
  • 2019年5月20日初版
  • 定価2,916円 (税込)
  • 立ち読み